ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に多く含まれる「スルフォラファン」に肥満やインスリン抵抗性を抑える作用があることを、金沢大学の研究グループが明らかにした。
「スルフォラファン」は注目されている
ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜に含まれる「スルフォラファン」は、注目されている栄養成分だ。体内に取り込まれた化学物質の解毒や抗酸化力を高め、がんを予防する効果があることが知られている。
過食や肥満により酸化・還元のバランスが崩れると、2型糖尿病などのさまざまな病気の発症に関与する。金沢大学の研究グループは、「スルフォラファン」に肥満を改善する効果もあると考えた。
研究の結果、「スルフォラファン」に次の2つの新たな効果があることが判明した。
(1)「スルフォラファン」は、脂肪細胞の褐色化を促進することで、エネルギー消費を増大させ、肥満を抑制する。
(2)「スルフォラファン」は、高脂肪食による「肥満型」の腸内フローラを改善し、「代謝性エンドトキシン血症」を抑える。
この2つの効果により、ブロッコリースプラウトの「スルフォラファン」を摂取すると、炎症やインスリン抵抗性を改善できる可能性があるという。
「スルフォラファン」が褐色脂肪細胞を増やす
脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞のまったく働きの異なる2種類の細胞がある。白色脂肪細胞はエネルギーをためこむ細胞だが、褐色脂肪細胞は逆にエネルギーを燃焼させる細胞だ。
褐色脂肪細胞はミトコンドリア量が多いため、褐色をしている。このミトコンドリアにある熱産生タンパク質により、余分なエネルギーが熱に変換されて放出される。
褐色脂肪細胞の量が少ないと、余分な脂肪が体内に蓄積されやすくなり、肥満やメタボリックシンドロームの原因となる。「スルフォラファン」は、脂肪細胞の褐色化を促すという。
腸内フローラが乱れると「インスリン抵抗性」が亢進
一方、「腸内細菌」や「腸内フローラ」という言葉を耳にしたことがある人は少なくないはずだ。腸の中にビフィズス菌、乳酸菌など無数の細菌がすみついていて、健康に大きな影響を与えていることが最近の研究で明らかになっている。
ヒトの腸内には、500~1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれている。
腸内フローラはヒトの健康と病気に密接に関わっており、腸疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などのさまざまな疾病の発症に関係すると考えられている。
インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくくなっている状態をさす。インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇する。
肥満や運動不足などが原因だが、腸内フローラのバランスが乱れにより慢性的な炎症が起こることも一因になっているという。
金沢大学の研究グループによると、「スルフォラファン」に、腸内フローラのバランスを改善する効果があるという。
「スルフォラファン」が高脂肪食の毒性を取り除く
研究グループは、マウスを2群に分けて、一方には「スルフォラファン」を混ぜた高脂肪の餌を与え、もう一方には「スルフォラファン」を混ぜない高脂肪の餌を与える実験を行った。
その結果、「スルフォラファン」を混ぜた餌を与えたマウスは体重増加率が約15%抑えられ、内臓脂肪量が約20%減少し、脂肪肝と血糖値の上昇が抑えられた。
さらに研究を進めたところ、「スルフォラファン」が、脂肪細胞のミトコンドリアに存在し、エネルギーを熱に変えて放散させる分子である「UCP-1」を増やし、エネルギー消費の増加と脂肪の燃焼をもたらす「脂肪細胞の褐色化」という現象を促進することが明らかになった。
さらに、腸管から吸収され生体内で炎症を引き起こす内毒素「LPS」を産生する腸内細菌の増殖を抑制することも判明した。
高脂肪の食事を続けると、LPSの血中濃度が増加し、脂肪組織や肝臓で慢性的な炎症を引き起こす。これが、インスリン抵抗性につながり、糖尿病などの発症や進展に関与している。
「スルフォラファン」は腸内フローラを改善し、炎症やインスリン抵抗性を改善する効果があるという。
ブリッコリーのスプラウトが特におすすめ
スルフォラファンは、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、ケール、白菜、菜の花などに含まれるが、ブリッコリーのスプラウト(新芽)は特に含有量が多い。
発芽3日目のブロッコリー100gにおよそ250mgのスルフォラファンが含まれる。ブリッコリースプラウトは1パックおよそ50gで売られることが多く、1日に半分食べればスルフォラファンを50mg以上摂取できる。
高脂肪の食事を摂っている人は、キャベツ、白菜などに加えて、ブリッコリースプラウトを多めに摂ってみてはいかがだろう。
研究は、金沢大学医薬保健研究域 脳・肝インターフェースメディシン研究センターの太田嗣人准教授と医薬保健研究域医学系の長田直人助教の研究グループが、カゴメと共同で行ったもの。米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes」オンライン版に発表された。
金沢大学医薬保健研究域 脳・肝インターフェースメディシン研究センター
Glucoraphanin Ameliorates Obesity and Insulin Resistance Through Adipose Tissue Browning and Reduction of Metabolic Endotoxemia in Mice(Diabetes 2017年2月8日)
[ Terahata ]