東北大学は、メタボリックシンドロームのある人は胆石の発症リスクが高まるメカニズムの一端を解明したと発表した。胆石の発症に肝臓の酸素不足が大きく関わっているという。
胆石が発見される人は増えている
胆石は、欧米では成人の10~20%、日本などでは5~10%が発症する疾患だ。最近は健康診断や人間ドックの際に無症状で発見されることが増えている。健診の機会の増加や、超音波(エコー)検査やMRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)など画像検査の技術が進歩したことに伴い、胆石がみつかる人が増えている。
胆石は胆汁の通り道である胆道にできる結石で、約8割が胆のうにできる胆のう結石だ。胆のうは胆汁という消化液を一時的に蓄え、濃縮する働きをする。胆汁に含まれるコレステロールが増え過ぎて結晶化すると胆石ができる。
胆石が胆のう内にとどまっている限り症状はないが、胆管内へと移動する途中で胆管を塞いでしまうと症状が起きる。主な症状は「みぞおちから右脇腹にかけての痛み」「背中や右肩への痛み」などで、吐き気が起こることもある。
食事と関連して痛みが起こることが多い。食事をとると、胆のうが収縮して胆汁が十二指腸に送り出される。このときに胆石が動いて胆のうの出口を塞いでしまうと、炎症が起こり激痛を生じる。
メタボで胆石が増えるメカニズムを解明
メタボリックシンドロームのある人では、脂肪肝に伴って胆石症が発症しやすいことが知られている。東北大学の研究チームは、メタボリックシンドロームで胆石が増えるメカニズムを、マウスを用いた実験で解明した。
研究チームは、メタボリックシンドロームに伴う脂肪肝の状態では、肝臓内の血流が低下し肝細胞が酸素不足に陥ることに着目した。
遺伝子改変マウスを用いて研究を進めたところ、肝臓に脂肪が蓄積することで肝臓内の血流が減少すると、肝細胞における酸素不足が引き金となり、低酸素誘導因子「HIF-1α」が活性化されることが分かった。
その結果、胆汁への水分を供給するタンパク質「アクアポリン8」が減少し、胆汁が濃縮されてコレステロールが析出、胆石ができるのが促されるという。
さらに、メタボリックシンドロームに伴った脂肪肝を有する患者の肝臓生検サンプルを用いた検討でも、胆石を有する患者では、肝臓のHIF-1αが増加していることを突き止めた。
これらのことから、胆石を合併している脂肪肝の患者でも、肝臓のHIF-1αが増加しており、胆石の形成に肝臓の酸素不足が大きく関わっていることが明らかになった。
今回の研究は、脂肪肝に伴う胆石の治療、ひいては胆のうがん発症の予防につながる成果だという。
この研究は、東北大学大学院医学系研究科の糖尿病代謝内科学分野の山田哲也准教授、浅井洋一郎医員、片桐秀樹教授らが、消化器病態学分野の下瀬川徹教授、病理診断学分野の笹野公伸教授、東北大学病院薬剤部の眞野成康教授、山形大学医学部内科学第二(消化器内科学)講座の上野義之教授、東北大学加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野の田中耕三教授らとの共同で行ったもの。研究成果は「Gastroenterology」オンライン版に発表された。
東北大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野
Activation of the Hypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit Pathway in Steatotic Liver Contributes to Formation of Cholesterol Gallstones(Gastroenterology 2017年1月11日)
[ Terahata ]