筑波大学の研究チームは、睡眠で「レム睡眠」が減少すると、ショ糖(砂糖)や脂質など、肥満につながる食品の過剰摂取が引き起こされるメカニズムを解明した。脳の「前頭前皮質」という部分が関係しているという。
睡眠不足になると高カロリーの食品が欲しくなる
睡眠は、大脳を休ませ回復させる「ノンレム睡眠」と、ノンレム睡眠より浅い眠りである「レム睡眠」の周期で構成されている。
睡眠不足は、体重増加をもたらす要因のひとつであることが知られている。睡眠不足の人は、体重を増加させる嗜好性の高い食品を好んで食べ、太りやすくなる傾向がある。特にレム睡眠が不足すると体重が増加しやすいことが知られる。
しかし、睡眠不足になると高カロリーの食品が欲しくなるのはどうしてなのかは不明だった。また、食物の嗜好に関わる「前頭前皮質」が重要な役割を果たしていることは分かっているが、睡眠との直接的な関係は不明だった。
そこで筑波大学の研究チームは、レム睡眠が不足すると、マウスの摂食行動にどのような変化があらわれるかを観察した。
レム睡眠の減少がエネルギーバランスに悪影響 体重が増加
レム睡眠が不足したマウスでは、ショ糖、脂質ともに摂食量が増加した。一方、前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスは、レム睡眠量が不足してもショ糖の摂取量は増加しなくなることがわかった。
睡眠不足の状態にあると、ショ糖を多く含み体重を増加させる、いわゆる「太りやすい」食べ物を摂取したくなる欲求があらわれる。これは、前頭前皮質によって直接的に制御されており、レム睡眠と前頭前皮質、食物の嗜好性との直接的なつながりがあることが判明した。
「レム睡眠量の減少は、代謝やエネルギーバランスに悪影響を与え、体重増加につながる可能性がある」と、研究者は指摘している。
レム睡眠は加齢とともに減少することが知られている。また、高齢化に合わせて、2型糖尿病や心血管疾患など、肥満と密接に関連する疾患は増加している。
「今回の研究の成果を足がかりに、高齢化社会において健康的な食事行動を促進する、新たな神経薬理学的な戦略の開発が期待される」と、研究者は述べている。
研究は、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構のミハエル・ラザルス准教授らの研究チームによるもので、科学誌「eLife」に発表された。
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
Chemogenetic inhibition of the medial prefrontal cortex reverses the effects of REM sleep loss on sucrose consumption(eLife 2016年12月6日)
[ Terahata ]