スポーツ庁は2015年度「体力・運動能力調査」の結果を公表した。高齢者で体力は向上しており、65~69歳の女性、75~79歳の男女は過去最高を更新した。一方で30歳代の女性は低下傾向がみられた。
65~79歳の高齢者は18年間で体力が向上
調査は東京オリンピックが開かれた1964年度から毎年実施。1998年度から60歳代と70歳代も対象になった。今回は昨年5~10月に実施、6~79歳の男女約6万6000人分を集計した。
65~79歳の運動能力は握力、開眼片足立ち、6分間歩行、上体起こしなど6項目(60点満点)で測定。
合計点は、65~69歳男性で42.04点、75~79歳男性が35.64点、70~74歳女性が38.80点、75~79歳女性が35.19点となり、いずれも前年を上回った。種目別では開眼片足立ちや6分間歩行などの点数が伸びた。
65~79歳では18年間でほとんどの項目で向上しており、特に65~69歳の女性と75~79歳の男女では、1998年度に比べいずれも5点超上回り、過去最高になった。
一方、35~39歳女性の運動能力は低下傾向が続く。合計点(60点満点)は36.01点と1998年度より1.69点低かった。
女性が20歳代以降は運動から遠ざかる傾向
「体力・運動能力調査」では、女性が運動から遠ざかっている傾向が示された。
運動・スポーツを週1日以上実施した人の割合は、女性は10歳の83.6%がピークで、高校時代に大幅下落し、40歳代後半で45.9%と底を迎える。
運動をする女性は、1985年度と2015年度を比較すると、女性は19歳で65.4%から39.2%に、20歳代後半が44.9%から35.8%に、30歳代後半が48.1%から37.1%に減少した。
「働く女性が増え、20歳代以降は仕事や家事、子育てで忙しくて、ライフスタイルが乱れたり、運動する時間のない人が多いのではないか」と、調査に関わった順天堂大学の内藤久士教授(運動生理学)は推測している。
一方、男女とも40歳代後半以上では運動をする人が増え、1985年度を上回った。50歳代後半は2015年度が男性46.6%、女性53.7%で、1985年度のそれぞれ32.8%、25.2%から大幅に増えた。
運動の頻度が高い人ほど体力は向上
また、1日の運動・スポーツの実施頻度が高い人ほど体力水準が高い傾向が、男女ともにほとんどの年齢でみられた。
体力テストの合計点(60点満点)は、運動を週1日以上している人では男性39.9点・女性40.1点となり、運動をしていない人に比べて3~4点高い。
また、過去経験なしの場合でも、現在週1日以上運動している人では男性39.6点・女性39.1点となり、運動をしていない人に比べて3~4点高い。
「運動・スポーツの実施頻度は、生涯にわたって体力を高い水準に保つための重要な要因のひとつ」と、スポーツ庁は強調している。
運動をしている人はBMIやADLテストの結果が改善
肥満度を示すBMI(体格指数)で「普通体重」と判定された人の割合は、35~44歳では、過去に運動部の経験がある場合、現在週に1日以上の運動している人では79.9%となっており、運動をしていない人に比べて約6ポイント高かった。
週1日以上運動する人は79.7%が普通体重で、週1日未満より約6ポイント高く、過去の運動部の経験による差はなかった。
高齢者にとっては、ロコモティブシンドロームなどを予防し、自立して生活できることが重要となる。調査では、ADLテストで「1時間以上歩くことができるかどうか」と運動の実施状況との関係も分析された。
1時間以上歩ける人の割合は、過去経験ありの場合、週1日以上運動している人では55.4%なのに対し、週1日未満の人では37.5%で、17.9ポイントの差があった。
また、過去経験なしの場合でも、現在運動をしている人で53.2%となり、運動をしていない人に比べ21.6ポイント高かった。
「運動は生涯を通じて続けることが重要。過去の運動・スポーツ経験がない人でも、現在実施することにより体力や健康によりよい影響を与えることができる」と、スポーツ庁は指摘している。
平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について(スポーツ庁)
[ Terahata ]