オフィスで長時間座ったまま過ごすと、脚の血管の機能が損なわれるが、10分間ほどウォーキングをすることで回復することが明らかになった。短い時間でも立ち上がって体を動かせば、血流が良くなるという。
デスクワークの時間が長い人は要注意
多くの人が1日8時間、パソコンの前などで過ごし、体を動かさないで作業をする仕事に就いている。座ったまま過ごす時間が長いと脚の血流が悪くなり、血管の機能が損なわれるおそれがある。
「デスクワークを長時間行い、体を動かさない生活スタイルに、多くの人が慣れています。しかしほとんどの人は、座位時間が6時間以上に及ぶと、脚の血流が減少してしまうことに気が付いていません」と、ミズーリ大学医学部のジャウム パディリャ氏(運動生理学)は言う。
パディリャ氏らは、健康な若い男性11人に参加してもらい、座ってパソコンでデスクワークを6時間行ってもらい、脚の血管にどのような影響があらわれるかを調べる実験を行った。
その結果、座位の姿勢で過ごすと、膝の裏側にある膝窩動脈の血流が大きく減少することが判明した。
脚の血流が悪くなると全身に影響があらわれる
動脈では血液は中央部の流れが速くなり、血管壁近くの流れは遅くなっている。この速度による力の差は「シェアストレス」と呼ばれ、血液の粘度が高いほど強くなる。
座ったまま脚を動かさないでいると血液が滞り、シェアストレスが亢進し、血液が固まり血流を遮りやすくなるという。
血管内皮細胞はこのシェアストレスに常にさらされており、座位時間が長いと動脈拡張能が損なわれ、動脈硬化が進行しやすくなる。その結果、脚の筋力が衰え、全身の血流が悪くなり、心臓の血管にも異常が起こりやすくなる。
実験では、座位の姿勢で仕事を6時間行ってもらった後で、10分間のウォーキングを行ってもらった。
ウォーキングの効果は大きく、脚の血流が回復し、シェアストレスが改善することが判明した。
座位時間が長い人は立ち上がってウォーキングを
「長時間にわたりストレスが続くのは、体にとって悪い状態です。ときどき立ち上がって脚を動かすことで、脚の動脈が広がり血流が良くなります」と、パディリャ氏は言う。
現代社会では職場で体を動かさない生活スタイルが定着している。血管の健康を保つために、意識して体を動かすことが必要だという。
ふくらはぎを伸縮させると、血流を改善するポンプのような働きをし、膝窩動脈の血流が良くなり、下半身に血液がゆきとどくようになる。
「デスクワークが終わったら、立ち上がって歩き回るだけでも効果があります」と、パディリャ氏はアドバイスしている。
ウォーキングには、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を予防・改善する効果がある。「余裕のある人は、仕事の後の10分のウォーキングを加えて、1日に合計30分のウォーキングを行うと、なお効果的です」と付け加えている。
A Short Walk Around the Office Can Reverse Vascular Dysfunction Caused by Hours at a Computer(ミズーリ大学 2015年9月28日)
[ Terahata ]