日本糖尿病・妊娠学会と日本糖尿病学会との合同委員会は、妊娠中の糖代謝異常の診断基準を新たに統一化したと発表した。
妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化
国際的な研究グループ「IADPSG」(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)は、2010年に世界統一の妊娠糖尿病(GDM)診断基準を作成した。それに合わせて、日本糖尿病・妊娠学会が新たな診断基準を作成し、日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会に提言してきた。
2010年7月から妊娠中の糖代謝異常に関する新診断基準が使用されているが、最後のすり合わせが不十分であったため、日本糖尿病学会の診断基準と日本産科婦人科学会、日本糖尿病・妊娠学会の診断基準に不一致な点が一部あった。
このため、日本糖尿病学会と日本糖尿病・妊娠学会は合同委員会を立ち上げ、診断基準の統一化を検討し、両学会と日本産科婦人科学会の三学会の合意を得て統一案を作成した。
新たに統一された「妊娠中の糖代謝異常と診断基準」は以下の通り――
妊娠中の糖代謝異常と診断基準
妊娠中に取り扱う「糖代謝異常」には、1)「妊娠糖尿病」(GDM)、2)「妊娠中の明らかな糖尿病」、3)「糖尿病合併妊娠」の3つがある。
「妊娠糖尿病」(GDM)は、「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常である」と定義され、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含めない。
3つの糖代謝異常は、次の診断基準により診断する。
1)妊娠糖尿病(GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
(1)空腹時血糖値≧92mg/dL
(2)1時間値≧180mg/dL
(3)2時間値≧153mg/dL
2)妊娠中の明らかな糖尿病(※1)
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
(1)空腹時血糖値≧126mg/dL
(2)HbA1c値≧6.5%
* 随時血糖値≧200mg/dLあるいは75gOGTTで2時間値≧200 mg/dLの場合は、妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、(1)または(2)の基準を満たすかどうか確認する。(※2)
3)糖尿病合併妊娠
(1)妊娠前にすでに診断されている糖尿病
(2)確実な糖尿病網膜症があるもの
※1 妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれる。いずれも分娩後は診断の再確認が必要である。
※2 妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示す。そのため、随時血糖値や75gOGTT負荷後血糖値は非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめることはできない。
これらは妊娠中の基準であり、出産後は改めて非妊娠時の「糖尿病の診断基準」に基づき再評価することが必要である。
日本糖尿病・妊娠学会と日本糖尿病学会との合同委員会
日本糖尿病・妊娠学会理事長 平松祐司
日本糖尿病学会 常務理事 羽田勝計
日本糖尿病・妊娠学会
日本糖尿病学会
[ Terahata ]