適度な運動を行うと、妊娠中の体重増加リスクが低下し、「妊娠糖尿病」を予防できるという調査結果が発表された。
妊娠中の過剰な体重増加は妊娠糖尿病につながる
「妊娠糖尿病」(GDM)は、妊娠中に発見された糖代謝異常で、妊娠前には糖尿病でなかったのに、妊娠中に慢性的に血糖値が高くなった状態を指す。
妊娠すると胎児の成長を促すホルモンが分泌され、その影響でインスリンの働きが低下する。母体はインスリンの分泌量を増やして対応するが、追いつかなくなると血糖値が高い状態が続いてしまう。これが妊娠糖尿病だ。
糖尿病に至らない軽い糖代謝異常であっても、胎児の発育異常が起こりやすく、周産期リスクも高くなる。また、母体の糖代謝異常が出産後に改善しても、後に糖尿病を発症するリスクが高くなる。妊娠糖尿病と診断される妊婦は10%程度とみられている。
妊娠中の体重増加は体格指数(BMI)が25未満の標準体重の女性では7~12kgで、過剰な体重増加があると、母体や胎児に対するさまざまな合併症の原因となり、出産後に体重がもとに戻りにくくなる。
妊娠期間中に過体重や肥満を経験する女性は、全体の50%に上るという報告がある。食事や運動で体重をコントロールすることが重要だ。
適度な運動で妊娠糖尿病のリスクが30%以上低下
スペインのヴィルゲン デ ラ ルス病院の研究チームは、妊娠中に運動を行うと、妊娠糖尿病や母体の過度の体重増加をどれだけ防げるかを調べるため、過去に行われた13件の無作為化対照試験(RCT)をメタ解析した。対象となったのは2,800人以上の妊婦。
その結果、運動を積極的に行うと、妊娠糖尿病の発症リスクが30%以上低下することが判明した。さらに、妊娠期間を通じて有酸素運動などを組み合わせると、リスクは36%低下し、より効果的であることが明らかになった。
運動は過剰な体重増加を抑制するのに効果的で、平均で1kgの体重増加を抑えていた。また運動プログラムを妊娠中期に開始した場合でも、体重増加を抑えられることが分かった。
「筋肉を刺激し引き締めるトーニング運動や、筋力トレーニング、柔軟運動、有酸素運動を組み合わせて行うとより効果的であるという結果になりました」と、同病院のジェマ サナブリア マルティネス氏は言う。
「妊娠中の運動を恐れる女性が少なくありませんが、運動の恩恵は大きいことを知るべきです。運動を適度に行えば、体に好ましい変化がもたらされ、母親と赤ちゃんの両方に対して安全です」としている。
過去に行われた研究では、ふだん運動をほとんどしない妊婦に対しても、運動は有益な効果をもたらすことが示されている。「今回の研究は、妊娠中の運動に対する推奨事項に影響を与える可能性があります。このことを確かめるためにさらなる研究が必要です」と、研究者は述べている。
Moderate exercise helps prevent gestational diabetes and reduces weight gain during pregnancy(International Journal of Obstetrics & Gynaecology 2015年6月3日)
[ Terahata ]