かぜ薬や痛み止めなどの「一般用医薬品」を服用すると、まれに副作用が起きるケースがあるとして、消費者庁は、異常を感じたらすぐに医師や薬剤師に相談することなど注意を呼びかけている。
一般用医薬品の副作用で死亡15件
消費者庁は、薬局やドラッグストア、インターネットなどで購入できる風邪薬などの「一般用医薬品」による副作用が疑われる症例が、2009~2013年度の5年間で1,225件あり、うち15件が死亡に至ったとあきらかにした。消費者庁がこうした注意喚起をするのははじめて。
医薬品の副作用は必ず起こるものではないが、死亡に至るまたは後遺症が残る副作用が、まれに起こる場合がある。しかし、その副作用症状についてはまだ多くは知られておらず、副作用の発見が遅くなるおそれがある。
「一般用医薬品のインターネット販売が解禁され、薬が簡単に購入できるようになっている。医薬品には副作用を起こすリスクがあることに注意してほしい」と、消費者庁は注意を呼びかけている。
副作用例は、厚生労働省所管の「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)による副作用の症例数の集計をもとにしたもので、死亡例15件のほか後遺症が生じた例も15件あった。
症例数でもっとも多いのが総合感冒薬(風邪薬)の400件(死亡8、後遺症9)。次いで解熱鎮痛消炎剤の279件(死亡3、後遺症2)。続いて漢方製剤が134件(死亡1)、禁煙補助剤が72件だった。
エフェドリン塩酸塩
かぜ薬や鎮咳去たん薬、鼻炎用内服薬などに使用されている「エフェドリン塩酸塩」には、交感神経を刺激することにより気道をひろげ、息苦しさを除き、せきを鎮める作用がある。
一方で、エフェドリン塩酸塩には、グリコーゲンの分解を促し血糖値を上昇させたり、α受容体とβ受容体を刺激し血圧値を上昇させる副作用がある。糖尿病や高血圧の人は、服用するときに注意が必要だ。
初期症状が出たら医師に相談
発見と治療が早いほど副作用の進行をくいとめられる
死亡や後遺症が残った症例の主な副作用は、「スティーブンス・ジョンソン症候群」「中毒性表皮壊死融解症」「肝障害」「間質性肺疾患」「腎障害」「喘息発作重積」などだ。
副作用の報告のうち、特に症状が重い「スティーブンス・ジョンソン症候群」は、薬剤などに対する免疫反応の異常を契機に発症する自己免疫疾患で、どんな薬を飲んでも起きる可能性はある。
スティーブンス・ジョンソン症候群の初期症状は「高熱」「目の充血等の目の変化」「粘膜の異常」「皮膚の異常」などで、急性期には両目に「急性結膜炎」(結膜の炎症)などが起こりやすい。原因と考えられる医薬品の服用後2週間以内に発症する場合が多く、1ヵ月以上経ってから起こることもある。
また、腎臓の機能が低下する「腎不全」は、総合感冒薬(風邪薬)や解熱鎮痛消炎剤などで起こることがある。
腎臓の大きな役割は、老廃物や余分なナトリウム、塩素、カリウムなどを尿として体の外に排泄すること。腎不全になると、「尿量が少なくなる」「ほとんど尿が出ない」などの症状が出て、老廃物が血液中にたまりやすくなる。症状が重い場合には、人工透析を受けないといけない状態になる。
消費者庁は、市販薬を販売する事業者の団体に対し、消費者に危険性を啓発するよう求めたことも明らかにした。
「治療が早ければ早いほど進行をくいとめられるので、薬を飲んだにもかかわらず熱が高くなったり粘膜に症状が出たりした場合は、早く医療機関を受診することが必要です」と注意を呼びかけている。
医薬品医療機器総合機構は、医療用医薬品や一般用医薬品に関する相談を電話で受け付けている。効能・効果、飲み合わせ、飲み方・使い方、心配事などの相談に専任の相談員が答えてくれる。
受付時間:月曜日~金曜日(祝日・年末年始を除く)午前9時~午後5時
電話番号:03-3506-9457
消費者庁
医薬品医療機器総合機構
[ Terahata ]