「1日1万歩」のウォーキングを続けることで、血管の状態が良くなり、動脈硬化を予防できることが米国のミズーリ大学医学部の研究で明らかになった。ただし、ウォーキングを5日間休んでいると、血管内皮機能が低下し、脚は不健康な状態になるという。
「1日1万歩」のウォーキングが血管を改善
米ミズーリ大学医学部の研究で、「1日1万歩」のウォーキングを続けると、血管内皮機能が改善し、動脈硬化の予防につながることが分かった。ただし、ウォーキングを5日間休んで、1日5,000歩しか歩かないでいると、血管の状態は明らかに低下することも示された。
「血管内皮」は全身をめぐる血管の最内層にあり、血管の健康状態を維持するのに非常に重要な役割を果たしている。血管内皮機能が低下した状態が続くと、動脈硬化が起こりやすくなり、さらにはプラーク(粥腫)がたまりやすくなる。放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞などを発症する危険性が高まる。
血管内皮の機能が低下する原因は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドロームなどだ。この血管内皮機能の低下を早期に発見し、その機能を高める対策をすることが、動脈硬化の予防につながる。初期の段階で生活習慣を改善し治療すると、正常な状態に戻すことができることがさまざまな研究で確かめられている。
研究チームは、毎日1万歩以上のウォーキングを続けているミズーリ大学の学生を対象に実験を行った。歩数が5,000歩以下に低下した場合に、血管にどのような影響があらわれるかを調べた。
その結果、歩数の低下が5日続いただけで、脚の血管内皮細胞機能が有意に低下することが明らかになった。また、ウォーキングを5日間休むと起こる血管機能の不全は、1万歩以上のウォーキングを1日以上行わないと回復しなかった。
「1日1万歩」を実行するためのアドバイス
「運動不足が健康に悪い影響をもたらします。運動不足を解消し、ウォーキングを毎日続ければ、あなたの寿命を延ばすことができます。今回の実験では、ウォーキングを5日間それをサボっただけでも脚の血管内皮機能が損なわれ、それを元に戻すために時間がかかることが分かりました」、とミズーリ大学医学部のポール フェデル准教授は言う。
「運動不足が原因となり、体重が増え肥満になりやすくなります。肥満から引き起こされるのは、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなる“インスリン抵抗性”と2型糖尿病です。心筋梗塞や脳卒中も起こりやすくなります。しかし、効果的な対処法が明らかになっています。それは適度な運動を続けることです」と、フェデル准教授は説明する。
米国の健康ガイドラインでは1日1万歩以上のウォーキングが推奨されているが、平均的な歩数は6,000歩にとどまっているという。「今回の研究で分かったのは、もしあなたが1日中座ったまま生活を続けていて、それが健康に悪影響をもたらすと知らないでいたら、生活習慣病のリスクが上昇するということです」としている。
オーストラリアのモナッシュ大学は、大学の職員や学生を対象に「1万歩を歩こうキャンペーン」を展開している。「1日1万歩」を実行するために、次のことをアドバイスしている。
「1日1万歩」を達成するためのアドバイス
● 1日30分歩けば「1日1万歩」を達成できる
10分のウォーキングを行えば、平均的に1,000歩を増やすことができる。運動を習慣として行っていない人の1日の歩数の平均は6,000〜7,000歩程度。30分を多く歩けば「1日1万歩」は達成可能だ。
● 日常で工夫すれば歩数を徐々に増やせる
これまでウォーキングをしてこなかった人が、いきなり1万歩の目標を達成するのは難しい。ウォーキングの時間を徐々に増やしていけば、やがて目標を達成できるようになる。最初は「エレベータやエスカレーターではなく階段を使う」「1つ前の駅やバス停で降りて、歩くようにする。慣れてくれば2つ前で降りるようにする」といった日常生活で工夫を重ねれば歩数を増やせる。
● 歩数計を持ち歩く
歩数計を持ち歩き歩数の記録をすることが、ウォーキングに対する動機付けになることが過去の研究で確かめられている。最近の歩数計は、ウォーキング以外の身体活動を記録したり、小型の腕時計タイプのものも出ており、値段も安くなっている。インターネットに接続し、歩数の記録を保存できるサービスもある。これらの商品やサービスを上手に活用することが、歩数の増加につながる。
● 音楽プレーヤーを活用する
ウォーキングの時間を退屈に感じている人は、携帯できる音楽プレーヤーやスマートフォンを活用して、音楽やラジオ、ポッドキャストなどを聞けば、飽きることなくウォーキングを続けられる。ウォーキングの最中にスマートフォンで目に付いた風景を写真を撮る趣味をもち運動を続けている人もいる。
● ウォーキングの仲間をつくる
健康増進のためのウォーキングの取り組んでいる人はたくさんいる。ウォーキングの仲間をつくり、会話をしながら歩いたり、ウォーキングの後で歩数をレポートすると、飽きることなく続けられ励みにもなる。インターネットではウォーキング関連のフェイスブックなどがたくさんあるので、利用するのもひとつの方法だ。
● 不安のある人は医師に相談
脚や関節に不安をもっている場合は、医師に相談すれば安全のウォーキングのやり方を教えてくれる。健康のコンディションに不安のある人でも、注意事項を守ればウォーキングは可能だ。
Researchers Find Significant Link to Daily Activity, Vascular Health(ミズーリ大学医学部 2014年12月30日)
10,000 Steps Challenge(モナッシュ大学 2015年1月8日)
[ Terahata ]