運動を毎日続けていると、心不全を発症する危険性は46%低下することが、約4万人を対象とした調査で明らかになった。「心臓病を予防するために、もっとも効果的なのは、運動を毎日続けることです」と研究者はアドバイスしている。
高血圧や糖尿病があると心臓への負担が大きくなる
心臓は、全身に血液を送るポンプの働きをしており、「心筋」と呼ばれる筋肉と、心筋に酸素や栄養を送る血管である「冠動脈」でできている。「心不全」とは、心臓の内腔が肥大したり、心筋が厚くなったり、冠動脈が詰まったりして、血液を全身に送り出す、あるいは心臓に取り込む力が落ちた状態を指す。
心不全は日本を含む先進国で増えており、米国では5,700万人がうっ血性心不全に罹患していると推定されている。心不全の医療費も増加しており、医療費全体のおよそ2%を占める。
心不全と診断されると、心臓の働きを低下させる原因をはっきりさせ、その病気を治療することが始められるが、治療開始後の病状の見通しは明るくない。心不全の診断後の死亡リスクは30~50%に上るという。
冠動脈や心筋の異常を起こす大きな原因は、肥満、高血圧や糖尿病などだ。特に高血圧があると、気づかないうちに動脈硬化が進み、心臓への負担が大きくなる。
心不全を防ぐために勧められるのは、ウォーキングなどの中強度の運動を1日1時間行うか、ジョギングなどの負荷の強めの運動を30分程度行うことだ。
マラソンのような激しい運動である必要はない
スウェーデンのウプサラ大学の研究チームは、心不全の既往歴をもたない20~90歳の男女3万9,805人を対象に調査を行った。開始時点の1997年から、運動をする習慣と運動時間、余暇の過ごし方について聞き取り調査を行った。
その結果、余暇時間に運動をする習慣のある人では、心不全の発症が少ないことが明らかになった。もっとも心不全の発症リスクが低かったのは、ウォーキングなどの中強度の運動を1時間、あるいは水泳やジョギングなどの強度の高めの運動を30分毎日続けている人たちで、心不全の発症は46%低下していた。
逆に、心不全のリスクが高かったのは、高齢者、男性、BMIの高い肥満の人、ウエスト-ヒップ比が高いメタボリックシンドロームの人、糖尿病や高血圧、高コレステロール血症のある人たちだった。
「マラソンのような強度の高い運動をする必要はありません。ウォーキングなどの、もっと手軽に取り組める運動でも、十分な効果を得られます。運動をすることで、心不全以外の多くの疾患のリスクも低下させることができます」と、ウプサラ大学のカスパー アンデルセン氏は言う。
「先進国では、体を動かす頻度の低い生活スタイルが定着しています。多くの人が移動するときは乗用車を使い、家ではテレビやインターネットばかりを見ています。意識して体を動かさないと、運動時間を増やすことはできません」。
移動するときは車を使わず徒歩で、エレベータを使わず階段を昇る、余暇時間は屋外に出て運動をするといった生活スタイルを促進することが、心不全の予防につながる。
運動を続けることで、血圧値や血糖値、コレステロール値を下げることができる。米国心臓学会(AHA)は、40分の適度な強度の運動を、週3~4回行うことを勧めている。
An hour of moderate exercise a day may decrease heart failure risk(米国心臓学会 2014年9月2日)
[ Terahata ]