寒い季節でも、しっかりと対策していれば快適に運動できるが、屋外で運動するときは注意が必要となる。英国営医療サービス(NHS)は、寒い日に安全に運動するために次のようにアドバイスをしている。
寒い冬の運動はウォーミングアップが重要 体を急に冷やさないようにする
- 時間の余裕をもって、ウォーミングアップを十分に行う
- 帽子、手袋、靴下などで体を温かくする
- 寒さが厳しいときは、鼻や口をスカーフやマスクで覆う
冬に発症しやすい病気のうち、もっとも重大なものとして血管障害(心筋梗塞・脳卒中)があげられる。原因のひとつは、低温環境そのもの、あるいは室内外の気温差が刺激になって脳や心臓へ負担がかかることだ。
寒さで交感神経は緊張し、全身と心臓の血管が収縮し、血圧が高くなりやすくなる。さらに、血圧が高くなれば心臓に負荷がかかり、狭心症や心筋梗塞が誘発される危険性が高くなる。
血圧は季節によって変動するが、特に冬場は血圧が上昇しやすい。その理由は次のようなことだ。
・寒さを感じると、体温の発散を防ごうとして血管は収縮し、血圧が上昇する。
・冬は運動不足になりがちで、肥満になりやすい。肥満は高血圧に影響する。
・冬場はクリスマスや忘年会など、食べすぎや飲酒の機会も増えることも、血圧を上げる要因となる。
寒い冬の運動は、時間の余裕をもって、ウォーミングアップをし、楽しみながらやることが大切。歯を食いしばって頑張る、というのはなるべく避けよう。
特に雪かきのような激しく力む運動をするときは、血圧や心拍数が上昇しやすい。ウォーミングアップを十分に行い、いきなり寒い屋外に出ないようにすることが重要となる。
首、手首、足首が外気にふれると、肌から熱が逃げて体温が下がる。風の侵入を許さないよう手袋やマフラー、レッグウォーマーなども活用しよう。
また、冷たい空気をいきなり肺に吸い込むと気管支が収縮する。マスクをして外に出るようして、いきなり冷たい空気を吸わないようにする工夫も必要となる。
寒いから運動をできないということはないが、心臓病のリスクが高い人は、冬の運動には危険がともなう場合があるので、事前に主治医に相談しよう。コンディションに合わせて、飲み薬を調整してくれる可能性がある。
厚着を繰り返さないで、吸湿・速乾性の素材を上手に使う
- 体が温まるにごとに1枚ずつ脱げるように、重ね着をする
- 衣類内に湿気がこもるのを避ける
服装の寒さ対策の基本は、レイヤリング(重ね着)を上手に行うことだ。厚い服を1枚着るよりも、薄めの服を重ね着する方が、衣類と衣類の間の空気が断熱材の役目を果たして熱を蓄えてくれる。最近のアウトドアウェアなどには機能的な素材を使ったものも多いので、上手に取り入れてみてもよいだろう。
運動中に着用する衣服の役割は、▽寒さなどの外部環境の変化から体を保護すること、▽体から出る熱や湿気などの変化に対して、衣服内環境をなるべく快適に保つことだ。冬の衣服には、防寒の機能と、吸湿性や放湿性の機能が求められる。
多くの人は防寒対策として、温度を維持するために空気を通さない上着を着る。外部の冷たい空気が入り込まないようにし、さらに内部に空気をためられるようにセーターなどを着込む。こうして厚着をすればするほど体温は上がっていく。
体温が上がると、服の中の空気の温度も上がっていく。最初のうちはそれで暖かさを感じるが、そのうち温度が上がりすぎて、体表からは温度調節をしようと汗が出てくる。汗は衣服の中で蒸発した後で、衣服や体表に水となって付いてしまう。その水分が体温で暖まりふたたび蒸発する。そのときに皮膚の温度を奪っていく。
いくら厚着をしてもなかなか暖かさを感じないのはこの現象によるものだ。しかし、これに気がつかずにどんどん厚着を繰り返す人も少なくない。
そうしたときの対策として、汗をかいた場合は、アンダーウェア(下着)に、防寒・保温性があり、汗をすばやく吸収する速乾性機能をもつ素材のものを着用する方法がある。最近ではいろいろな種類のものが出ている。運動中に汗をかいてしまうという人は、試してみてはいかがだろう。
次は...冬は脱水状態になりやすい、水分補給が必要
空気が乾燥していると脱水状態になりやすい
- 冬は乾燥しているので脱水状態になりやすい。運動の前後に水分補給を行うことが大切。
水分補給というと、汗をかいた時だけのようなイメージがあるが、寒い冬の季節にも水分補給はとても大事だ。冬は空気が乾燥しているので、知らず知らずのうちに肌から水分が蒸発していく「不感蒸泄」が起こりやすい。
寒くなり汗をかかなくなり、喉の乾きを自覚しにくくなったり、トイレに行く回数も増える冬場は水分摂取が少なくなる。水分摂取が少ないと、血液の粘度が上がり、いわゆる「ドロドロ」の状態となる。血管が詰まりやすくなり、結果として脳卒中や心筋梗塞を引き
起こす危険性が高くなる。
それを防ぐために、喉が渇いていないと感じるときでも、運動の前後に水分を補給することが大切だ。積極的に水分を欲することの少ない冬だからこそ、意識的に摂取するよう心がけよう。
風邪やインフルエンザの原因となるウイルスは、乾燥した状態で活発に活動する。反対に湿度50%以上になると活動が低下する。水分補給には、喉や鼻の粘膜をうるおし、ウイルスの侵入を防ぐと同時に、侵入したウイルスを痰や鼻水によって体外に排出する作用を助ける効果もある。
Exercise and cold weather: Tips to stay safe outdoors(メイヨークリニック)
Exercising in the Cold(米国運動協議会)
[ Terahata ]