DHAやEPAが含まれる魚油サプリメントを摂取すると、糖尿病や心臓病の危険性が低下するという研究が米国で発表された。ハーバード大学公衆衛生学部のジェイソン ウー博士らが、米国内分泌学会誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に発表した。
アジやイワシ、サンマなど青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」と総称されており、「アディポネクチン」を増やすことが知られている。適度に摂取すると、動脈硬化の予防や、血糖の調節や炎症といった代謝に有益に働くと考えられている。
内臓の脂肪細胞などから分泌される生理活性物質「アディポカイン」は、2型糖尿病や、冠動脈疾患、脂質異常症などに深く関わっている。アディポカインには善玉と悪玉があり、善玉アディポカインには、動脈硬化を予防する「アディポネクチン」や、食欲を抑制するレプチンなどがある。
血中のアディポネクチンが増えると、傷ついた血管を修復したり、免疫細胞(マクロファージ)が血管壁へ付着するのを防ぎ、動脈硬化が改善される。さらに、全身の細胞内のエネルギー代謝を調節する「AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)」活性化し、糖の取り込みや脂肪酸の燃焼が促され、インスリン抵抗性が改善すると考えられている。
今回の研究では、オメガ3脂肪酸が高濃度に含まれる魚油サプリメントが、血流中のアディポネクチンの量をわずかに増やすことが示唆された。
「魚油を摂取するとアディポネクチンが増加することは、過去に行われた動物実験では確かめられていました。同様の効果がヒトでも当てはまるかどうかはよく分かっていませんでした」と、ウー博士は述べている。
ウー博士らは、14件のランダム化プラセボ対照臨床試験をメタ解析し検討した。682名の参加者が魚油を摂取し、641名にオリーブ油やひまわり油などがプラセボ(偽薬)として与えられた。
魚油を摂取したグループではアディポネクチンレベルは0.37ug/mLに増加した。「研究では、魚油を摂取すると血中のアディポネクチン濃度が上昇し、結果として血糖コントロールと脂肪細胞の代謝に対し良い効果がもたらされることが示唆されました」とウー博士は述べている。
「血中のアディポネクチン濃度が高いと、冠状動脈疾患を発症する危険性が低下することが知られていますが、血糖コントロールや2型糖尿病の発症との関連についてはまだ分かっていません」、とウー氏は付け加えている。
魚油がアディポネクチンに与える効果は実験によって大幅に異なっており、魚油サプリメントはある特定のグループには効果があったが、他のグループでは効果が弱い可能性があることも示された。
「今後の研究で、魚油のアディポネクチンレベルへの影響を定量化し、魚油サプリメントの恩恵を受ける可能性がありそうな集団を調査する必要性があります」と強調している。
なお、内臓の脂肪細胞が肥大化すると、善玉のアディポネクチンの分泌が減り、悪玉のアディポカインの分泌が増えていくことが知られている。また、ウォーキングなどの運動を習慣として続けると善玉のアディポネクチンは増える。アディポネクチンを増やす秘訣は、肥満の解消と運動であることはほぼ確実だ。
Fish oil supplements may help fight against Type 2 diabetes(米国内分泌学会 2013年5月22日)
[ Terahata ]