ウォーキングとランニングを比べ、「健康増進の効果が高いのはどちらだろう?」と疑問を感じている人は少なくない。「運動量が同じくらいであれば、どきらも効果的」という研究が発表された。
カリフォルニア州のローレンスバークレー国立研究所の研究者らは、米国で行われている「国民ランナー健康研究(National Runners' Health Study)」に参加した、3万3,060人のランナー、1万5,045人のウォーカーを対象に、6年間追跡して調査した。
参加者の年齢は18〜80歳と幅広く、平均年齢は、ランナーは男性48歳、女性41歳、ウォーカーは男性62歳、女性53歳だった。ウォーキングに取り組む人は、比較的女性の割合が高く、また肥満者や喫煙者が多かった。
調査の結果、ウォーキングとランニングには、どちらも高血圧、高コレステロール、糖尿病の発症を予防する効果があることが分かった。減少率はウォーキングとランニングとでは、あまり差が出なかった。
ランニングを続けた人では、まったく運動しなかった場合に比べ、6年間に高血圧が4.2%、高コレステロールが4.3%、糖尿病が12.1%、それぞれ発症が減った。
ウォーキングを続けた人では、高血圧が7.2%、高コレステロールが7.0%、糖尿病が12.3%、それぞれ発症が減った。
「ウォーキングもランニングも有酸素運動であり、どちらも健康増進の効果を期待できます。運動強度はランニングの方がウォーキングよりもが高いのですが、運動する時間を調整することで、効果を同等に高めることができます」と、カリフォルニア州のローレンスバークレー国立研究所のポール ウィリアムズ氏は話す。
運動量の基準値は、「MET(Metabolic Equivalent)」という運動強度を示す単位ではかられた。安静に座ったままテレビなどを観賞しているときを1METとし、ゆっくり歩いたり部屋の掃除などをしていると2METs、きびきび歩くと3.3METsといったように、安静時の運動量の倍数でさまざまな運動が数値であらわされる。
生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防・改善するための運動は3〜6METsが目安となる。例えば、時速13kmで走ると13.5METsに相当するという。
運動量は、運動強度と費やした時間とで求められる。6METsのウォーキングを1時間行えば、12METsのランニングを30分行った場合とほぼ同じくらいの運動量になる。
「運動強度の違いや体への負担など、それぞれの長所・短所を理解したうえで行うと効果があります。ランニングのような激しい運動は、足首、ひざ、腰に大きな負担がかかります。肥満のある人は腰やひざ、関節に障害が起こらないようにする注意が大切で、ランニングよりウォーキングの方が無難かもしれません」(ウィリアムズ氏)。
体力に不安のある人は、強い運動を短時間行うよりも、軽い運動を長時間続けた方が、疲労感は少なく、トータルで消費エネルギーを増やすことができるという。
「他人とおしゃべりしながらできる程度の軽いウォーキングからはじめても、運動の効果は期待できます。自分に合った運動強度をみつけることが大切です」とメイヨー クリニックのジェラルド フレッチャー氏は強調する。
米国疾病管理予防センター(CDC)と米国心臓学会(AHA)は、1回30分程度の中強度の運動を週に5日行うか、1回25分の活発な運動を週に3日行うことを勧めている。
Walking can lower risk of heart-related conditions as much as running(米国心臓学会 2013年4月4日)
[ Terahata ]