10分間の短時間の運動であっても、毎日積み重ねていけば、フィットネスクラブでの数時間の運動と同じくらいの健康上の便益をもたらし、メタボリックシンドロームの予防効果を得られるという研究が発表された。
部屋の掃除や庭の草刈り、荷物運び、ウォーキングやサイクリング、子供との遊びなど、日常生活での1回10分程度のちょっとした活動であっても、積み重ねればエネルギー代謝を向上させ、肥満予防につながるという研究が、米国で発表された。
「体重を減らし、コレステロール値や血糖値を下げ、心筋梗塞などを予防するために、運動は有用です。まとまった時間にしっかりとした運動を行わないと効果がないと思われがちですが、実際には10分程度の身体活動であっても、効果があることが分かりました」と、ボストン大学医学部のニコル グラザー氏(予防医学)は話す。
小さい身体活動であっても、積み重ねれば大きな効果をもたらす。「何もしないで過ごすよりも、どんなことであっても体を動かすことは良いことです。ただし、毎日続けることが大切です」(グラザー氏)。
この研究は、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるために行われている大規模研究である「フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)」の一環として行われた。
研究チームは、平均47歳の2,109人の男女(55%が女性)を対象に調査した。身体活動を持続的に測定できる、3次元加速度計を内臓した活動量計を装着してもらい、24時間の活動を5?7日間記録した。
適度な運動から強い運動や身体活動の総時間や、10分間以上続けた時間、10分間未満の時間を算出した。身体活動には、ウォーキング、ジョギング、ゴルフ、ハイキング、バドミントンのような運動から、釣り、掃除、庭の芝刈りなどの身体活動まで、全ての活動が含まれていた。
総運動時間は、HDLコレステロールの高値、中性脂肪、体格指数(BMI)、腹囲径などの低値に有意に関連していた。運動時間が長くなると、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症リスクを示す「フラミンガムリスクスコア」も低値になった。
興味深いことに、10分間未満の身体活動の総時間が長いと、これらのリスク要因が抑えられることが示された。
健康増進のための運動としては、適度なウォーキングなどの運動を週に150分間以上、ジョギングや水泳やのような強い運動を週に75分間行うことが勧められている。
研究では、10分未満の短時間の運動であっても、総時間が長い人は、激しい運動をしている人と同じくらい、肥満度や腹囲径、フラミンガムリスクスコアなどが低く抑えられていることが分かった。
「運動をする時間をとれなかったり、1日の仕事が終わった後にジムに行って運動をする余力が残っていない人であっても、小さい身体活動を積み重ねれば、運動の便益を得られます。運動にためにできることは、フィットネスクラブへ行くことだけではありません」と、グラザー氏は強調する。
「エレベーターではなく階段を使ったり、車を使わずに駅まで歩くといった日常での工夫を積み重ねていけば、運動をする時間がない場合でも、運動の便益を得られることが確かめられました」としている。
Sustained and Shorter Bouts of Physical Activity Are Related to Cardiovascular Health(米国スポーツ医学会 2013年1月)
[ Terahata ]