床に座った状態から手を使わずに立ち上がれる人は長生きできるかもしれない――50〜80歳を対象とした簡単な体力テストが考案された。「床や椅子に手や膝をついたり、手助けがないと立ち上がれない場合は、体力や運動器が衰えているサインです」と、研究者はアドバイスしている。
座って立つ―2分でできる体力テスト
「運動器の衰えを知る方法は簡単です。床に座る動作と立ち上がる動作を、手や膝をついたり、手助けをしてもらったりしないで、独力でできるかを試してみるだけで良いのです」とクラウジオ ギル アラウジョ氏は説明する。アラウジョ氏は、ブラジルのリオデジャネイロにあるクリニメックス運動医学クリニックの医師だ。
「筋力は20〜30歳代をピークに、ふだんの活動量が少ない人ほど低下してきます。筋力の低下は特に下半身に起こりやすく、転倒などの原因になります。筋力トレーニングを続ければ、つまずいたときなどに自分の体をしっかりと支えられるようになります」とアラウジョ氏は言う。
アラウジョ氏らは、この「座る―立つ」の一連の動作による体力テストを、51〜80歳の2,000人以上の男女を対象に行った。このテストは2011年10月までの平均6.3年間続けられた。
参加者に「素早く動けるかどうかを気にせずに、座り、立ち上がるという動作を行ってください。そのときに、なるべく床に手や膝を付いたり、椅子に手をかけたり、誰かに助けてもらわないようにしてください」と説明した。
この2つの基本的な動作を、10ポイントを満点として採点し、手や膝をついたり、手助けが必要な場合はポイントを減算していった。期間中に159人が死亡したが、死亡率は欧州心臓病学会の公表している平均値とほぼ同じだった。
解析した結果、3ポイントしか得点できなかった人は、8ポイントを得点した人に比べ、死亡率が5〜6倍高くなった。また、得点数が8ポイント未満の人は、6.3年の調査期間の死亡率が2〜5倍に上昇していた。
年齢や性別、肥満度(BMI)の影響を取り除いても、この「座る―立つ」の体力テストにより、体力や体の柔軟性、バランス能力を正確に予測できることが分かった。
「この体力テストは、特別の設備や道具を必要とせず、どこでも安全に行えます。時間も2分とかかりません。我々のクリニックでは臨床で、小児から老年まで、あらゆる年齢層でこのテストを10年以上続けてきました」とアラウジョ氏は説明する。
「加齢に伴い体から柔軟さが失われ、バランス能力が低下したり、筋力の低下が起こるのは自然なことです。筋肉や関節、骨などの機能が低下すると、やがて歩けなくなり、肥満やメタボリックシンドロームにつながります。それを防ぐために、日常生活で身体活動を増やす工夫や、筋力をつけるための運動、食生活の改善などが必要になります」(アラウジョ氏)。
「中年を過ぎたら、このテストを自分で行ってみてください。座る-立ち上がるという動作を、片手を付いただけでできれば、ますまず良好です。そうでない場合は、ふだんからウォーキングを行い、正しい姿勢できちんと立ったり、こまめに体を動かす工夫をすると、筋肉が柔らかくなり、筋力アップにもつながります」とアラウジョ氏は強調している。
Ability to sit and rise from the floor is closely correlated with all-cause mortality risk(欧州心臓病学会 2012年12月13日)
[ Terahata ]