ウォーキングやサイクリング、ランニングが健康に良いことは分かっていても、肥満があったり、腰痛や関節痛などの問題を抱えており、「制限があり運動ができない」という人は少なくない。そうした場合には水中運動を行うとよいかもしれない。水中で行う有酸素運動は体の負担が少なく、陸上運動と同等以上の効果があるという研究が発表された。
アクアエクササイズは、水の特性である、抵抗、浮力、水圧を利用した運動で、陸上で行う同じような運動とは異なる効果が期待できる。水中では浮力が働くので、肥満や足腰に疾患がある人でも、膝や腰への負担が軽くなるために楽に運動することができる。
モントリオール心臓研究所の研究チームは、プール内に耐水性のエアロバイクを設置し、22人の健常者に運動をしてもらった。被験者に水中で胸まで水に浸かった状態で、水中サイクリングを疲労困憊するまで続けてもらい、陸上でのエアロバイクで運動した場合と比較した。
運動によりどれだけ酸素消費量が改善したかを評価するために、最大酸素摂取量(VO2max)を調べ、運動負荷試験を行った。その結果、プール内で水中サイクリングをすると、陸上でサイクリングをした場合に比べ、最大酸素摂取量が80%に減ることが分かった。また、水中運動では陸上運動に比べて心拍数が低く抑えられる傾向も示された。
水中では水圧による締め付け効果で血流が良くなり、陸上での運動では下半身に溜まりがちな老廃物が回収されやすくなる。また、腹部胸部にかかる圧力により、腹式呼吸を促す効果も期待できるという。
「水中サイクリングがもたらす循環器への有益な作用は、陸上のサイクリングを上回っていた。水中運動では心臓がより効率的に働くようだ。心臓の一回の拍出でより多くの血液がポンプアウトされるため、心拍数が増加することなく血流量が増加する」とモントリオール心臓研究所のマーチン ジュノー氏は指摘する。
「陸上において故障などのために身体をうまく動かすのが難しいような場合でも、水中運動であればより効果的な運動を期待できる」とジュノー氏は強調する。水泳は効果的な運動ではあるが、全ての人が必ずしも泳ぎができるわけではないという欠点もある。サイクリングのような運動を水中で行うことで、けがの可能性を低下させ、より高い運動効果を期待できるという利点もあるという。
「運動には、ストレスレベルの低下や充足感も得られる効果もある。陸上での運動が難しいという人であっても、水中であれば安全に効果的に運動ができる。運動を始めるが遅すぎるということはない」と心臓・脳卒中財団のベス エイブラムソン博士は述べている。
Everyone in the pool! Water workouts just as good as on land(心臓・脳卒中財団 2012年10月30日)
[ Terahata ]