10月も下旬になり、風邪やインフルエンザに気をつけなければならない季節になってきた。日本でも今年はじめてのインフルエンザによる学級閉鎖が報道されている。糖尿病の人は、季節性インフルエンザと新型インフルエンザ(H1N1)の両方に対しとりわけ注意が必要だと、米国疾病管理予防センター(CDC)が注意を呼びかけている。
流行前のワクチン接種が大切
インフルエンザワクチンは、かかった場合の重症化防止に有効だ。季節性インフルエンザは通常、12月〜3月頃に流行する。インフルエンザに対策するために、もっとも確実な予防は流行前にワクチン接種を受けることだ。特に、高齢者や糖尿病などの基礎疾患をもつ人には予防接種が勧められている。
糖尿病の人が血糖コントロールが良くない状態が続くと、インフルエンザなどの感染症に対する体の免疫機能が低下している場合がある。CDCは、糖尿病の人は10月〜11月中旬に季節性インフルエンザの予防接種を受けることを勧めている。
インフルエンザにかかる発端はインフルエンザウイルスが体の中に入ってくることだが、これをワクチンで防ぐことはできない。まずウイルスを近づけないように手洗いやうがいなどが重要になる。
次に、体内へ入ったウイルスは細胞に侵入して増殖する。ウイルスが増殖すると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛みなどのインフルエンザの症状が引き起こされる。ワクチンは、この発症を抑える効果については一定程度、認められており、65歳未満の健常成人で、70〜90%の発症予防効果があるとの報告がある。
発症後、多くの場合で1週間程度で回復するが、なかには肺炎や脳症などの重い合併症が現れ、入院治療を必要とする人もいる。特に高齢者や糖尿病などの基礎疾患のある人では重症化する可能性が高いと考えられている。ワクチンのもっとも大きいのは、この重症化を予防する効果だ。
インフルエンザは予防が第一
その他にインフルエンザを予防する方法として、以下をあげている。
- 外出後の手洗い
手洗いは手指など体に付着したインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず感染予防の基本となる。また、外出後の手洗い、うがいは一般的な感染症の予防のためにも勧められている。
- 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなる。特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50〜60%)を保つことも効果的だ。
- 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけよう。
- 人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、特にご高齢者や糖尿病などの基礎疾患のある人、疲労気味、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えよう。やむを得ず外出をして人混みに入る可能性がある場合には、ある程度の飛沫などを防ぐことができる不織布製マスクを着用することはひとつの防御策と考えられる。
- 体重を毎日はかる
減量のための対策をしていないのに体重が急速に減っている場合は、高血糖が疑われる。すぐに医師に相談しよう。
インフルエンザにかかった時は、通常よりも血糖コントロールに注意が必要
CDCによると糖尿病の人は風邪やインフルエンザにより、血糖コントロールが乱れやすくなる。体調を悪くすることで、規則的に食事をとりにくくなり、血糖値に影響が出るおそれもある。
「インフルエンザと診断された場合は、血糖自己測定の頻度を増やす必要がある場合がある。インフルエンザのために疲れを感じている場合は、低血糖と高血糖の症状が起こりやすくなる」と米国糖尿病学会(ADA)のデビー ジョンソン氏は述べている。
「発症後は薬の量を調節しなければならない時もある。また、自己判断でインスリン注射を中断するのは非常に危険だ。対処の仕方が分からなければ主治医に連絡しよう」と強調している。
こんなときは迷わず診察を受けよう
風邪やインフルエンザのために食事をできない時間が6時間を越えたり、嘔吐してしまう場合は、医師による緊急のアドバイスや治療が必要となる。
また、39度以上の高熱、60mg/dL未満の低血糖や300mg/dL以上の高血糖、または、息が苦しい、下痢をしている、心臓の鼓動が異常に早いなどの強い自覚症状がある場合も、迷わず医師の診察を受けよう
また、症状が重くなっていく、またはなかなか良くならない、過度の眠気がある場合も緊急の治療が必要となる場合がある。
Diabetes and the Flu: 6 Things You Should Know(米国疾病管理予防センター)
インフルエンザ対策(厚生労働省)
[ Terahata ]