雑穀を食べる人が増えている。雑穀は食物繊維などが豊富に含まれており、糖尿病患者にとってもメリットの多い食品。
日本人は古来、雑穀を食べていた
雑穀とは、アワ、キビ、ヒエ、ソバ、ライ麦、モロコシなどの穀物や豆類の総称。日本人の先祖は多くの雑穀を食べており、弥生時代の遺跡である登呂遺跡でも土器などとともに発見されている。紀元前4000年以前の縄文時代にはすでに栽培されていたと考えられている。
米は日本人の主食となっているが、すべての日本人が白米を食べられるほど生産量が増えたのは比較的最近のこと。江戸時代までは、米は限られた上流階級のみが食べる贅沢な食糧だった。昭和20年頃までは雑穀はよく食べられており、庶民は米に混ぜて食べるのが一般的だった。戦後豊かになると主食は白米に代わり、食卓にのぼることは少なくなり生産量は激減した。
以前は「米を食べられないから雑穀を食べる」といったマイナスのイメージをもつ人が多かったが、最近は栄養価の高い健康的な食品として認知されている。雑穀には食物繊維が豊富に含まれている。食物繊維には、食後高血糖の抑制、コレステロールの低下など、糖尿病患者に有用な作用がある。
食物繊維は1日に20gから25gとることが勧められている。例えば白米に押し麦を3割ほど混ぜて麦ご飯にすると、1食分(米と押し麦で約100g/炊くと茶わん2杯程度)で食物繊維を約3.2gとれる。白米のみ(米 約100g/食物繊維 約0.5g)の場合に比べ約2.7gを余計にとれる。雑穀を取り入れると、ビタミンB群、カルシウム、鉄分、マグネシウムなどの栄養素も多くとれる。
白米に混ぜて炊くだけでおいしく調理できる
雑穀はいろいろな種類を白米に混ぜて食べると、多種類の栄養素も摂取できる。精白されていない玄米も健康的とされるが、硬くて咀嚼に時間がかかる、白米のほうが食感や味覚が良いという声も聞かれる。雑穀は混ぜ具合を工夫すれば固くならず、むしろおいしく食べられる。
白米に混ぜて炊くだけで調理できる簡便さも支持されており、雑穀を数種類ブレンドしたものがスーパーマーケットなど身近なところでも買えるようになった。米といっしょに炊くと見た目も華やかになり、独特の弾力やプチプチした食感も味わえる。健康食や自然食を売り物にするレストランなどでは、主食だけでなくサラダに入れたり、煮込んでスープにするなど新しいメニューも登場している。
食糧としての生産量は増えており、生産者側においてもメリットの大きい作物として注目されている。雑穀は過酷な環境でも育つ生命力に溢れた作物だ。冷害や干ばつにも強く、病害虫にも強いので無農薬栽培をしやすい。長期保存もできる。岩手県は生産量が日本一で、雑穀6品目(ヒエ、アワ、キビ、アマランサス、ハトムギ、モロコシ)の生産量は全国の6割を占める。県は流通販売戦略の策定も進め、雑穀の「岩手ブランド」をつくり独自の雑穀文化を全国に発信する考えだ。
雑穀の販売企業などでつくる日本雑穀協会は、3月9日を「雑穀の日」に定めた。「雑穀は作物資源として重要で、日本人の主食の原点ともいえる。おいしく栄養価も高い。ぜひ食事のメニューに雑穀をとりいれて欲しい」として普及活動を行っている。
日本雑穀協会
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[ Terahata ]