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2026年09月04日

75歳以上の2型糖尿病、開始するならどっちの薬? 国内505万人のデータで比較

 統計数理研究所などの研究グループは、国内の約505万人分の医療データベースを用いて、75歳以上の2型糖尿病患者がSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のどちらで治療を開始するかでその後の経過に影響があるかを比較検討し、結果を『Age and Ageing』に報告した。それによると、DPP-4阻害薬から治療を始めた人に比べてSGLT2阻害薬から治療を始めた人では、全死亡と末期腎不全・透析導入のリスクが低かった一方で、脳卒中のリスクは高かった。ただし、研究グループは「結果の解釈には、慎重を期す必要がある」としている。

75歳以上のエビデンスは限定的

 75歳以上の高齢者は複数の健康問題を抱えていることが多く、ランダム化比較試験に組み入れられにくい。そのため、日常診療でこの年代の患者さんにSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のどちらを処方するのが望ましいかについてのエビデンスは限られていた。

 そこで研究グループは、国内19自治体の約505万人分の住民情報を収載した医療データベース「LIFE Study」を用いて、2型糖尿病患者がSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のどちらで治療を開始するかで、その後の経過にどのような影響が出るかを検討した。

■観察期間:2014年4月~2024年9月
■解析対象:75歳以上の2型糖尿病患者8,486人(SGLT2阻害薬群2,204人、DPP-4阻害薬群6,282人)
■追跡期間:中央値3.0年

 解析には「標的試験エミュレーション」と呼ばれる手法を用いた。実施の難しいランダム化比較試験をあらかじめ想定し、その設計を日常診療のデータ上で模倣する方法で、年齢、性、BMI、血糖値、血圧、腎機能、喫煙、飲酒、心不全、脳卒中、心疾患、使用薬剤、治療開始年など多数の背景要因を統計学的に調整した。治療開始後1カ月は、導入期間として主要解析から除外した。

SGLT2阻害薬群で、死亡と透析導入のリスクが低かった

 その結果、全死亡のリスクはDPP-4阻害薬群と比べSGLT2阻害薬群で約32%低かった(ハザード比0.677、95%信頼区間0.500〜0.916)。ハザード比は、数値が1より小さいほどリスクが低いことを示す指標である。

全死亡の結果

(統計数理研究所プレスリリースより)


 3年間の死亡リスクは、DPP-4阻害薬群の8.7%に対し、SGLT2阻害薬群では5.0%、その差は3.7%ポイントだった。観察研究に基づく仮想的治療必要数(number needed to treat;NNT)の算出から、27人が3年間SGLT2阻害薬を開始した場合、死亡1件の減少に相当すると推定された(仮想的NNT 27.0、95%信頼区間17.9〜55.6)。

 末期腎不全または透析導入のリスクについても、DPP-4阻害薬群と比べSGLT2阻害薬群で約63%低かった(ハザード比0.374、95%信頼区間0.157〜0.890)。

 一方、心不全による入院のリスク(ハザード比1.103、95%信頼区間0.854〜1.426)、心筋梗塞のリスク(ハザード比1.015、95%信頼区間0.768〜1.341)は、いずれも両群で明確な差はなかった。

主要アウトカムの比較

(統計数理研究所プレスリリースより)


脳卒中の結果、解釈は慎重に

 脳卒中の発生頻度については、治療開始時にどちらの薬を選んだかに基づく主要解析では、DPP-4阻害薬群と比べSGLT2阻害薬群で高かった(ハザード比1.420、95%信頼区間1.165〜1.828)。ただし、当初の薬を継続した場合を想定した解析では、その差が縮小し(ハザード比1.110、95%信頼区間0.866〜1.424)、明らかな差は認められなくなった。

 研究グループは、この結果について、「SGLT2阻害薬が脳卒中を直接増やしたと解釈すべきではない」としている。理由は、SGLT2阻害薬群は心不全、腎疾患、心房細動、脳卒中の既往歴がある人が多く、統計的な調整を行っても、フレイル、血管病変の程度、医師が薬を選んだ理由といったデータに含まれない背景の違いが残った可能性を否定できないためだという。また、死亡リスクが両群で異なる場合、死亡した人はその後に脳卒中を経験しないという「競合」の影響もあると指摘する。

 有害事象については、重症低血糖と尿路感染症に両群で明確な差はなかったが、性器感染症はSGLT2阻害薬群で多く観察された。

年齢だけで一律に治療を決めるべきではない

 研究の限界として、研究グループは、ランダム化を行っていない観察研究であること、データに含まれない要因の影響を完全には取り除けていないこと、腎機能・喫煙・飲酒に欠測値があること、診療報酬データに基づくため疾患の誤分類が起こりうること、LIFE Studyに参加した自治体のデータであるため日本全体や海外にそのまま当てはめられるとは限らないこと―を挙げている。

 今回の結果を踏まえ、研究グループは「75歳以上であれば誰でもSGLT2阻害薬を使用するなど、年齢だけで一律に治療を決めるべきではない。全死亡や腎アウトカムとの好ましい関連と、脳卒中や性器感染症などの注意すべき点の双方を勘案して、一人ひとりの健康状態に応じて適切に治療を選ぶことが重要だ」との考えを示している。

 今後の課題としては、国内の他の医療データベースや海外のデータでの再検証、とくに脳卒中における虚血性と出血性の違いや治療開始前の脳血管病変などの詳細な検討が必要だとしている。

■参考

[ 糖尿病ネットワーク編集部 ]

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