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2026年08月17日
膝や股関節にやさしい糖尿病治療薬は? SGLT2阻害薬 vs. GLP-1受容体作動薬
2型糖尿病の治療薬には、単に血糖値を下げるだけでなく、心臓や腎臓を保護するなど、さまざまな副次的メリットを有するものがある。そして今、関節の健康への影響も注目されている。近年、広く使われている新しい糖尿病治療薬に、「SGLT2阻害薬」と「GLP-1受容体作動薬」がある。研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、変形性関節症(関節の軟骨がすり減って痛みが出る病気)の発症について、この2種類の薬剤を比較する後ろ向きコホート研究を実施し、結果をPLOS One〔2026; 21(7): e0353956〕に報告した。
変形性関節症の発症に肥満や炎症が関連
変形性関節症は、加齢や肥満などが原因で関節の軟骨がすり減り、強い痛みや腫れが生じる病気である。2型糖尿病患者は、糖尿病のない人に比べて変形性関節症になりやすく、症状の進行も早いことが以前から知られていた。その理由としては、高血糖による代謝の異常や、体内で慢性的に起きている微弱な炎症が、関節の軟骨に悪影響を及ぼすためと考えられている。
近年、2型糖尿病の治療においてSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬という新しい薬が広く使われるようになった。これらの薬剤は血糖コントロールの改善という本来の目的に加え、体重減少や全身の炎症抑制といった働きを持つことがわかっている。
変形性関節症の発症には肥満や炎症が深く関わっているため、これらの薬を使うことで、糖尿病患者の関節症発症リスクを抑えられるのではないかと期待されてきた。しかしこれまで、これら2種類の薬剤を直接比較して、どちらがより変形性関節症の発症抑制に有用かを検討した研究はなかった。
そこで研究グループは今回、大規模データを使用して、2型糖尿病患者における変形性関節症の発症リスクを、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬で比較する後ろ向きコホート研究を実施した。
SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群、各45万人超が対象
対象は、2017~2019年に新たにSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を処方された18歳以上の2型糖尿病患者。米国の大規模な電子カルテデータベース「TriNetX」を用いて選定した。薬剤の使用開始後に新たに発症した関節症について検討するため、元々、変形性関節症と診断されていた人は除外した。
患者の背景(年齢、性、人種、HbA1cの値、肥満の有無、高血圧や心疾患など他の病気)に偏りが生じないよう、傾向スコアマッチングという手法を用いて両群の条件が均等になるよう調整した。
解析対象:SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の各45万2,445人
追跡期間:5年間
主要評価項目:変形性関節症全体(膝および股関節)の発症
副次評価項目:変形性膝関節症の発症、変形性股関節症の発症、人工膝関節全置換術(TKA)の実施、人工股関節全置換術(THA)の実施、症状緩和のための関節注射の実施
SGLT2阻害薬群で、「膝」は約17%のリスク低減
解析の結果、変形性関節症全体の新規発症リスクは、GLP-1受容体作動薬群に比べSGLT2阻害薬群で約8%低かった〔ハザード比(HR)0.921、95%信頼区間0.895~0.946、P<0.001〕。特に変形性膝関節症は、リスク低減が約17%とより大きかった(同0.831、0.783~0.882、P<0.001)。
一方、股関節OAの発症については、両群に明らかな差はなかった。
関節注射の実施を要するリスクについては、GLP-1受容体作動薬群に比べSGLT2阻害薬群で8.5%低かった(HR 0.915、95%信頼区間0.882~0.951)。
なお、症状が進行して最終的に手術(TKA、THA)が必要となるリスクについては、5年間という観察期間では両群に明らかな差は認められなかった。
「個別化医療」の重要性を強調
2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬の使用と比べてSGLT2阻害薬の使用が、変形性関節症の発症リスク低下と関連しており、特に膝OAおよび関節注射において、その傾向が顕著だった。この結果について、研究グループは「糖尿病治療における薬剤選択が、リスクの高い患者集団において、関節の健康にも影響を与える可能性を示している」と評価。さらに、「今後の糖尿病治療において、単に血糖値を下げるだけでなく、関節の健康状態をも考慮した『個別化医療』の重要性を強調するものである」としている。
もちろん、自己判断で薬を中止したり変更したりするのは危険である。現在、糖尿病の治療中で、膝や股関節に不安を抱えている方は、まず主治医に相談することが推奨されるだろう。
■参考
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