現行の血糖自己測定への不満と
改善してほしい点から
見えてくること
血糖自己測定の実態調査
血糖自己測定(self─monitoring of blood glucose:SMBG)が1986年に保険適用となってから30年が経過しました。この間、機器の進歩によって、測定に必要な採血量はより少量に、値が出るまでの時間はより短く、測定精度も向上し、現在では糖尿病患者さんが血糖変動を知る手段として、広く治療に生かされています。
一方で、測定のたびに患者さん自身が指先などを穿刺、採血して、試験紙に血液を吸引させるというSMBGの基本的な方法にはほとんど変化がなく、穿刺の痛みや測定手技の煩雑さは依然として残ります。また、SMBGでは、1 日においてSMBGを行った時点のみ、しかも日中の覚醒時にしか血糖値を把握することはできません。近年、持続血糖測定器(CGM)の普及により、糖尿病患者さんでは、非常に大きな血糖変動や睡眠中の低血糖がしばしば起きていることが明らかになりましたが、SMBGにはこれらの全容を捉えることができないという限界があります。
今回のアンケートは、このように現行のSMBGの問題点が患者さんにとってどの程度負担となり、より良い治療を行う妨げとなっているのかを明らかにするために実施されました。
アンケート調査結果のまとめ
❶ 現行の
SMBGの
課題
SMBGへの満足度は高い
「現在のSMBGに満足しているか?」を聞いたところ、「まあまあ」「十分満足している」が約半分を占め、 ある程度の満足度が得られていることがわかりました(図A)。また、具体的に、「低血糖の対処や予防 にSMBGが役立っているか?」という問いには、「まあまあ」「大変役立っている」との回答が8割を超えていました(図B)。
一方で低血糖は多い
ところが、実際には、低血糖をたびたび繰り返す患者さんが多数を占めていました。とくに1型糖尿病では これまでに低血糖を経験した回数は50回を超すという回答が最多でした(図C)。
また、今回の調査では、HbA1cと、低血糖の回数や重症低血糖の経験に相関はみられませんでした。 つまり、低血糖はHbA1cによらず起こっていることが示されました(図D)。
SMBGの満足度は高いのに、低血糖の頻度が高いのはなぜか
「SMBGは低血糖の対処や予防に役立っている」と考える患者さんが多い一方で、実際には低血糖を頻 発する患者さんが多く存在します。現行のSMBGシステムの課題を示す結果となりました。
❷ 現行の
SMBGへの
不満
現行のSMBGへの患者さんの不満は、「測定方法・手技の煩雑さ」、「得られる情報の少なさ」に大別されます。
“測定方法・手技の煩雑さ”
現在、SMBGをしている患者さん、過去にしていたが中止した患者さんともに、 「測定に手間がかかる」「採血が痛い」ことといった“測定方法・手技の煩雑さ”に多くの方が不満を感じていました(図E)。そして、こうした不満が解消されたら、血糖コントロールを改善可能と考えている患者さんが多いということがわかりました(図F)。
“得られる情報量の少なさ”
また、「睡眠中の血糖値がわからない」「測定の前後に血糖値が上昇しているのか下降しているのかわからない」「測定回数が限られている」「いつ低血糖になっているのかわからない」といった“得られる情報量の少なさ”に関する不満も多い結果でした(図E)。これらの不満は、現行SMBGの「低血糖対策としての不十分さ」を表しているとも言い換えられます。
❸ 測定回数の
満足度
SMBG測定回数は「増やしたい」人もいれば、「減らしたい」人も
1型糖尿病患者さんで“SMBGから得られる情報量の少なさに対する不満”が多かったことは、「測定回数を自由に決められるなら回数を増やしたいか?」との質問の回答にも見て取れます。
つまり、この質問に対し、2型糖尿病では「増やしたい」は16%だったのに対し、1型糖尿病では30%と、測定回数の不足を感じている患者さんが多かったのです(図G)。
一方で、「回数を減らしたい」という患者さんが、2型糖尿病で23%、1型糖尿病で18%を占めており、これは、“測定方法・手技の煩雑さ” に対する不満のあらわれと考えられます。
今より測定回数を増やしたいと思いますか? 1型では約30%の方が回数不足を感じていた。2型では、「増やしたい」は16%だった
❹ 新しい
血糖自己測定
システムへの
期待
過半数が新しい血糖自己測定システムに興味を持っている
「現在の血糖自己測定の方法とは別に、海外では腕にセンサーを貼り付け、2週間いつでも痛みなく血糖値を測定することができ、持続的に血糖の変動も簡単に確認できる製品がある」とのみ説明したうえで、それを使ってみたいと思うか否かを質問したところ、結果は図Hのとおりで、期待の強さがうかがわれました。反面、「気になる点」として、医療費負担や皮膚へのダメージの不安が多い結果でした(図I)
具体的にはどのようなことですか? 当てはまるものをすべて選んでください。