ダイエットや疲労回復などの目的でサプリメント(サプリ)を使ってみたが、期待していた効果はなかったという経験はないだろうか。体に必要な栄養素を毎日の食事でしっかりとるのが基本で、足りない分をサプリなどで補うのがもっとも一般的な使い方だ。しかし、サプリや健康食品を利用する際には注意も必要だ。
不足しがちな栄養素を手軽に摂取できるサプリを、多くの人が利用している。しかし、利用するときには注意が必要だ。2月21日で東京で開催された公開セミナーで国立健康・栄養研究所情報センター長の梅垣敬三氏が注意点を解説した。
過剰摂取と医薬品との相互作用に注意
内閣府消費者委員会が2012年におこなった調査によると、サプリなど健康食品を利用している人は国民の60%におよび、うち半分にあたる26%の人は毎日飲んでいるという。また、50代以上の約3割が健康食品をほぼ毎日利用している。
多くの人が利用しているサプリだが、適切に利用しないと健康上の害になる場合もある。
まず注意が必要なのは過剰摂取。錠剤・カプセル状のサプリは特定の成分が濃縮されているために、日常食べている食品よりも体への作用が強くなりがちだ。
医薬品との相互作用にも注意すること。サプリの中には医薬品の効果を強めたり、弱めたりするものもある。そのため薬を飲んでいる人は、医師に相談したり、内閣府の食品安全委員会などが出す注意喚起にも気をつけた方が良い。
たとえば、骨粗鬆症の治療によく使われる「ビスホスホネート製剤」と「カルシウムのサプリ」は一緒にとってはいけない。ビスホスホネート製剤にはカルシウムと結合しやすい性質があり、薬が腸管から吸収されにくくなるためだ。
また、血栓ができるのを防ぐ薬「ワルファリン」をのむ際に注意したいのが納豆だ。ワルファリンは、納豆に含まれるビタミンKによって効果が弱められてしまう。ビタミンKを含むサプリにも注意が必要だ。
サプリや健康食品の品質や成分を確認
一般に錠剤・カプセル状のサプリは、医薬品と混同されやすいが、両者はまったく異なるものだ。その違いは「製品の品質」と「有効性・安全性の科学的根拠」だ。
製品の安全性・有効性を確保するには、製品中に一定量の有効成分が含まれ、有害成分が含まれていないことが重要となる。医薬品はすべてGMP(適正製造規範)にもとづき、一定の品質が確保された製品として製造されている。しかし、サプリや健康食品の多くはGMPにもとづく製造はされていない。
「医薬品にも使われている成分です」との文言で製品の有効性をアピールしているサプリがある。しかし、表示されている成分の製品中の含有量は、効果が期待できないほど微量であったり、医薬品とは利用目的や利用方法が異なっていることがある。
健康食品と異なり、医薬品は病気の人を対象に効果や安全性が検討されていて、医師・薬剤師によって安全かつ効果的に利用できる環境が整備されている。
サプリや健康食品は「摂取すれば健康になれる」というイメージが強いが、安全性や有効性がしっかり検証されている製品もあれば、まったく検証されていない製品もある。
GMPで製造された製品であるなど、製品の品質が確保されていること、製品中の個別成分の含有量、製造者や問い合わせ先が明確になっていることを確認しよう。
健康食品に関する基礎知識や成分に関する安全性・有効性についての詳しい情報は、国立健康・栄養研究所が運営している"
「健康食品」の安全性・有効性情報"で検索できる。
マルチビタミン・魚油のサプリが基本
そうした注意をふまえた上で、専門家がまず基本のサプリとしているのがマルチビタミン・ミネラルだ。必要な複数のビタミンとミネラルが入っているもので、米国では不足しがちな栄養を補うためのベースサプリメントとしてもっとも利用されているという。
ではどんな栄養素が、どんな働きをするのか。ビタミンA、C、Eは、体内の活性酸素の働きを抑える作用を持つ抗酸化ビタミンの代表だ。
脂溶性のビタミンEやA(βカロテン)は脂質でできた細胞膜などで働き、水溶性のCは水のある細胞質や体液中で働き、相互に作用することで抗酸化作用を発揮する。ストレスが多い、喫煙している、ハードな運動をするといった人ほどとるとよい。
ビタミンB群はエネルギーを生み出すのに関わる酵素の働きを助ける。糖や脂肪をエネルギーに変える際にはB
1やB
2などが、タンパク質の代謝にはB
6やB
12などが働く。
ビタミンDは骨の強化、風邪や動脈硬化、糖尿病、乳がん、認知症、うつの予防などの働きが報告されている。日光を浴びると皮膚で合成されるが、日にあまり当たらない、魚をあまり食べないという人は不足している可能性がある。
動脈硬化やもの忘れが気になる人には、魚油の成分であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)。血液をさらさらにして動脈硬化を抑える働きがある。認知機能の改善効果なども報告されている。
ここでも注意しなければならないのは、サプリや健康食品に医薬品と同じ効果を期待しないこと。サプリによって健康被害が引き起こされる例は実際にはわずかだが、飲んでなんとなく調子が悪いと感じるような場合には、中止して医師や薬剤師に相談することが重要だ。
独立行政法人 国立健康・栄養研究所
「健康食品」の安全性・有効性情報
[ Terahata ]