呼気中に混ざる微小なアセトンを測定する携帯型の検査機器を、オックスフォード大学の研究チームが開発した。「1型糖尿病を早期発見するのに役立てられる」と研究者は述べている。
糖尿病ケトアシドーシスは危険
1型糖尿病は、免疫系が自分の体を攻撃して、インスリンを作っている膵臓のβ細胞が破壊されることで起こる自己免疫疾患だ。
1型糖尿病は2型糖尿病と異なり、生活スタイルや食事などの影響を受けずに発症する。子供や若者のときに発症することが比較的多いが、発見が遅れると生命に関わることがある。
オックスフォード大学の研究チームは、潜在的に多くの1型糖尿病患者の生命を救い、自己免疫疾患を確認できる携帯型の検査機器を開発したと発表した。
その検査機器は、呼気に含まれる微量の「アセトン」を検出するというもの。アセトンはケトン体の一種で、体内で脂肪がエネルギー源として使われたときにできる物質だ。
アセトンは、甘酸っぱいフルーツのような臭いと称されることが多い。糖尿病でインスリンの分泌が低下し、血糖コントロールが良好でないと、アセトンが発生しやすくなる。アセトンは揮発性なので、糖尿病で体内のアセトンが多いと呼気中に混ざる。
インスリン作用が不足し、体がブドウ糖を利用できない状態では、脂肪やタンパク質がエネルギー源として使われ、ケトン体が発生する。体内にケトン体が蓄積すると「ケトーシス」という状態になる。
ケトーシスが進行し血液が酸性化すると「ケトアシドーシス」に進展し、処置が遅れると生命に関わることもある。
インスリン療法が必要な人が注射をできなかったり、シックデイ(糖尿病以外の病気にかかったとき)に、ケトアシドーシスは起こりやすくなる。
息を検査し1型糖尿病を早期発見
「今回の研究で、呼気に混ざるアセトンを測定することで、血中のケトン体の濃度を正確に測れることが分かりました。ケトアシドーシスを早期に予防するために効果的です」と、ガス ハンコック教授(化学理学)は言う。
研究チームは、オックスフォード小児病院に通院している7〜18歳の子供113人を対象に、開発した検査機器を用いて試験を行った。さらに、20人の1型糖尿病の子供を対象に試験を行った。その結果、呼気のアセトンは、血中のケトン濃度に相関することが確認された。
1型糖尿病の自覚症状は「口の渇き」「多飲」「多尿」「疲労」「体重減少」などだが、これらに加えて呼吸にアセトン臭が混ざることが挙げられる。
英国では、1型糖尿病の子供たちのうち4人に1人が、ケトアシドーシスを発症するまで、1型糖尿病と診断されなかったという調査結果がある。
国際若年性糖尿病研究財団(JDRF)のカレン アディントン氏は「1型糖尿病の発見が遅れる子供が少なくありません。適切な治療を早期に開始しなければ、生命に関わります。血液検査を行わなくとも、簡単な呼気テストでケトアシドーシスを発見できれば、1型糖尿病の早期発見につながります」と述べている。
[ Terahata ]