「酒は百薬の長」という言葉があるように、適量のアルコールには血行を促進し、善玉コレステロールを増加させ、リラックス効果をもたらし、コミュニケーションを円滑にする効果がある。しかし、アルコールの良い面が出るのは、適量を守っているときに限られる。飲み過ぎると、確実に悪影響があらわれるのでご注意を。
飲酒後に顔面が紅潮する人はご注意 飲み過ぎで高血圧に
飲酒後に「ホットフラッシュ」(顔面紅潮)が起こりやすい人は、アルコールによる高血圧リスクが高いことが、韓国の忠南大学の研究で明らかになった。
お酒を飲むと顔面紅潮が起こる人は、アルコール感受性が高いか、アルコール不耐性をもっている可能性が高い。アルコールの代謝物質であるアセトアルデヒドを、遺伝的に分解できないと、顔面が紅潮しやすい。そうした体質の人は日本を含む東アジアに多いという。
「アルコールを飲み過ぎると、血圧が上昇しなすくなります。飲み過ぎが数週間から数ヵ月続くと、その時期に比例して血圧も上昇しやすいことが、大規模な調査で明らかになっています。アルコールをやめれば血圧も低下しやすくなります。飲み過ぎている人は注意してください」と、研究者はアドバイスしている。
研究チームは、1,763人の男性を対象に飲酒と血圧の関連を調査した。うち527人は顔面紅潮する体質で、1週間当たり4杯以上飲酒した場合に高血圧リスクが上昇することが判明した。一方、顔面紅潮のない人は1週間当たり8杯以上飲酒するとリスクは増加した。
「もしあなたが顔面紅潮するのであれば、顔面紅潮しない人よりも少ない量の飲酒で、高血圧のリスクは上昇します。高血圧の発症を予防するためには、飲酒量を制限した方が良いのです」と、研究者はアドバイスしている。
アルコールの飲み過ぎで脳卒中などのリスクが上昇
お酒の飲み方によって健康への影響は違ってくることが、日本人を対象とした大規模な研究でも明らかになっている。この調査には、40~69歳の男性約4万2,000人が参加した。
お酒をのむ頻度を「週1~2回」、「週3~4回」、「週5~7回」の3つの飲酒パターンで比較したところ、「週1~2回」の人に比べ、「週5~7回」の人では、脳卒中や心筋梗塞などの死亡リスクが1.8倍に上昇することが明らかになった。週に5日以上飲んでいる人は、日本酒換算で13合~19.5合を飲んでいたという。
「1日に平均して日本酒換算で2合以上飲んでいると、多量飲酒といえます。そうした人は死亡のリスクが高くなることが示されました。休肝日をもうけつつ、お酒は1日平均で1合から2合程度にする方が良いでしょう。休肝日は、総飲酒量を減らすという観点からも重要です」と、研究者は述べている。
ビールを週に5杯以上飲むと精子が劣化
アルコールを飲み過ぎている男性では、精液の質が低下し、精子が少なくなるという、男性には気になる調査結果も発表された。
南デンマーク大学の研究チームは、18~28歳の男性1,221人を対象に、日頃の飲酒習慣を聞き、血液サンプルと精子サンプルを採取する調査を行った。研究に参加した男性の64%が、週に平均して350mLのビールを11杯飲んでいた。
その結果、ビールを「週に1~5杯」を飲んでいた男性に比べ、「週に40杯以上」を飲んでいた男性では、精子の濃度が33%低下していることが判明。
週に5杯を超えると精液の質は低下しはじめ、その影響は「週に25杯」を超えると顕著で、精子の数が少なかったり、形やサイズに異変がみられる頻度が高まったという。
精子の質の低下すると、将来に子孫を残せなくなるおそれがある。「今回の調査は比較的若い世代を対象としたものですが、中高年でも同様の影響がみられると、今後の研究で確かめる必要があります」と、研究者は述べている。
「お酒を飲むときは自分が何杯飲んだかをしっかり認識しておき、飲み過ぎないようにするべきです」と付け加えている。
アルコールの「Jカーブ現象」
アルコールは適量を飲んでいれば、気持ちをリラックスさせたり会話を増やしたりする効果がある。それに加え、心臓病や脳卒中を予防する効果があることが、多くの研究で確かめられている。
「お酒を飲み過ぎたり、まったく飲まないよりも、適度に飲むことで、心臓病や脳卒中の発症が減る」という現象は、「J字型曲線(Jカーブ)」として知られる。アルコールを適度に飲むと、血液中の善玉コレステロールを増やし、高血圧、虚血性心疾患、脳卒中などを引き起こす動脈硬化を防ぐ効果が得られるからだと考えられている。
日本の厚生労働省が2000年に開始した国民健康づくり運動「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒量」を、純アルコールで1日平均20g程度としている。
アルコール20gは、ビール中瓶(500mL)1本、日本酒1合、チュウハイ(7%、350mL)缶1本、ワイン2杯などに相当する。この数値は、日本人や欧米人を対象にした大規模な疫学研究から、アルコール消費量と総死亡率の関係を検討し、それを根拠に割り出されたものだ。
Individuals who flush after drinking are at higher risk of alcohol-related hypertension(忠南大学 2013年11月19日)
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」
Habitual alcohol consumption associated with reduced semen quality and changes in reproductive hormones; a cross-sectional study among 1221 young Danish men(British Medical Journal 2014年10月2日)
[ Terahata ]