肉やチーズなどを好んで食べるという人は注意が必要だ。動物性食品を食べ過ぎてタンパク質をとり過ぎると、がんや糖尿病などの発症が増え、寿命が短くなる可能性がある。「肉類を食べ過ぎるのは、たばこを吸うのと同じくらい体に悪い」と、研究者は指摘している。
肉類やチーズを食べ過ぎると死亡率が上昇
チーズバーガーやハンバーグ、ステーキなど、米国人は高タンパク質の食品を大量に食べている。そうした食品を食べ過ぎている人では、死亡率が4倍に上昇することが明らかになった。ただし、65歳以上の高齢者が動物性食品を食べている場合は、むしろ死亡率は低下するという。
研究チームは、米国健康・栄養調査(NHANES III)に参加した6,381人の米国人を対象に調査した。参加者を50歳以上の中年と、65歳以上の高齢者に分け、平均18年間追跡して調査した。結果は学術誌「セル メタボリズム」に3月4日付けで発表された。
肉や乳製品などの動物性食品から、1日の総カロリー摂取量の20%以上を摂取していた50歳以上の人では、低タンパク質の食事をとっていた人に比べ、がんや2型糖尿病の発症が増え、死亡率は4倍に上昇した。
野菜や豆類などの植物性食品からタンパク質をとっていた人では、死亡率の上昇は抑えられていた。
一方で、65歳以上の高齢者では、逆に動物性タンパク質を多く摂取していた人の方が死亡率は低かった。全死因による死亡率は28%、がんのよる死亡は60%、それぞれ低下した。
「肉類やチーズ、牛乳などの動物性食品を大量に食べ、タンパク質を多くとると、がんや2型糖尿病の発症が増えます。今回の研究では、タンパク質の過剰摂取により、死亡率が74%上昇するという結果になりました」と、南カリフォルニア大学長寿研究所のワリテル ロンゴ教授(老年医学)は言う。
次は...肉を食べ過ぎるとインスリン様成長因子(IGF)が増える
米国の食事ガイドラインでは、タンパク質の摂取量の目安は決められていない。日本では、タンパク質を体重1kgあたり1.0~1.2gとることが勧められることが多い。これは、1日の摂取カロリーの12~15%に相当する。
タンパク質は、細胞や筋肉、皮膚、骨格などの材料になる必須の栄養素だ。タンパク質が不足すると、さまざまな障害が出てくるので、必要量をとることが求められるが、米国人の多くは必要量の2倍以上を摂取しているという。
肉を食べ過ぎるとインスリン様成長因子(IGF)が増える
タンパク質をとり過ぎるとなぜ体に悪いのか? 肉類を食べ過ぎると増えるホルモンが影響しているという。
「インスリン様成長因子」(IGF)は、インスリンとよく似た構造のホルモンだ。インスリンは、食事に反応して分泌され、糖や脂質などの調節をするが、これに対しIGFには、成長ホルモンや栄養状態の影響を受けながら増減し、細胞の増殖や分化などを促進する作用がある。
IGFは、がんの発症を促すと考えられている。肉類からタンパク質をとりすぎると、IGFが増えることが判明した。「中年期に低タンパクの食事をとることが、がんと全死因による死亡を防ぐのに役立ちます」と、ロンゴ教授は話す。
「食事の影響は、長期に及びます。100歳まで健康で元気に生きるために、どんな食品を食べれば良いのか、さまざまな研究が行われ探求されています。今回の研究は、タンパク質の過剰摂取が寿命を縮める原因になる可能性を示したものです」(ロンゴ教授)。
Meat and cheese may be as bad as smoking(南カリフォルニア大学 2014年3月4日)
[ Terahata ]