糖尿病患者の心理的・社会的側面に焦点をあてた世界的な調査研究「DAWN2」調査の結果が、国際糖尿病連合(IDF)世界糖尿病会議で発表さた。日本では医療従事者と患者のコミュニケーションが不足しており、患者が主体性をもって積極的に治療に関わるよう促されることは少ない現状が浮き彫りになった。
医療従事者と患者のコミュニケーションが不足
自身の糖尿病の治療計画について意見を求められた患者は13.6%
「DAWN2」調査は、糖尿病治療が患者にもらたす社会的・心理的負担を明らかにする目的で、日本を含む17ヵ国の1万5,000人以上の糖尿病患者や、その家族、糖尿病ケアに携わる医療従事者を対象に行われている国際調査。
糖尿病の治療では、患者自身による「セルフマネージメント」(自己管理)が求められる一方で、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、それに従い治療を受ける「アドヒアランス」も重要となる。
インターネットや交流サイトが世界的に普及し影響力を増している中で、「患者が中心となるケア」(person-centred care)を導き出し、糖尿病患者が主体的に治療に参加し、医療の質を高めていく手段を世界中の医療機関が模索している。
「DAWN2」調査では、積極的に治療に関与するよう促される患者が少ない現状が浮き彫りになった。治療計画を決定する際に、医療チームから意見を求められた患者は日本では13.6%(世界平均 29.2%)と低かった。さらに、診察時に分からないことがあれば質問をするよう医師や看護師などから促された患者も日本では21.4%(世界平均 33.6%)にとどまった。
「DAWN2」調査の主な結果は次の通り――
糖尿病患者
・多くの糖尿病患者は、糖尿病の教育プログラムや活動への参加は役に立つと考えており(日本 85.9%、世界平均 79.0%)、日本の患者は75.5%と参加の割合が高い。
・日本の患者は、友人または身近な人(日本 18.8%、世界平均 59.9%)、職場または学校の人(日本 7.3%、世界平均 24.8%)、他の地域社会(日本 5.1%、世界平均 28.9%)から支援を得られていないと感じている。
・日本の患者は、糖尿病管理を支援する教育、情報、サポートツールやサービスなどを利用していない割合が高い(日本 44.3%、世界平均 29.0%)。
・糖尿病がどのように生活に影響を与えているかについて、医療チームから尋ねられたことがあるという患者は、日本では少なかった(日本:11.2%、世界平均 16.9%)。
・糖尿病を発症したことには、新しい試みに挑戦できるというプラスの影響もあると回答した患者は少なくなかった(日本 15.9%、世界平均 27.2%)。
糖尿病患者の家族
・糖尿病の患者と生活することで良い影響もあると考える家族は少なくない(日本 21.8%、世界平均 34.5%)。
・糖尿病である家族をサポートすることは、中程度以上の負担であると感じている家族は多い(日本 56.9%、世界平均 33.7%)。
・家族の糖尿病ケアにより多く関わりたいと考える家族は多い(日本 46.7%、世界平均 38.7%)。半数近くは糖尿病に向き合う気持ちを助けていきたいと考えている(日本 45.8%、世界平均 45.6%)
医療従事者
・医療従事者の多くは(日本 71.0%、世界平均 84.3%)は、患者が診察の前に糖尿病に関する質問を準備しておいてくれることは、治療をするうえでの助けになると考えている。
・医療従事者の半数は、傾聴、励まし、自己管理を勧めるなどの実践的なサポートやコミュニケーションのサポートを提供など、person-centred careを提供したと感じていた(日本 44.9%、世界平均 61.9%)。
・日本では医療従事者の3分の1以上は、糖尿病が生活にどんな影響を与えているか尋ねたと回答した(日本 37.3%、世界平均 52.0%)。
調査の日本の主任研究者である奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井 均教授は、「日本では、患者の治療に対する考え方や心理的状況を把握するための、医療従事者と患者のコミュニケーションが不足しています。患者が治療方針へ積極的に関与することは糖尿病のアウトカムにもつながる重要な点です」と述べている。
ノボ ノルディスク ファーマ
[ Terahata ]