「第12回全国ヤングDMカンファレンス」が、10月19日〜20日にNOVAホール(茨城県つくば市)で開催された。インスリン治療を行っている糖尿病患者と医療従事者が約700人参加した。
ヤングDMカンファレンスは、日本糖尿病協会が主催し、カンファレンス実行委員が企画・運営する行事だ。第12回目にあたる今回は、つくば市にある川井クリニックの川井紘一理事長が代表世話人を務めた。小学生から70歳以上の高齢者まで幅広い年代の患者や医療スタッフが「1型糖尿病について知りたい、話し合いたい」と全国から集結した。
共通の経験をもつ者同士で優しい輪を形成
「カンファレンスは、1型糖尿病に関するさまざまな最新情報や講演者からのメッセージを受け取れる貴重な機会となります。内容の濃いさまざまな講演、多彩なテーマの分科会、貴重な交流の場となる懇親会などで、それぞれの療養生活にいかせる貴重な情報を得られます」と川井先生は話す。
実行委員長を務めた茨城県DMヤングの会(葵ヤングの会)代表の寺方孝守さんは、「最新の糖尿病治療の情報を収集し、自身の生活をめぐる意見交換などを行い、仲間作りをする場になりました。参加してくださった皆さんが、それぞれに小さなことでも持ち帰って頂き、QOL向上のきっかけになってくれたら成功と思います」と話す。
寺方さんら葵ヤングの会は開催に先立つ5月に「第1回勉強会」を開催したが、患者の交流が少ない茨城県での開催は、実行委員集めという点から課題が多かったという。「人数の少なさと経験のなさが、プレカンファレンスを行ったことで分かりました。県内の先生方に世話人として参加していただき、経験ある茨城県療養指導士会からの申し出もあり実行委員会に入ってもらい、いっしょに作り上げていき、大きな事故などなく終えることができました」と寺方さんは言う。
寺方さんは、「皆が支えあうことができれば、より患者にとって正しい知識の修正とお互いの能力が向上し、共通の経験をもつグローバルコミュニティ形成=優しい輪が広がります。今後、葵ヤングの会では、この経験と優しい輪を患者だけで話し合うのではなく、きちんと医療の専門家である医師とコメディカルの情報の修正をかけたディスカッションと勉強会を行うことで、茨城県内の若い患者のQOL向上に貢献したい」と力強く締めくくった。
今回のカンファレンスでは、参加者に茨城県糖尿病協会の加入を促したことで、会員数の向上もはかれたという。茨城県糖尿病協会に関する情報は、加入する医療機関の友の会や、会報誌「かいらく」を通じて広めていく予定だ。
良好な血糖コントロールを続けていれば、糖尿病でない人との違いはない
特別講演では、内潟安子先生は『1型糖尿病とうまく付き合う』と題し講演した。「きちんと血糖をコントロールすれば普通の人と変わらない生活が続けられるし、50年間、合併症を発症することなく治療を続けている患者さんもいます。社会で普通に暮らし、就職し、結婚をし、子どもを産んでいる1型糖尿病の人はたくさんいます。悲観的になり否定的に考えることなく、自分なりに1型糖尿病とうまく付きあう方法をみつけてほしい」と、会場に呼びかけた。
杉本正毅先生は「リアルな糖尿病を生きる君たちへ贈る言葉:EBMよりonly one,A1cよりonly one」と題し講演し、「糖尿病は、患者さん自身が管理していく病気であることを認識することが重要。医療スタッフの役割は、患者が自己決定できるように十分な情報提供を与えること」と強調した。
外来診療の場でもしばしば患者さんから「A1cはどこまで下げれば良いのか」と質問を受けることが多いが、逆に「あなたはどれくらいを目指したいですか?」と尋ねることが多いという。患者さんとの対話を通じて、これからの人生で治療が果たす役割を考える「ナラティヴ アプローチ」の大切さを訴え、会場から万雷の拍手が贈られた。
田中佳代先生が『1型糖尿病を持つ女性が不安なく妊娠を迎えるために』と題し講演した。「かつては糖尿病の女性の結婚や妊娠には高いハードルがありましたが、いまでは医学的な問題はほとんどありません。良好な血糖コントロールを続けていれば、糖尿病でない人と違いはありません。社会の適正な理解も必要です」と、メッセージを送った。
八幡和明先生は「災害時の糖尿病医療」と題し、新潟県中越地震や東北地方太平洋沖地震で得られた経験をもとに、災害時の糖尿病患者の備えについて講演した。「1型糖尿病の人はインスリンが絶対に必要で、その中断は生命にかかわる。インスリンがなくなる前に早急に医療機関と連絡をとる方法を知っておくことが重要。医療機関側では、1型糖尿病患者さんのリストを作り、何らかの方法で連絡をとる方法を考えておいた方が良い」とアドバイスした。
第12回全国ヤングDMカンファレンスinつくば
[ Terahata ]