インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

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トラブル対策 ポンプ体験談

明日の我が子に会うために

投稿者 かえるの親子 さん
主治医村田 敬 先生
独立行政法人国立病院機構京都医療センター糖尿病センター

2010年06月 更新

プロフィール

年 齢41歳
性 別女性
病 態1型糖尿病
糖尿病歴12年
ポンプ療法歴6年

 私は21歳の時に健診で血糖値の異常を指摘され、25歳の時に1型糖尿病と診断されてインスリン治療を始めました。その後、35歳で一人目の子供を出産し、40歳で二人目の子供を出産しました。

 妊娠中は食後2時間の血糖値が120未満となるような血糖コントロールを目指すため、食後3-4時間で低血糖になりやすいのですが、ポンプだと基礎注入率を下げて低血糖を予防することができるのが良いところです。妊娠中、血糖値をこのような狭い範囲でコントロールするためには、インスリンポンプにする必要があると思います。以前使っていたペン型注射器のインスリンでは、ここまできちんと血糖コントロールするのは難しいように思います。

 ポンプのデメリットは、気泡が入ったりすると高血糖になることです。実は、妊娠中にポンプを落としてしまい、破損する事故を経験しました。インスリンを入れておく容器が割れてしまって、インスリンが流れ出てしまったのです。病院に電話をかけて相談し、回路交換するように言われましたが、あまりにしんどくて、それもできない状態でした。そこで、ポンプトラブル時用に持っていたペン型注射器のインスリンを注射してから、病院に来ました。病院へ着いたときには、ペン型注射器で打ったインスリンが効いてきて、血糖値が下がり始めていましたが、大事を取ってしばらく入院していました。ペン型注射器を常備しておくことが、いかに重要か、痛感しました。

 ポンプはペンより楽で、育児中も外食時も便利なので、今後も使おうと思っています。1型糖尿病ですが、ふつうにお母さんをしています。

主治医より

村田 敬 先生 独立行政法人国立病院機構京都医療センター糖尿病センター

 かえるの親子さんは、妊娠中にインスリンポンプを使って2人の子供のお母さんとなった1型糖尿病の女性です。
 血糖値が良好にコントロールされていて、かつ、進行した糖尿病合併症がなければ、1型糖尿病の女性の妊娠・出産は十分に可能と考えられています。ただし母体の血糖値が高いと胎児に悪影響が及び、先天奇形・巨大児・新生児低血糖などの合併症リスクが高まります。このため、妊娠・出産を希望する1型糖尿病の女性は、妊娠前から良好な血糖コントロール(HbA1c 6.5%未満がひとつの目安として考えられています)を維持し、妊娠中はさらに厳しい血糖コントロールが必要と考えられています *1)

 妊娠前・妊娠中にインスリンポンプを使用するメリットはいろいろあります *2)。ただし、本当に良好な血糖コントロールを得るためには、患者さん本人がインスリンポンプの使い方をよく勉強して、その機能をフル活用する必要があります。カーボカウントによる食後高血糖の予防も重要です。

 一方、インスリンポンプ療法には、破損・故障・誤操作などの原因により、極端な高血糖を起こすリスクが伴います *3)。また、ポンプトラブルが生じた際にきちんと対処できるよう、必要な知識や物品の準備を怠らないことが大切です *4)
 インスリンポンプは、うまく使いこなせば、妊娠・出産を希望する1型糖尿病の女性の強い味方になってくれるはずです。

*1)妊娠中の血糖コントロール目標

妊娠中の血糖コントロールは、母体や児の合併症を予防するために厳格に行う。朝食前血糖値70〜100mg/dL、食後2時間血糖値120mg/dL未満、HbA1c 5.8%未満を目標とする。

(出典:日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド2008-2009)

*2)妊娠前・妊娠中にインスリンポンプを使用するメリット

・ きわめて厳格な血糖コントロールが要求される状況下で、インスリン投与量を0.1単位刻みで細かく調節できる(※ペン型注射器では1単位もしくは0.5単位刻みでしか調節できない)。
・ 低血糖予防のため一時的にインスリンの投与量を減らす「一時ベーサル」機能を使うことができる(※とくに食後血糖値が低めの時に重宝する)。
・ つわり、ホルモンバランス、妊娠週数など、様々な要因によるインスリン需要の変化に対応しやすい。

*3)ポンプトラブルの例

●警報が鳴るケース
・ 注入回路の閉塞
・ インスリンの残量低下
・ 電池の残量低下
・ ポンプのモーター故障

●警報が鳴らないケース
・ 注入回路の損傷やコネクターの接続不良によるインスリンの液漏れ
 (※インスリン製剤特有の消毒薬のような匂いで気づく場合もある)
・ 注入回路内に混入した気泡
・ 高温などの原因によるインスリン活性の喪失
・ 警報機能自体の故障
・ 電池の残量0、電池の脱落、電池の向きの入れ間違い

*4)ポンプトラブル時の基本的な対応

・ まず、自分の体調がどのくらい具合悪いかを把握する。
・ 血糖値を測定する。
・ 可能であれば、血中または尿中のケトン体をチェックする。
・ 嘔吐、著明な倦怠感、意識障害など、全身状態悪化のサインがあり、緊急性が高いと判断される場合は、早急に医療機関を受診する。
・ 高血糖がポンプトラブルによるものと考えられる場合は、注入回路の点検やアラーム履歴の確認などを通じて原因を特定し、その除去を試みる。
・ 高血糖の原因が特定できない場合は、インスリンを含めすべてを回路交換する。
・ 外出中や体調不良などの理由ですぐに回路交換することが難しい場合は、ペン型注射器で必要な量のインスリンを注入する(※緊急時用のペン型注射器を常時携帯するのは、インスリンポンプ療法の鉄則)。血糖値が高い場合は、まず超速効型インスリンで高血糖の修正を試みる。ポンプを長時間にわたって取り外さなければならない場合は、作用時間の長いインスリンを使用する。
・ 取扱説明書を読んでもポンプ本体・注入回路のトラブルを解除できない場合は、インスリンポンプ製造元のサポート電話で相談する。

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