投稿者 | 加藤 雅子 さん |
---|---|
主治医 | 加藤 研 先生 国立病院機構大阪医療センター糖尿病内科 1型糖尿病専門外来 |
2015年10月 公開
プロフィール
年 齢 | 58歳 |
---|---|
性 別 | 女性 |
病 態 | 1型糖尿病 |
糖尿病歴 | 16年 |
---|---|
ポンプ療法歴 | 5カ月 |
1型糖尿病を発症した当初、私は病気を受け入れられませんでした。決められたインスリン量に食事や生活を合わせなければならず、大変な思いの毎日でした。が、1年後、個人に合わせたインスリン治療の指導を受けられるようになると、私は劇的に変わったのです!
エアロビクス、ストリートジャズダンスを始め、2004年、2005年にはホノルルマラソンに挑戦し、完走しました。
私はインスリンが全く出ていないため、運動時の血糖コントロールが難しく、気をつけていても、時にはHbA1cが7.6%位に上がってしまうことがあり、悩んでいました。レベミル2回打ちで、激しい運動をした日の夜間や翌日の午前中は、血糖の動きがつかみにくく、低血糖を起こすことがありました。低血糖を起こさずHbA1c7%以下を維持したいと思い、インスリンポンプサロンに参加し、ポンプ療法に切り替えることにしました。
入院中の絶食試験の結果から、私に合ったベーサルプログラムをきめ細かく設定して頂いたことが、血糖コントロールの大きな助けとなりました。SAPのグルコース値の推移を見て、血糖値が下がりすぎてしまう前に血糖測定し補食を摂る必要があるかどうか考えることが可能なので、低血糖がほとんどなくなり、HbA1cは6.9%になりました。 病院での2週間、ルート交換やセンサ交換の際に生じた疑問は、すぐに加藤先生に聞けたこと、ポンプを落としてしまう失敗など様々な場面を経験したことで、ポンプとの新生活をあまり不安もなく始めることが出来ました。
週に4回のエアロビクスやダンスの時は、伸縮性のある布製のウエストポーチにポンプを入れています。運動する時間帯やボーラスの残存インスリン量など考慮し、血糖コントロールした結果を記録して、加藤先生に相談し、調整を重ね、コツがつかめてきました。
1型のことは、ダンスの先生やダンス仲間も知ってくれています。ポンプを着けて、初めて受けたレッスン中、仲間たちが、「大丈夫?」とアイコンタクトを送ってくれて、胸が熱くなりました。
ベストな体調で、大好きな仲間と、大好きなダンスをずっと続けていきたい。上手に血糖コントロールしていきたい。そのために、SAPは私にとってなくてはならないものです!
主治医より
加藤 研 先生 国立病院機構大阪医療センター糖尿病内科 1型糖尿病専門外来
加藤さんは、とても活発な方で、SAP導入前から強化インスリン療法を駆使し、エアロビクス、ストリートジャズダンス、フルマラソンなど精力的に運動を行われていました。
一般的に1型糖尿病の患者さんには、運動をすると低血糖が増加したり、その対処後のリバウンドや興奮による高血糖などから血糖値が不安定になる可能性が高いため、運動(療法)は、推奨されていません。
しかし、私は、「1型糖尿病でも何でもできる」という考えのもと加藤さんには、今回のSAP導入によりもっと安心して、楽に自分の行いたい運動を継続していただきたいと思いました。
ただし、自身のやりたいことをやろうと思うと責任もつきまといます。加藤さんからは、責任という部分を、「入院中にSAPを完全にマスターしてやろうという姿勢」から感じる事ができたような気がします。
入院中に各食2回ずつの絶食試験を行い、インスリンのベーサルを調整、また各食のカーボカウントでカーボ・インスリン比やインスリン効果値の設定をきめ細やかに行いました。この際も加藤さんの積極的な姿勢が、入院時に係わった医師・栄養士・看護師などの指導に対するモチベーションを高めてくれたことは、まちがいないと振り返ります。
一般的な患者さんからの疑問の一つに、入院中と退院後の生活は、違うため入院でのインスリンのベーサル調整は、意味がないのでは?という質問をお受けすることがあります。しかし私の経験上、ベーサルのリズムは退院後、極端に昼夜逆転の生活などにならない限り、大抵大きな変更はせずに血糖コントロ−ルが可能です。加藤さんも入院中にきっちりSAPの設定ができたことが、退院後にダンスを今まで以上に安心して取り組めるようになったことにつながったと思います。
実は、主治医である私も1型糖尿病歴30年の患者であり、SAP療法を行っています。そのような事情から、当院には、SAP療法導入目的に多くの1型糖尿病患者さんが紹介されるようになりました。どの患者さんもそれぞれ困っていることや血糖コントロールの難しさは、違います。もちろん加藤さんのように、前向きにがんばれている方ばかりではありません。
しかし、SAP導入により全ての糖尿病患者さんが、より安心して、楽に糖尿病と付き合い、患者さん自身がやりたいことを実現できるように手助けして行こうと考えています。
導入医師データ
■CSII導入患者数(年間)
40名
■CSII療法導入歴
8年
■どのような患者さんに導入を勧めますか? 選択のポイントを教えてください
CSII:
・血糖コントロールが不安定な方
・今と同じか、それ以上の良い血糖コントロールを今より楽をして手に入れたい方
SAP:
・さらに質の良い血糖コントロールを貪欲に手に入れたい方
・機械に振り回されず、モニター値に一喜一憂せず、機械とうまくつきあえる(利用できる)方
・カーボカウントをある程度実践でき、ボーラスウイザード機能を使いこなせる方
■CSIIやSAPでメリットに感じていること、また、CSII導入手順等を教えてください
CSIIのメリット:
私自身も1型糖尿病患者であり、医師でもあります。1型糖尿病歴は、30年目を迎えております。大学生時代や研修医時代は、HbA1c 9〜10%の時代もありました。
2008年からインスリンポンプ療法に変更し、血糖コントロールは6%台に安定しました。
最近SAPに変更後は、HbA1cはもう少し低下していますが、それよりなにより安定したコントロ−ル(血糖値の振れ幅がすくなくなり高血糖、低血糖が少なくなりました)ができるようになりました。
あくまでも機械なので過剰に期待せず、モニター値に一喜一憂せず、SAPとうまく付き合っていくことを心がけています。
■導入に際しての課題、悩みなど:
SAPに関しては、やはり医療費が高いことが、みなさんの悩みだと思います。また、インスリンポンプやSAPの良さを引き出すには、基礎インスリンの設定がきっちりとされており、かつボーラスウイザード設定(カーボカウント設定)ができていることが必要です。それができていればとても楽に血糖コントロールができます。
その設定を決定するために入院での絶食試験や入院食でのカーボカウント実践指導に取り組んでいますが、なかなか入院していただける人が少ないのが悩みです。今後SAPを外来導入していくことも考えるにあたり、これらの設定をどのように的確に行うかが課題です。
■ホームページURL
>国立病院機構大阪医療センター ▶