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2026年10月05日

認知症リスクが低い2型糖尿病治療薬は?

 2型糖尿病の患者さんは、糖尿病のない人に比べて認知症や軽度認知障害を発症するリスクが高いことが知られている。そのため、血糖管理に用いられる各種糖尿病治療薬が、認知機能の保持にどのような影響を及ぼすかは、非常に関心の高いテーマである。米国の研究グループが、大規模な電子診療記録データベースを用いた後ろ向きコホート研究で、糖尿病治療薬と認知機能障害の発症との関連を詳しく解析。薬剤の種類による影響の違いを明らかにし、結果を『PLoS One』に報告した。将来的な認知機能の低下を防ぐ薬剤選択に関する重要な知見となりそうだ。

神経保護や抗炎症が確認されるも、結果は一貫せず

 2型糖尿病は、インスリンの作用不足により慢性的な高血糖を来す疾患である。治療の基本は適切な血糖管理であり、メトホルミンやスルホニル尿素薬(SU薬)、インスリン製剤のほか、近年はDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など多様な薬剤が登場している。

 観察研究によると、一部の糖尿病治療薬では血糖降下に加え、神経保護や抗炎症といった作用が確認されている。しかし、研究によって相反する結果が報告されるなど、一貫した見解は得られていない。しかも、こうした研究の大半は、サンプルサイズが小さい、追跡期間が短い、単一の薬剤クラスに焦点を当てている―などの条件下で行われており、長期的な認知機能への影響について、複数の糖尿病治療薬を比較した大規模研究は、依然として少ない。

 そこで研究グループは、大規模な電子診療記録データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施し、複数の2型糖尿病治療薬について、認知機能障害〔軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症〕の新規発症との関連を検討した。

主要評価項目はMCI、アルツハイマー病、血管性認知症の新規発症

 対象は、認知機能障害の既往がない40~69歳の2型糖尿病患者。処方された糖尿病治療薬に基づき、以下の5群に分類した。

①DPP-4阻害薬+メトホルミン群(43,383人)
②GLP-1受容体作動薬+メトホルミン群(102,399人)
③SGLT2阻害薬+メトホルミン群(58,327人)
④インスリン単剤群(333,153人)
⑤メトホルミン単剤群(対照)

 背景因子を揃えるため、1:1の傾向スコアマッチングを行い、各群と同数のメトホルミン単剤群を対照群として比較した。主要評価項目は、追跡期間中に診断されたMCI、アルツハイマー病、血管性認知症の新規発症とした。

 多変量解析によりハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出。年齢、性、人種、BMI、HbA1c値、罹病期間、高血圧や脂質異常症などの併存疾患、心脳血管障害の病歴、併用薬剤など、結果に影響を与える多様な交絡因子の影響を補正した。

GLP-1受容体作動薬併用群でアルツハイマー病・血管性認知症リスクが54%低下

 解析の結果、2型糖尿病患者における認知機能障害の新規発症リスクは、使用した治療薬の種類によって明確な差を示すことが明らかとなった。

■ GLP-1受容体作動薬+メトホルミン群

メトホルミン単剤群に比べ、血管性認知症(124人 vs 243人、HR 0.46、95%CI 0.37~0.57、P<0.001)、アルツハイマー病(34人 vs 66人、HR 0.46、95%CI 0.31~0.70、P<0.001)の発症リスクがそれぞれ54%顕著に低く、MCIのリスクも低下した(216人 vs 242人、HR 0.79、95%CI 0.66~0.95、P=0.013)。

■ SGLT2阻害薬+メトホルミン群

メトホルミン単剤群に比べ、血管性認知症の発症リスクが顕著に低かった(114 vs 157、HR 0.68、95%CI 0.54~0.87、P=0.002)。一方、MCIやアルツハイマー病への顕著な影響は見られなかった。

■ インスリン単剤群

メトホルミン単剤群に比べ、血管性認知症(2,630 vs 966、HR 3.27、95%CI 3.03~3.52、P<0.001)、MCI(1,088 vs 781、HR 1.71、95%CI 1.56~1.87、P<0.001)、アルツハイマー病(327 vs 254、HR 1.56、95%CI 1.32~1.84、P<0.001)の発症リスクがいずれも高かった。

 なお、5年以上の長期追跡期間においても結果は一貫していた。

インスリン単剤群のリスク上昇には慎重な解釈が必要

 以上から、研究グループは「GLP-1受容体作動薬+メトホルミンの併用は、MCI、アルツハイマー病、血管性認知症の全てにおいてリスク低下と関連しており、GLP-1受容体作動薬が神経保護作用をもたらしうるというこれまでのエビデンスを裏付ける結果となった」とまとめた。

 一方、インスリン単剤群で示された認知機能障害のリスク上昇については、「結果を慎重に解釈する必要がある」と指摘。その理由として、罹病期間の長い患者、血糖管理が不良な患者、併存疾患の負担が大きく合併症リスクが高い患者―にインスリンが処方されやすい傾向があることを挙げ、「適応による残存交絡(治療選択に伴う背景の偏り)を反映している可能性が高いため」と説明している。

 その上で、「今回は観察研究であり、いずれの結果についても因果関係を確定するものではない。今後は、ランダム化比較試験による更なる検証が期待される」と展望している。

■参考

[ 糖尿病ネットワーク編集部 ]
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