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2020年08月12日
糖尿病の人は「アルコール」に注意 連休に飲み過ぎないための9つの対策
お酒は適量を飲むと、ストレスを解消できる効果を期待できるが、量が増えると確実に心と体の健康を損なう原因になる。糖尿病のある人は、アルコールの飲み過ぎによるダメージを受けやすいという調査結果も発表された。
休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)などは、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。
休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)などは、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。
つい飲み過ぎてしまうのがお酒
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次いで高カロリーだ。カロリーの他に栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4〜5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
関連情報
適量であれば血糖コントロールが良好という報告も
アルコールが代謝されると、アセトアルデヒドなどの毒性のある中間代謝物が生成される。アルコールは他の栄養素の代謝にも影響を及ぼすので、アルコールの摂取量の適正化は大切になる。
アルコール摂取量と糖尿病などのリスクはUカーブの関係にあるとされる。血糖コントロールは、アルコールの摂取量が適量であると良好で、飲み過ぎると悪化するという現象が報告されている。適度の飲酒を続けていた1型糖尿病の人では、合併症のリスクも低下するという報告もある。
適度なアルコール摂取により、インスリン感受性を亢進し、血糖を下げるインスリンが効きやすくなると考えられている。アルコール摂取と糖尿病の発症リスクを調べた研究でも、純アルコール量で約20〜25g程度の飲酒によりリスクが低下すると報告されている。
しかし、この効果は大量のアルコール摂取によって打ち消される。とくに日本人では、アルコールを少し飲み過ぎただけで、糖尿病リスクは上昇するとみられている。飲み過ぎにはくれぐれも注意したい。
アルコールを飲むときの注意点
「アルコールにはリラックス効果があり、ストレスの軽減を期待できますが、飲み過ぎには注意が必要です。安全な飲酒の方法を知っておくことが必要です」と、米ジョスリン糖尿病センターのジェニファー ルブラン氏は言う。
米国糖尿病学会(ADA)や英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、糖尿病とともに生きる人がアルコールを飲むときに、下記の注意が必要だとアドバイスしている。
- アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により血糖値に影響を与える。アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともなう。
- 摂取されたアルコールは、消化を受けないで胃や小腸で速やかに吸収される。良質のタンパク質が多く含まれる魚や肉、大豆製品、ミネラルや食物繊維を多く含む野菜、とくに緑黄色野菜、海藻、キノコなどを食べることが勧められる。
- 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、アルコールの代謝にともなう代謝経路の変化により、糖新生(肝臓での糖の産生)が抑制されるからだ。
- とくにインスリンや、SU薬などの経口血糖降下剤で薬物治療をしている人は、アルコールの急性効果として低血糖を起こしやすくなる。食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
- お酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
- 2型糖尿病の治療に広く用いられているビグアナイド薬(メトホルミン)は、アルコールを過度に飲むと、副作用である乳酸アシドーシスが起こりやすくなる。とくに過度の飲酒を続けている人では、肝臓での乳酸の代謝能が低下しているおそれがあるので注意が必要だ。
飲み過ぎにはくれぐれも注意したい。脱水を防ぐために、十分な水分補給も忘れずに。吐気・嘔吐・腹痛などの胃腸症状や過呼吸などがある場合は、すみやかに医師に相談する。 - SGLT2阻害薬は、血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるタイプの治療薬。過度のアルコールを摂取したり、感染症にかかったり、脱水の状態にあると、ケトアシドーシスが起こりやすくなる。このタイプの薬を飲んでいるときにも注意が必要だ。
インスリン作用が不足し、体がブドウ糖を利用できない状態では、代わりに脂肪やタンパク質がエネルギー源として使われが、そのときケトン体という物質が発生する。ケトアシドーシスは体内にケトン体が過剰に蓄積した、血液が酸性に傾いた状態を指す。
ケトアシドーシスでは、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感などの症状が急激に起こる。悪化すると、呼吸困難、速くて深い呼吸、悪心、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こるおそれがある。ケトアシドーシスが疑われるときは、すみやかに医師に相談することが重要。 - お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
- 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
純アルコール量で約20〜25gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)が目安となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02〜0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。0.05〜0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
一般的に、純アルコール量で約20〜25gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」までにとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3〜4時間体内にとどまる。それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6〜7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いにもなりやすいので注意が必要だ
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。アルコールが体内から消失するまでにおよそ6〜7時間がかかる。就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。眠りや不眠症の悩みを抱えている人は、アルコールを飲まずに、医師に相談しよう。
アルコールを飲み過ぎるとストレス解消の効果はなくなる
適量の飲酒は気分を良くし、リラックス効果もありストレス解消になるが、飲み過ぎは心にも体にも好ましくない影響を及ぼす。また、強いストレスを感じているときにお酒で解消しようとすると逆効果になることもある。
糖尿病のある人では、糖尿病のない人に比べ、飲酒による事故や死亡のリスクが高いことが、フィンランドのヘルシンキ大学病院の研究で明らかになった。
43万4,629人を対象に平均7.1年間追跡した調査で、糖尿病のある人の飲酒に関連する死亡リスクは、糖尿病のない人に比べ、飲み薬を服用している男性で1.71倍に、女性で2.10倍に上昇することが示された。
糖尿病の人を支える心理的・社会的なサポートが必要
「糖尿病の自己管理は心に大きな負担をもたらします。毎日インスリンを注射し、血糖値をチェックし、食事や運動も管理し、血糖コントロールを良好に維持するのは大変なことです」と、ヘルシンキ大学病院のレオ ニスカネン教授は言う。
糖尿病とともに生きる人々は、とくに血糖コントロールがうまくいかないときに、大きなストレスを抱え不安に陥りやすい。糖尿病の治療は大きな精神的な負担を強いるので、アルコールを飲むことでストレスを解消しようとする人がいても無理のないことだ。
アルコールがストレスや気分が落ち込んでいるときの対処として役立つと思っている人は多い。確かにアルコールはリラックスした気持ちにさせてくれるかもしれない。
「しかし、アルコールは心をコントロールするための方法としては健康的ではありません。もしもあなたがストレスや不安を感じているのなら、体を動かしてアクティブになったり、趣味や話の合う友達をみつけたり、読書や音楽、入浴などでリラックスする方法が役立ちます」と、ニスカネン教授は述べている。
「あなたの気持ちについて、友人や家族など、身近な人と話してみたり、かかりつけの医師や医療スタッフからアドバイスとサポートをもらうのも効果的です」。
「糖尿病とともに生きる人々を支える心理的・社会的なサポートが必要です。医師や医療スタッフは、糖尿病患者のストレスを効果的に軽減しサポートするために対策する必要があります」と指摘している。
Drinking With Diabetes(米国糖尿病学会 2019年3月)Alcohol and diabetes(英国糖尿病学会)
The relationship between alcohol consumption and glycemic control among patients with diabetes: the Kaiser Permanente Northern California Diabetes Registry(Journal of General Internal Medicine 2008年3月)
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis(Diabetes Care 2009年11月)
VicHealth National Community Attitudes Survey: awareness and behaviours of low carb beer drinkers(VicHealth 2010年12月)
Diabetic patients are more at risk of death from alcohol, accidents and suicide(欧州内分泌学会 2018年10月12日)
Excess mortality in Finnish diabetic subjects due to alcohol, accidents and suicide: a nationwide study(European Journal of Endocrinology 2018年10月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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