糖尿病セミナー

13. 結婚から、妊娠・出産

2014年11月 改訂

II. 妊娠糖尿病

妊娠によって生じる軽い糖代謝異常

【妊娠糖尿病の診断基準】
75gブドウ糖負荷試験で
右のうち1項目でも満た
した場合(糖尿病と診断
されるものは除外)
●空腹時値92mg/dL以上
●1時間値180mg/dL以上
●2時間値153mg/dL以上
 妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発症または発見された、糖尿病には至らない高血糖のことです。
 さきほども書きましたが、妊娠によってインスリン抵抗性が現れるので、ふだんよりもインスリンの必要量が増えます。健康な人であればそれとともに膵臓から必要なだけのインスリンが分泌されるので血糖値は変わりません。しかし、もともと体質的に糖尿病になりやすい人は、インスリン分泌を十分に増やすことができず、血糖値が高くなるのです。
 なお、妊娠前に診断されていたり、診断されていなくても見逃されていた糖尿病や、糖尿病の診断基準を満たす高血糖の場合は、妊娠糖尿病とは言わず、糖尿病合併妊娠です。

妊娠前に検査を受けておくと安心です

 妊娠糖尿病は、詳しい検査をすれば妊婦さんの1割以上に見つかり、決して稀なことではありません。とくに、血縁者に2型糖尿病の患者さんがいる人、肥満・太り気味の人、過去に巨大児分娩や原因不明の早産・流産の経験がある人などは、注意が必要です。該当する方は、妊娠に気付いたらできるだけ早めに詳しい検査を受けましょう。
 また、なるべくなら妊娠する前に検査を受けて、異常がないか確認しておいたほうがよいでしょう。ひょっとしたら、隠れている糖尿病が妊娠前に見つかり、計画妊娠が必要になるかもしれませんが、それによってより安全な出産を迎えられます。

妊娠中と出産後の注意点

 妊娠糖尿病は糖尿病合併妊娠よりも高血糖の程度は軽いものの、妊娠中に厳格な血糖コントロールが必要なことは同じです。妊娠中の血糖コントロールがよくないと、巨大児出産や難産、胎児仮死などの心配が出てきます。ただ、妊娠初期の血糖値は正常のことが多いので、胎児奇形についてはあまり心配ありません。また血糖の正常化も糖尿病合併妊娠よりは比較的容易です。
 多くの場合、出産後に血糖値は自然に正常に戻ります。ただし、将来、糖尿病を発症しやすいことがわかっているので、引き続き肥満予防の食事や運動を心がけ、定期検診を忘れずに受けてください。

III. さあ出産です!

自然分娩も可能です

 今は糖尿病だからといって出産が帝王切開になるとは限りません。合併症がなく、妊娠中に血糖を良好にコントロールしていれば、自然分娩も十分可能です。とは言っても、糖尿病の妊婦さんは、やはりリスクのある出産となります。糖尿病の専門医はもちろん、出産後の対応が適切にできる新生児科医など、スタッフ、設備が充実した病院で出産してください。
 進行した合併症があったり、お母さんや赤ちゃんに何らかの危険がある場合は、出産前からの予定帝王切開となります。事前に主治医の説明をよく聞いておきましょう。

産後のケア

 糖尿病の人も基本的に母乳で赤ちゃんを育てることができます。その場合、妊娠前に飲み薬を使っていた人も、授乳期間は妊娠中と同様、インスリン療法を続けます。飲み薬だと母乳に薬の成分の一部が出て赤ちゃんの体内に入り、赤ちゃんの低血糖を引き起こすことがあるからです。
 また、妊娠によって増えた体重を元に戻し、太りすぎを予防するためにも、授乳中の摂取カロリーに気をつけてください。基本カロリーは〔標準体重1kgあたり30kcal+付加エネルギー量600kcal〕を目安にします。

おわりに

     コントロールが悪いと、糖尿病の妊婦さんに、トラブルが多いことは事実ですが、今では妊娠中の糖尿病治療が充実して、糖尿病であっても、妊娠・出産が十分にできるようになりました。
     しかし、安産のために一番重要なことは、日常の血糖コントロールです。日頃から自己管理を十分に行って、健やかな赤ちゃん誕生にトライしてください。

1 2 3

コンテンツのトップへ戻る ▶

糖尿病3分間ラーニング 関連動画

糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、 テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画です。


このページの
TOPへ ▲