2015年フィリピンの糖尿病事情について(1)(IFLレポート)
オーストラリアで途上国の糖尿病患者さんを支援するインスリン・フォー・ライフ(IFL)のスタッフが、2015年5月にフィリピン各地の医療施設を訪問しました。スタッフのニール・ドナラン氏より、フィリピンの糖尿病事情についてレポートが届きましたので、ご紹介いたします。
国際糖尿病支援基金はこの活動に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)を支援しています。
Insulin for Life(IFL)オーストラリア
Neil Donelan
ニール・ドナラン氏
『私が衣服を必要としていた時、あなたは衣服を与えてくれました。私が病気の時、あなたは看病してくれました。私が獄中にいるとき、私に面会に来てくれました。 我々はあなたが病気であったり、獄中にいると分かったとき、あなたのもとを訪ねたでしょうか?
主は、答えるでしょう。「私は真実を述べます。あなたが私の兄弟たちや私にしてくれた、たとえ、どんな些細なことであっても、すべてのことを」』
聖書「ジェームズ王版 マタイ伝25:36から40」より引用
世界中で糖尿病の患者さんの命を救っているインスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動が与える影響は非常に大きなもので、神様から与えられた恩恵に値します。
フィリピンへ出発
IFLオーストラリア&グローバルのメンバーが、2015年5月13日から31日にかけて、フィリピンの貧困状態にある1型糖尿病の患者の命を救うため、同国へ旅立ちました。
IFLのチームは、私ニール・ドナラン、IFL運営幹部、今回のキャンプでIFL特別運営部隊となる協力者のほか、ジュビー・ホラスカさん(看護師)、メリー・ハリスさん(看護師)、疋田あゆみさん(看護師・1型糖尿病患者)、ジャクリーン・フランシスさん(ボランティア)から編成され、皆、オーストラリア在住です。
マニラ
2015年2月、オーストラリア、バララト市在住のフィリピン人である友人を通じ、マニラ市カラムバ刑務所の管理、及び刑罰学行政官であるジェハン・バラダットさんから、IFLに支援要請がありました。
要請の内容は、刑務所を管轄する大臣・長官及び刑務所職員たちと面会し、IFLで1型糖超尿病を患っている服役者を支援できるか確認してほしいということでした。
服役者たちは、糖尿病をコントロールするために必要なインスリンや注射器を入手する手段も、家族の支援もないのです。我々のチームは、2015年5月15日に刑務所を訪ねました。
我々のチームは、(刑事)司法監督官であるフィリピナス・T・フルジェンシオさんと会い、25名の医療分野を含めた刑務所の職員たちに、IFLの活動内容と、IFLが服役者を支援することができる可能性について、パワーポイントを使ったプレゼンテーションを行いました。
刑務所には現在900名が服役しており、うち200名が結核を患っています。結核は感染力が強く、回復までに6か月は隔離が必要なため、刑務所内の医療施設に隔離されています。結核患者たちは、政府から回復に必要な幾らかの経済的支援を受けることができますが、糖尿病患者に対する政府からの支援は、全くありません。
多くの服役者が糖尿病を患っているものと思われますが、インスリンの支援を受けている人は、たった4名で、しかも、公的支援ではなく、服役者の家族からの支援です。
インスリン支援を受けている服役者は皆女性で、ランタスを使用しています。この刑務所では、男性服役者、女性服役者は共にいますが、刑務所内では別々に収容されています。
フルゲンシオ監督官は、糖尿病検査を行う予算が政府から承認されていない下りてこないため、糖尿病を患っている服役者の正確な数は分からないそうですが、私は、1型糖尿運用病患者数が把握できなければ、IFLとしては、どんな支援物資も送ることはできませんと答えました。
刑務所側とIFL側は、1型糖尿病患者数を把握するため、まずは、糖尿病検査プログラムを実施しなければならないということで合意しました。私は、マニラを拠点とするIDF(国際糖尿病連合)と連絡を取り、糖尿病検査を実施するために、専門知識のある医師・看護師・エデュケーターの派遣がを送ってもらうことが可能であるか確認するように提案しました。
実施に向けて、次なるステップを重ねて行くことになると思いますしでしょう。連絡があれば取れれば、フルゲンシオ監督官に糖尿病検査の実施手配が可能かを報告することになると思いますでしょう。我々は、一式そろった糖尿病治療器具3セットを刑務所に置いていくことにしました。
マニラ地区には49の刑務所があり、フィリピン全人口に対し、推計で72,000名が収容されています。刑務所内は、過密状態であり、結核が流行しています。
バコロド市
マニラを発ったのち、ネグロス諸島の島の一つで西の端にあるバコロド市に行きました。
バコロドはフィリピンのサトウキビ栽培をしている地区の中心で、人口は約150万人です。
我々は、バコロド市内のセブンスデイ・アドベンティスト病院に3日間滞在しました。
院内には、手ごろな価格の宿泊施設があります。
5月16日、10時から12時半まで、SDA病院(宿泊先)から数キロ離れたネグロス・オクシデンタル・パブリック病院にて血糖検査と講義を実施しました。血糖検査は、糖尿病エデュケーターであるアントン・モンフォート行政官により実施され、講義は、ルズ・マップニ医師とIFLを代表して私が行いました。
45名が参加し、検査を受けました。今まで、糖尿病検査を受けたことのない、一人の若い男性が、検査で高値を示したため、数時間後再検査したところ、やはり高値を示しました。そのため、実際に糖尿病を発病しているか否かを確認するための総合的な検査をすべく、医師を紹介しました。
我々は、マップニ医師に糖尿病治療に必要な薬剤・機器類を託し、同病院を後にしました。マップニ医師は、IFLプログラムが実行されているかどうか、また同病院がIFLと共に取り組んでいけるか否かについて、後日連絡をくれことになっています。
そののち、SDA病院(宿泊先)にて病院の牧師でありチャプレンである、ペドロ・D・ロンドンさんとヘクター・ガヤス院長と共にミーティングを行いました。彼らは、貧困状態にある糖尿病患者を支援しているIFLプログラムに関心を寄せ、ネグロス・オクシデンタル・パブリック病院と協力し、共に取り組んでいくことを望んでいます。
彼らは来年、我々が再び同地を訪れることを望んでいます。そうすることで、総合的な糖尿病検査を実施することができる可能性があるからです。
ヘクター・ガヤス院長は1,200万人以上の糖尿病患者がフィリピンにいると言われていると述べていました。フィリピンにおけるコミュニディや政府の医療予算に対する支出全体は測り知れないのです。
2015年フィリピンの糖尿病事情について(2)へ続く
●関連サイト
2014年フィリピンの糖尿病キャンプ報告
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
国際糖尿病支援基金