糖尿病セミナー
19. 糖尿病の検査
2014年4月 改訂
監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
編集
川島病院名誉院長 島 健二先生
糖尿病は検査の病気です
「糖尿病は検査の病気」といわれます。数ある病気の中で、なぜとくに糖尿病だけがそういわれるのでしょうか。糖尿病は自覚症状がないことが多いので、糖尿病といわれても治療しないでいる人が少なくありません。治療しないでいると、体の中でじわりと進行し、失明や下肢の切断にもいたりかねない多くの合併症を招くのが糖尿病です。
このため、病気がどの程度進んでいるのかを定期的にチェック=検査していく必要があるのです。チェックを続け血糖コントロールの善し悪しを確認し、合併症の症状を早めに見付けられるようにしておけば、糖尿病はなんら怖い病気ではありません。
つまり、糖尿病でも検査で病状をチェックしコントロールし続ければ、健康な人と同じように過ごすことができるのです。このことから「糖尿病は検査の病気」といわれるのです。ですから、食事療法や運動療法と同じように、検査のことも医師まかせにせず、検査の意味と必要性をよく理解しておきましょう。
どんな検査をするのでしょう
糖尿病は、膵臓で分泌されるインスリンの量が足りなかったり作用が不足して、食べた物の糖分がよく利用されず、血液中にあふれ出る病気です。ですから、血液中の糖分(ブドウ糖)=血糖の値が基準値より高くなるのが第一の特徴です。検査では、この血糖値が基準値よりどのくらい高いかをみることが基本となります。糖尿病と診断されるまでの検査
図1 空腹時に採血・採尿した検査結果の見方
血糖値
(mg/dL)
(mg/dL)
結果の判定
126以上
糖尿病域...糖尿病が強く疑われます。OGTT(ブドウ糖負荷試験。図2)を受けてください
110以上〜
126未満
126未満
境界域...糖尿病の疑いがあります。できるだけ OGTT を受けてください
100以上〜
110未満
110未満
正常域(正常高値)...血糖値がやや高いので、高血圧など他の生活習慣病がある場合は、できるだけOGTTを受けてください
100未満
正常域...現在、糖尿病の心配はほとんどありません
尿 糖
結果の判定
陽 性
糖尿病が強く疑われます。OGTTを受けてください
陰 性
糖尿病の疑いを完全には否定できません(「尿糖検査」の項参照)
(1) 糖尿病の可能性がある人を見付ける検査
糖尿病は自覚症状がない病気なので、健康診断で見付かることが多いものです。ふつう健康診断は空腹時に採血・採尿し検査します。糖尿病については図1のように判定します。
なお、血糖値は食前(空腹時)か食後かで大きく異なります。尿糖も血糖値次第で陽性になったり陰性になったりします。血糖や尿糖の検査は食前か食後かで結果の解釈が異なることを理解しておいてください。
(2) 糖尿病の可能性があるときに受ける検査
(1) の検査で糖尿病の可能性が見付かったとき、または自覚症状から糖尿病が疑われるときは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)という検査を受けていただき、診断を確定します(図2)。
図2 糖尿病を診断するための検査
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