ニュース
2016年06月21日
人工透析を防げる? 腎臓病悪化の予測に有効なアミノ酸を発見
- キーワード
- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症

血液中にわずかに含まれるアミノ酸の量から、腎臓病が悪化するリスクを予測する方法を発見したと、大阪大学と九州大学の研究チームが発表した。人工透析の導入を防ぐために、リスクの高い人を早期に発見し、積極的に治療できるようになる可能性がある。腎臓病を合併しやすい糖尿病などの治療にも役立つという。
腎臓病の進展を予測する画期的な方法を発見
慢性腎臓病(CKD)は、血液中の老廃物を取り除く働きをもつ腎臓の働きが、健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった異常が続く状態をいう。現在、日本には約1,330万人のCKD患者がいるとされ、これは成人の約8人に1人にあたる数だ。
腎機能が低下してしまうと、それをもとの状態に戻すのは困難だ。腎臓の機能が10%にまで低下すると、人工透析や腎移植を受けなければ生きられなくなる。さらにCKDは、透析になるだけではなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重大な危険因子になる。腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにつながる。
透析療法は患者の生活の質(QOL)を大きく低下させ、医療費を増大させる。慢性腎臓病を進展させないことが重要な課題となっているが、予後を推定する有効な方法はみつかっていない。
大阪大学腎臓内科学の猪阪善隆教授らの研究チームは、血中に微量しか存在しない「D型アミノ酸」に着目。
アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、ほとんどのアミノ酸には「L型アミノ酸」と「D型アミノ酸」がある。大部分は「L型アミノ酸」だが、最近の技術の進歩により「D型アミノ酸」がごく微量あり、さまざまな生理活性をもつことが分かってきた。
研究チームは2005~09年に大阪大学の関連病院を受診した慢性腎臓病患者118人を対象に、九州大学薬学部の浜瀬健司准教授らが開発した新型の「高速液体クロマトグラフィー」解析装置を活用して、血中のD型アミノ酸を測定し、平均4年間経過を見た。
その結果、2種類の「D型アミノ酸」について、血中濃度が高いと人工透析や死亡に至るケースが、濃度が低いケースの2~4倍になった。
「D型アミノ酸」のような体内の代謝物はその時々の体内の状態を反映している。今回の成果は、腎臓病の進行を抑制し透析導入を防ぐために、患者の個人差に合わせて最適な医療を提供する「テイラーメイド医療」を実現させる手かがりとなる。
「これまで有効な予測法がなかった腎臓病の進展を予測することを可能とする画期的な方法を発見した。腎臓病に合併しやすい心不全、心筋梗塞などは、慢性腎臓病の重症度により予後が大きく変動する。これらの疾患でも患者の予後を改善できる可能性が高い」と、猪阪教授は述べている。
研究は、大阪大学大学院医学系研究科内科学講座(腎臓内科学)の猪阪善隆教授、医学部附属病院老年・腎臓内科の木村友則氏、九州大学薬学部 浜瀬健司准教授らの研究グループによるもで、科学誌「Scientific Reports」オンライン版に発表された。
大阪大学大学院医学系研究科内科学講座(腎臓内科学)Chiral amino acid metabolomics for novel biomarker screening in the prognosis of chronic kidney disease(Scientific Reports 2016年5月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
糖尿病の検査(HbA1c 他)の関連記事
- 早い時間に食事をとると糖尿病リスクは減少 「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重要
- 「温泉療法」で⾼⾎圧を改善 ストレスによる睡眠障害を緩和 冬の温泉⼊浴では注意点も
- 糖尿病の予防はすぐにはじめられる こんな人は糖尿病リスクが高い 東京都など
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病の人にとって危険? 血糖値が上昇し筋肉の質も低下
- 握力が低下している人は糖尿病リスクが高い 握力や体力を維持して糖尿病リスクを減少
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 脳卒中の脅威は世界で拡大 【脳卒中を予防するための8項目】
- 世界の8億人以上が糖尿病 糖尿病人口は30年で4倍以上に増加 半分が十分な治療を受けていない
- 【世界糖尿病デー】糖尿病の人の8割近くが不安やうつを経験 解決策は? 国際糖尿病連合
- 【世界糖尿病デー】インスリン治療を続けて50年以上 受賞者を発表 丸の内では啓発イベントも
- 若い人の糖尿病が世界的に増加 日本人は糖尿病になりやすい体質をもっている 若いときから糖尿病の予防戦略が必要