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2015年11月18日

「ビール腹」の人は要注意 内臓脂肪がたまると死亡リスクが上昇

 お腹が突き出たいわゆる「ビール腹」体形の男女は、標準体重を維持している場合でも脳卒中や心臓病の発症リスクが上昇することが、1万5,000人以上を対象とした調査で明らかになった。
「標準体重」の人も安心できない 内臓脂肪に注意
 肥満は、高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を引き起こし、最終的に脳卒中や心筋梗塞などで命を落とす危険性を高める。健康を維持するために、肥満の解消・予防が重要だ。  肥満をコントロールするために、身長と体重から算出する体格指数(BMI)の数値が基準とされることが多い。健康診断でもBMIをもとに肥満が判定されている。日本人では18〜49歳では18.5〜24.9、50〜59歳は20.0〜24.9、70歳以上は21.5〜24.9が理想的な体格とされる範囲だ。

 しかしBMIの数値により「標準体重」と判定された場合でも、脂肪が付き過ぎてお腹が突き出た肥満は注意を要することが、今回の調査で明らかになった。

 米国のメイヨー クリニックなどの研究チームが、全米で行われた米国健康・栄養調査(NHANES)に参加した18~90歳の男女1万5,184人を14年間にわたり追跡して調査した。

 その結果、ビール腹体形の男性は単なる肥満や過体重の男性に比べて死亡リスクが1.87倍に上昇することが判明。女性でも死亡リスクは1.48倍に上昇した。

 お腹がぽっこりとした肥満は内臓脂肪によるもので、このタイプの肥満は「内臓脂肪型肥満」と呼ばれている。研究グループが過去に行った調査でも、内臓脂肪型肥満の人は2型糖尿病や脳卒中、心臓病を発症するリスクが高いことが判明している。

 つまり、BMIで肥満と判定されなかった人でも、内臓に脂肪がついている人は死亡リスクが上昇することになる。この研究は、米国内科学会が発行している医学誌「アナルズ オブ インターナル メディシン」に発表された。

「隠れ肥満」が動脈硬化のリスクを高める
 内臓脂肪型肥満は、腹腔内の腸間膜などに脂肪が過剰に蓄積しているタイプの肥満で、下半身よりもウエストまわりが大きくなる体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれる。

 BMIが25未満で、肥満ではないものの内臓脂肪が蓄積している場合は「隠れ肥満」と呼ばれることがある。

 内臓脂肪型肥満が良くないのは、内臓脂肪組織から分泌されるホルモンである「アディポネクチン」が減ってしまうからだ。

 アディポネクチンには、傷ついた血管壁を修復する働きをしたり、悪玉のLDLコレステロールを抑制して動脈硬化を予防するほか、インスリンの働きを高めたり、血圧を低下させる作用などがある。

 アディポネクチンの分泌が減少すると、動脈硬化を防ぐ働きが低下し、インスリン抵抗性の状態が引き起こされ、血糖値が上昇しやすくなる。

 肥満を改善し内臓脂肪を減らすことはアディポネクチンの分泌を高め、動脈硬化のリスクを減らすことにつながる。

 そのためには、まず食事と運動を見直して改善することが重要だ。食事では「食べ過ぎない」ことと「食品の栄養バランスに気をつける」ことを意識することが求められる。

 また、運動には、「肥満を防ぐ」「血管をしなやかにする」「善玉HDLコレステロールを増やす」「血圧や血糖値を下げる」など、さまざまな効果がある。

アルコールは高カロリー 飲み過ぎに注意
 なお「ビール腹」はビールを飲み過ぎでお腹が出てきたことのみを意味するのではないので、注意が必要だ。内臓脂肪型のぽっこりと出たお腹がビール樽に似ていることから言われるようになったものだ。

 しかし、ビールをよく飲む人は肥満になりやすいのも事実だ。原因として考えられるのは、まずビールに合うおつまみは高カロリーのものが多いこと。空揚げや焼き鳥、餃子、フライドポテトなど、油が多いもの、味の濃いものをビールと一緒に食べると、ついたくさん食べてしまいがちだ。

 また、ビールが好きな方はたくさん飲む傾向があるのも原因に挙げられる。お酒のカロリーはその度数に左右され、アルコールの度数が高くなればなるほどカロリーが増えていく。ビールのアルコール度数は5度程度だが、4杯、5杯と飲んでしまうと、簡単に高カロリーになってしまう。

 一般的にアルコール量にして約20~30gを限度にすると、飲み過ぎを防げる。これは、缶入りビール(350mL)だと1~2本に相当する。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめる。

Normal-Weight Central Obesity: Implications for Total and Cardiovascular Mortality(アナルズ オブ インターナル メディシン 2015年11月10日)
Belly fat in men: Why weight loss matters(メイヨー クリニック 2013年6月8日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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