私の友人のA君は、整形外科医師であるが、十数年前から2型糖尿病を患っている。最初の数年間は糖尿病の内服薬と食事療法による治療で、初期には狭心症も発症した。その時は、A君は食事療法の重要性を理解しておらず、血糖値は非常に高かった。A君はその危機を境に反省し、食事療法を見直し、今ではエキスパートになった。
まず、朝昼晩と食事のカロリー制限と糖質制限を適切にすることで、血糖値は安定した。しかし、困ったのは午後に空腹感が強まることである。とりわけ、手術が複数ある日の午後は、最初の手術が終わった後、使用したカロリーを補給し、空腹感を改善したい。手術は2時間ぐらいで終わる事が多く、その手術後に小休止の後、次の手術が入る。空腹感を感じて、集中力を減退させるのは、もってのほかである。小休止時間に、簡単に食べられて満腹感があり、しかも低カロリー、低糖質のおやつになる食材はないかと、様々な食材を試行錯誤した。そして見つけた。
大豆食品の、「納豆」と「豆腐」である。「納豆」は1パックで60Kcak、糖質量は2.2g。タレは塩分を含むし、余分なカロリーとなるのでかけない。からしを入れてかき混ぜ、鰹節、又は海苔、あるいは生姜を日替わりで変えてかける。これが美味しいそうである。
実際に私も食べてみたが、よくかき混ぜた「納豆」は、ねばねばの食感もよく、それに混ぜた鰹節は不思議な甘さがあった。海苔を混ぜた時は、海苔のぱりぱり感がまたよくマッチする。生姜はその辛さが「納豆」本来の味を引き立たせる。つまりどれも美味であり、さらにカロリーと糖質の点からも問題ない。これを日替わりすると飽きない。しかも、ゆっくり1パック食べると、満腹感もあり、腹持ちもよく、手術がスムーズにできたそうである。鰹節と海苔はコンビニでパックしたものが購入できる。生姜は、大手スーパーの寿司売り場で、無料で入手できるとのことで、準備するのも低価格である。
A君はさらに「納豆」を食べた後、血糖値を測定した。鰹節、海苔、生姜、どれを混ぜた納豆の場合も、食後血糖値は5-10mg/dL程度の増加であったそうだ。
もうひとつの大豆食品のおやつは「豆腐」である。コンビニで購入できる、小さい豆腐1パックは60Kcalで糖質は1.7g。その「豆腐」も味付けの醤油をかけずに塩分、糖分を減らし、そのかわりに鰹節、又は海苔、或いは生姜を日替りで混ぜる。これも「豆腐」の柔らかな食感に加えて、それぞれの味わいが美味である。余分な味付けをしないところがポイントで、1パック食べるとかなり満腹感もある。私も食べたが、満腹感は「納豆」以上であった。
A君はまた「豆腐」を食べた後に、血糖値を測定してみた。この場合も、鰹節、海苔、生姜、どれを混ぜた場合でも、食後血糖値は5-10mg/dl程度の増加であった。
このように、「納豆」と「豆腐」を日替わりで食べると、月曜日から金曜日まで異なったおやつが食べられる。さらに仕事が休みの日曜日でも、空腹感を感じれば、おやつに「納豆」か「豆腐」を食べている。A君はこの間食をずっと続けていて、暑い夏などは冷たい「豆腐」が舌触りもよく、毎日食べているそうである。逆に寒い冬は、「納豆」が毎日のおやつになる。
幸い現在A君は、内服が不要になり、食事療法のみで、血糖値をコントロールできている。仕事もバリバリやって、糖尿病の他の合併症も無い状態だ。「納豆」も「豆腐」も、たんぱく質は豊富であり、更に「納豆」は発酵食品特有のビタミン、アミノ酸も多く含んでいる。さらに納豆菌が腸の免疫力も強める。これらをおやつとして食べる事は、単に空腹感を満足させるのみならず、健康にも非常に良い。是非、試して戴きたい。