第52回欧州糖尿病学会(EASD)
加糖飲料や菓子類などの嗜好食品を、より健康的な食品に代えるだけで、カロリー摂取量を減らすことができ、糖分や塩分の摂取量も低下できることが、オーストラリアのポピュレーション・ベースの調査で判明した。9月にミュンヘンで開催された欧州糖尿病学会(EASD)年次学術集会で発表された。
肥満や糖尿病を改善するために最初に減らしたい食品
欧米人は一般的に、加糖飲料や菓子類などの嗜好食品を多く食べており、オーストラリアでは1日のエネルギー摂取量の3分の1以上を嗜好食品から摂っている。
嗜好食品を、野菜、フルーツ、乳製品、全粒粉、低脂肪の肉類に代えるだけで、エネルギー摂取量を減らすことができ、栄養摂取状況も改善することが、サウスオーストラリア大学保健科学部のトム ウィッチャリー氏らの研究で明らかになった。
2型糖尿病など肥満と関連した病気を改善するために、嗜好食品を減らすか、より栄養価の高い食品に置き換える方法は、簡単に取り組めて、食べ過ぎを抑える効果的な手段になるという。
食事療法を効果的に改善する方法として次の3つがある――▽嗜好食品の摂取量を減らすこと、▽低エネルギー甘味料を使い、嗜好食品の糖質を減らすこと、▽嗜好食品の塩分量を減らすこと。
嗜好食品を減らし、より健康な食品に置き代える
ウィッチャリー氏らは、2011~2013年に行われた「オーストラリア健康調査」の対象となった1万2,153人のデータを解析。食事内容と肥満や2型糖尿病などの生活習慣病の発症リスクの関連について検討した。
嗜好食品を減らすと健康状態にどのような影響をもたらすかを、大規模調査の結果をデータモデリングし明らかにすることを目的に調査した。対象者の4.7%は糖尿病だった(自己回答)。
その結果、次のことが明らかになった――
・ 嗜好食品の量を25%減らした場合、減らさない場合に比べ、1日のエネルギー摂取量は9.0%(184kcal)減少する。また、嗜好食品をより健康的な食品に置き換える場合は、置き換えない場合に比べ、健康的な食品が8.3%増加する。エネルギー摂取量は3.6%(74kcal)減少し、タンパク質摂取量は2.1(2.3%)増加、糖分は10.8g(20.6%)減少、ナトリウム(塩分)は220mg(3.9%)減少する。
・ ビスケット、ケーキ、マフィン、スコーン、ケーキタイプのデザートなど、糖質の多い嗜好食品を25%減らすと、1日のエネルギー摂取量を1%減らせる。
・ 加糖飲料(SSB)に含まれる糖質を低エネルギー甘味料に置き換えると、エネルギー摂取量を60kcal(2.9%)減らせる。
・ 糖尿病有病者を対象としたサブ解析では、嗜好食品の摂取量は735kcal(総エネルギー摂取量の35.8%)だが、嗜好食品を減らすと604kcal(同32.4%)まで減少できることが判明した。
取り組みやすく、長続きしやすい食事療法
「今後は介入試験を行い、より詳しく調べる必要がありますが、食事指導における課題は見えてきました。嗜好食品を食べる習慣を少し改めるだけでも、大きな変化を得られる可能性があります」と、ウィッチャリー氏は指摘している。
2型糖尿病患者はほとんどが食べ過ぎており、嗜好食品を無意識に食べてしまう人も多い。糖尿病患者からは、「指示されたエネルギー量では空腹になり我慢できない」「どうしても嗜好食品をやめられない」といった声が多く聞かれる。
また、食習慣は長年にわたり身についたものなので、代えるのが難しいという人も少なくない。
嗜好食品を食べる量を減らせば、食事全体のエネルギー摂取量を減らせ、肥満の改善に、糖尿病患者の場合は血糖コントロールの改善につながりる。しかし、これは容易なことではない。食事の量を減らすと空腹感を感じ、もっと多く食べたくなり、長続きしないからだ。
「嗜好食品の一部をより健康的な食品に代えることから始めると、取り組みやすく、長続きしやすくなります」と、ウィッチャリー氏は説明する。
食事の質を高めて、少ない量でも満足感を得られように工夫することも大切だ。もっとも簡単に取り込めるのは、高エネルギーのジュースやコーラなどの加糖飲料を、水や低エネルギー甘味料を使ったお茶などの飲料に置き換えることだ。
「飲料では満腹感を得られません。高エネルギー飲料を飲むのが習慣となるとエネルギーを容易に摂り過ぎてしまうので、特に注意が必要です」と、アドバイスしている。
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160912193003.htm(Diabetologia 2016年9月12日)
[ Terahata ]