精製した炭水化物の多い「グリセミック指数」の高い食事をとっていると、うつ病を発症する危険性が上昇することが、7万人の女性を対象とした研究で明らかになった。
グリセミック指数の低い食品ほど食後血糖値を上げにくい
「グリセミック指数」(GI)は、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、それを基準に、同量摂取したときの食品ごとの血糖上昇率をパーセントで表した指標。日本語で「食後血糖上昇指数」と訳されることもある。GI値が高い食品ほど食後の血糖値を上げやすく、低いほど上げにくくなる。
GIは食品の食物繊維の含有比率、調理や加工方法、組合せ、咀嚼回数などで変わる。ごはんやパンでは、精白されたものよりも全粒穀物が入っていた方が、GI値が低くなり吸収が遅くなる。
全粒穀物は、加工度の低い、自然のままに近い穀物のこと。玄米、小麦、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ、ソバなどがある。全粒穀物は食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルなどの栄養素も精白されたものに比べ多く含まれる。
今回の研究は、閉経後の女性の健康上の問題を予防・治療するための詳しい情報を得るために、米国国立衛生研究所(NIH)が実施した「女性の健康イニシアティブ研究」(WHI)の観察研究のデータをもとにしている。
コロンビア大学医学部の研究チームは、1994から1998年にWHIに参加した、50?79歳の女性6万9,954人に、食事に関するアンケートに回答してもらった。食事のGIによって、参加者を5グループに分けて比較した。
全粒穀物、野菜、果物、食物繊維を多く摂るとうつ病リスクは低下
白米や白パン、加糖飲料などの精製された炭水化物は、GI値が高い。GI値が高い食品を摂取すると、血糖を下げるインスリンが過剰に分泌される。インスリンには脂肪の合成を高め、分解を抑制する作用もある。したがって、GI値が高い食品を摂ると脂肪が蓄積されやすくなる。
この反応は、肥満や2型糖尿病の原因になるだけでなく、うつ病や気分障害、疲労感などの症状を引き起こしたり悪化させる原因となる可能性があるという。
研究に参加した女性の食事のGIや摂取している炭水化物のタイプと、うつ病の発症との関連を調べたところ、食事のGI値が最小グループと比べて、最大グループはうつ病の発症リスクが22%増加することが明らかになった。
また、食事に添加される糖分の摂取量が最大のグループでは、うつ病の発症リスクが23%増加することも明らかになった。
逆に、全粒穀物、野菜、果物、食物繊維を多く摂取していた女性ては、うつ病のリスクは減少していた。全粒穀物や野菜はGI値が低く、食後の血糖値を上げにくい。
「高GIの食事はうつ病のリスク要因であることが示されました。精製されていないホールフーズなどの食品を摂り、食事をコントロールすることで、うつ病の予防・治療の効果を得られる可能性があります」と、コロンビア大学医学部のジェームズ ゲンウィッシュ氏は言う。
「今回の研究は、低GIの食事とうつ病発症の因果関係を解明したものではありません。低GIの食事がうつ病の予防に効果的であるかは、無作為化対照試験を行い、さらなる研究が必要です」と付け加えている。
Consuming Highly Refined Carbohydrates Increases Risk of Depression(コロンビア大学医学部 2015年7月29日)
[ Terahata ]