インスリンポンプを使った「持続皮下インスリン注入(CSII)療法」(以下、ポンプ療法)は、携帯電話ぐらいのサイズの小型機器を用いて、インスリンを24時間、持続的に注入する治療法。皮下脂肪に入れた細い管から、微量のインスリンを24時間、自動的に注入し続け(基礎分泌に相当)、食事前などにスイッチを押せば、追加注入できる(追加分泌に相当)。
より柔軟で自由なライフスタイルを実現
ポンプ療法により良好な血糖コントロールが困難な患者でも、より厳格な血糖コントロールができるようになるという研究は多く
発表されている。また、インスリンの頻回注射(強化インスリン療法)による標準的な治療法では、毎日のスケジュールに制限が加えられることを困難に感じる患者もいるが、ポンプ療法であれば、最近の機種では3日に1度、注入チューブのセットを交換するだけで済み、毎回の注射の必要がなくなる。
より柔軟で自由なライフスタイルを実現できるという声も伝えられている。米国糖尿病学会(ADA)は、ポンプ療法では「患者はインスリンの作用に自分の生活を合わせるのではなく、生活にインスリンの作用を合わせることができる」とし、「有益な治療法だ」としている。
ポンプ療法では、注入用の針を皮下に穿刺し、柔らかい注入チューブでポンプ機器本体とつなげた状態が1日24時間続く。現在治療に使われている機器は本体の重量が100g程度。入浴時や水泳など短時間の運動時には、注入チューブと留置管を簡単な操作で外すことができるが、留置管は肌に固定されたままになる。
ポンプ機器はさまざまな改良が重ねられ違和感は軽減されているが、面倒でうっとうしいと感じる患者もいる。また、ポンプ療法でもインスリン注射と同じように、1日数回の血糖自己測定を行い、その結果を自分の血糖コントロールに反映できる能力が求められる。体重増加が起こる場合もあり、通常のインスリン注射に比べ高価な治療法とな
る。
スティーヴン エーデルマン・カリフォルニア大学医学部教授は、ポンプ療法について「すべての患者向けの治療ではないにしても、インスリン療法を行っており、血糖コントロールが不良でより改善する必要のある患者や、より柔軟なライフスタイルを求める患者には考慮されるべきだ」と述べている。
カリフォルニア大学が医療スタッフや一般向けに公開しているビデオ。スティーヴン エーデルマン・カリフォルニア大学医学部教授がポンプ療法についての一般的な解説や、治療を開始するにあたっての注意点を紹介している。ビデオには実際にポンプ療法を行っている患者の声も収録されている。
エーデルマン教授は自身が15歳のときに糖尿病と診断された。重要なのは「より良い治療を行い糖尿病合併症を予防すること」だという。
インスリンポンプについての解説を下記ページでみることができる。
Insulin Pump Therapy (英語)
機器の電池が切れたりチューブが詰まったり外れると、インスリンが注入されなくなり、ケトアシドーシスが起こるおそれもある。治療の意味をよく理解し、機器の操作を適切に行いトラブルへの対処ができるようにすることが求められる。ポンプ療法を熟知した医師や医療スタッフの指導や相談は欠かせない。
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[ Terahata ]