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2026年11月02日
短期ステロイドで糖尿病患者の副作用増
ステロイドの飲み薬(経口ステロイド薬:OCS)は、炎症やアレルギーを抑える特効薬として広く使われている。長期間の使用は副作用が多い一方で、2週間以内の短期的な使用であれば比較的安全だと考えられてきた。しかし、最新の大規模研究により、2型糖尿病の患者さんにおいては、わずか2週間以内のOCS使用であっても、消化管出血や肺炎、心不全などの重篤な有害事象(副作用)のリスクが上昇することが明らかになった。台湾の研究グループが、JAMA Network Openに報告した。
OCSの短期使用は本当に安全か?
ステロイド薬は、ぜんそくや重い皮膚炎、感染症に伴う強い炎症など、さまざまな病気の治療に用いられる有用な薬である。ステロイド薬が血糖値を急激に上昇させる(ステロイド糖尿病)ことは古くから知られており、診療ガイドラインでも「糖尿病患者さんにステロイド薬を開始する際は、血糖値を密に監視すること」が推奨されている。
一方で、骨粗しょう症や免疫低下といったステロイド薬特有の重い副作用は、長期間使い続けた場合に起きるものであり、14日以内の短期的集中投与(バースト)であれば、血糖値の上昇などを除いては「比較的安全である」と臨床現場でも認識されてきた。
しかし近年、一般の人を対象とした研究で、短期間のOCS使用でもまれに重篤な副作用のリスクが高まることが報告されている。もともと感染症や心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者さんにおいて、短期間のOCS使用が血糖値の上昇以外にどのような重篤な副作用を引き起こすかについては、これまで十分に分かっていなかった。
台湾の2型糖尿病患者3.6万人を解析
そこで研究グループは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)のデータ(2008年1月〜2022年12月)を用いて、2型糖尿病患者における短期的なOCS使用と重篤な副作用との関連を検討した。
解析対象となったのは、OCSバーストによる治療を受けた40歳以上の2型糖尿病患者3万6,048人(平均年齢61.6歳、男性47.6%)。OCSの使用日数は平均4.5日であった。
研究には、自己対照ケースシリーズという手法を用いた。各対象者について、「ベースライン期間(OCSバースト開始前6~90日)」と「OCS治療後の2期間(OCSバースト開始後6〜30日および同31〜90日)」で重篤な副作用の発生率を比較した。OCSは、全てプレドニゾン換算とした。
主要評価項目は、以下の5つの重篤な副作用の発生とした。
①消化管出血(胃や腸からの出血)
②肺炎
③敗血症(感染症の重症化)
④心不全
⑤骨折
未測定の偏り(交絡)の検出用の陰性対照アウトカムには失神を設定。5つの主要評価項目および陰性対照アウトカムについて、条件付きポアソン回帰モデルという統計モデルを用いて発生率比(IRR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
使用後30日以内で肺炎リスク2倍、心不全・消化管出血リスクも上昇
解析の結果、OCS開始後早期(6〜30日以内)に、重篤な副作用のリスクが有意に跳ね上がることが明らかになった(図)。ベースライン期間と比較したリスク上昇(IRR)は以下の通りである。
心不全:1.87倍(IRR 1.87、95%CI 1.27~2.77)
消化管出血:1.71倍(IRR 1.71、95%CI 1.52~1.94)
さらに、OCS開始から31〜90日が経過した期間においても、消化管出血のリスクが1.26倍(IRR 1.26、95%CI 1.14~1.38)、骨折のリスクが1.42倍(IRR 1.42、95%CI 1.21~1.68)と上昇が認められた(図)。

一方、陰性対照アウトカムについては、関連は認められなかった。
これらの結果は、死亡例を除外した場合や、リスク評価の期間定義を変更した複数の感度分析(結果の信頼性を確認する追加テスト)においても一貫して認められ、極めて信頼性の高いデータであることが示された。
安易なOCS処方は避けるべき
以上から、研究グループは「2型糖尿病患者さんへのOCSバーストは、消化管出血、肺炎、心不全、骨折のリスク上昇と関連していた。2型糖尿病患者さんはもともと感染症や心血管イベント、骨折のリスクが高いため、短期間であってもOCS使用による副作用のダメージを受けやすい」と結論付けた。
一般的な風邪、一時的な湿疹、関節の痛みなど、自然に治るような病気や他の薬で代用できる症状に対して、安易にOCSを処方することは、糖尿病患者さんにとって看過できないリスクとなりうる。「たった数日だから大丈夫」という思い込みは危険ということだ。
本研究は、糖尿病患者さんに対するOCSバーストの危険性を数値で示した貴重なデータである。患者さん自身も「この薬は本当に必要か」「他に選択肢はないか」を主治医や薬剤師と慎重に相談することが、自身の安全を守るために必要かもしれない。
■参考
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