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2026年09月28日
夜間低血糖の予防に、プロテインの意外な効果⁉
1型糖尿病の患者さんにとって、睡眠中に血糖値が下がりすぎる「夜間低血糖」は深刻な問題である。従来、低血糖を防ぐには「糖質の補給が不可欠」と考えられてきたが、最新の研究によって、糖質をほとんど含まないプロテインの摂取でも夜間血糖値の安定に寄与することが示された。オーストラリア・メルボルン大学などの研究グループが、1型糖尿病の成人患者さんを対象に、就寝前の「ホエイプロテイン」摂取が夜間血糖に与える影響を検討し、結果をDiabetes Obes Metab(2026年9月3日オンライン版)に報告した。
グルカゴン分泌能力が低下、自力での血糖調整が困難に
1型糖尿病の治療において、睡眠中に生じる「夜間低血糖」の予防はきわめて重要である。睡眠中は低血糖の初期症状に気づきにくく、自力での対処が難しいため重症化しやすい。実際、重症低血糖の半数以上が夜間に発生しているという。
通常、健康な人では血糖値が低下すると膵臓から「グルカゴン」というホルモンが分泌され、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させる。しかし、罹患期間の長い1型糖尿病の患者さんは、グルカゴンの分泌能力が低下し、自力で血糖値を調整しにくくなる。一方で、アミノ酸(タンパク質の分解物)に対するグルカゴン分泌反応は正常に保たれているという特徴がある。
乳清に含まれる「ホエイプロテイン」に注目
そこで注目されたのが「ホエイプロテイン」である。ホエイプロテインとは、牛乳からカゼインや脂肪分を取り除いた乳清(ホエイ)に含まれるタンパク質であり、消化吸収が早く、必須アミノ酸を豊富に含む栄養素である。
これまで、低血糖を防ぐ、あるいは血糖値を維持するには、ジュースや補食などの糖質(炭水化物)が必要であり、「糖質を摂らなければ低血糖対策にはならない」と考えられてきた。しかし実際には、アミノ酸もグルカゴンの分泌を促し、肝臓で糖を作り出す働き(糖新生)を誘発させるため、血糖値を緩やかに上昇させることができる。
こうしたタンパク質の代謝特性を利用して、メルボルン大学などの研究グループは今回、1型糖尿病患者さんが就寝前にホエイプロテインを摂取することで、夜間の血糖値を安定化できるかを検証した。
1型糖尿病患者15人を対象としたクロスオーバー試験
対象は、1型糖尿病の成人患者15人(男性8人、女性7人、平均年齢50.7歳、平均罹病期間25.7年、平均HbA1c 7.0%)。参加者が日常生活を送る環境下(フリーリビング条件)で、クロスオーバー試験が実施された。
参加者は、就寝直前に「水200mLのみ(対照条件)」または「水200mLにホエイプロテイン(糖質および脂質が1g未満)を溶かしたドリンク(ホエイプロテイン条件)」のいずれかをランダムな順番で、別々の日に摂取した。夕食は就寝の4時間以上前に済ませ、通常通りのインスリン注射を行った。夜間はインスリンポンプの基礎注入量を一定に固定し、CGM(持続血糖測定器)を用いて8時間にわたり夜間の血糖推移を測定した。
ホエイプロテイン摂取で夜間低血糖がゼロに
その結果、就寝前に水のみを摂取した対照条件下では、夜間に血糖値が平均して約1 mmol/L(約18 mg/dL)低下し、摂取時(0分)の値を下回り続けた。計4人が夜間低血糖の予防や治療のために、糖質補給を余儀なくされた。
一方、就寝前にホエイプロテインを摂取した条件下では、血糖値が約2 mmol/L(約36 mg/dL)緩やかに上昇、夜間を通じて維持された。特に、摂取後最初の6時間における血糖維持は顕著だった。特筆すべきは、ホエイプロテイン条件下では夜間低血糖を起こした人は一人もおらず、糖質補給も不要だった点である。さらに、高血糖(15 mmol/L超)を来してインスリンを追加(補正インスリン)した人もいなかった。
夜間血糖を下支えするバッファーとして期待
以上から、研究グループは「就寝前のホエイプロテイン摂取が、1型糖尿病患者さんの夜間低血糖を緩和し、緩やかかつ持続的に血糖値を引き上げるといったプラスの影響を与えることが示された」と結論づけた。これは「糖質が入っていなければ低血糖対策にはならない」という従来の思い込みを覆す知見といえる。
ジュースなどの速効性糖質は、血糖値を急速に引き上げる反面、効果が短時間で切れて血糖値の乱高下を招くリスクがある。それに対し、ホエイプロテインは急激な高血糖を引き起こすことなく、睡眠中の長時間にわたって血糖値を下支えする、いわば「バッファー(緩衝材)」として機能するという。
今回の知見について、研究グループは「就寝前に糖質を摂らずにホエイプロテインを活用するアプローチは、1型糖尿病患者さんにとって、夜間高血糖の危険を冒さずに夜間低血糖リスクを安全に軽減する実用的な選択肢となりうる」と評価。そのうえで、「今回は小規模なパイロット試験だったため、今後はより大規模な臨床研究での検証が期待される」との考えを示している。
■参考
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