「ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタル」へ通院する小児1型糖尿病の患者さん(1)
ケニア・ナイロビ市内にある「ケニアッタ・ナショナル・ホスピタル」では、毎週火曜日の9:00から13:00の間に小児糖尿病の外来診療を行っています。
1か月に来院する小児糖尿病の患者さんは約140名ですが、同病院の専属の小児内分泌医は1名、ご自身のクリニックと大学での講師を兼任されている小児内分泌医が1名、他にその時に応じて派遣される人数が変わりますが2‐5名、他の病院から派遣されてきます。派遣されてくる多くは、若手の医師が多いようです。
※「ケニアッタ・ナショナル・ホスピタル」については、森田会長の「わが友、糖尿病」でもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。
■森田会長「わが友、糖尿病」
ケニヤ(2)ケニヤッタナショナルホスピタル
http://www.dm-net.co.jp/sally/2011/06/post_19.php
「ケニアッタ・ナショナル・ホスピタル」へ通院する患者さんは、ナイロビ市内だけではなく、ナクルやニエリ(ナイロビからバスで約3時間)、ソマリアとの国境付近であるマンデラやガリッサ、ウガンダ共和国付近のカカメガなど遠方からバスで約10時間かかけて遠方から通院してくる患者さんもいます。
外来での小児糖尿病患者さんへの指導は、糖尿病エデュケーターの資格を持つ看護師ムジョンバさんが担当しています。ムジョンバさんは、これまで多くの糖尿病患者さんの指導にあたってきました。
ムジョンバ看護師
以前、大阪で開かれた糖尿病関連の学会参加のために来日し、島根県でホームステイをしたこともあるそうです。その時にホストファミリーに親切にしてもらい、日本贔屓になったそうです。できることなら、2012年に京都で行われる「第9回IDF(国際糖尿病連合)西太平洋地区会議」へ参加をしたいと言っていました。
2011年にはスペインのバルセロナで研修を受け、2012年4月には、イギリスのスコットランドにおいてさらに研修を受ける予定です。ムジョンバ看護師は、医師や患者さんやその家族からも信頼されており、ケニアッタ・ナショナル・ホスピタルにおいてとても頼もしい存在です。
外来診療を担当する医師や看護師は糖尿病に関する専門知識を備えていますが、入院病棟を担当する医療スタッフの中には、糖尿病の専門教育を受けていない方もいるため、指導方法が異なるようです。
例として、ある看護師は「とにかく食事を摂ってはいけない」と指導して絶食状態としたり、また別の看護師は「食後にインスリンを注射するように」と言い、他の看護師は「食前にインスリンを注射するように」と指導するため、糖尿病に対して、どのように治療や自己管理をしていいのか、患者さんやその両親(特に母親)は非常に混乱しているとのことでした。
ザブロン カマウ君(6歳)
小学校に通っています。
4歳の時に呼吸困難の状態で病院に運ばれ、糖尿病と診断されました。
現在は、1日3回インスリン注射をしており、朝食前に中間型と混合型10-12単位、昼食前に速効型1-2単位、夕食前に混合型 8-9単位をうっています。
病院で処方されるのは、混合型のみのため、血糖コントロールのことを考えて速効型インスリンを一般の薬局で約2,000円を自己負担で購入しています。
血糖値は朝と夜にそれぞれ測定していますが、こちらも血糖測定器約2,000円、テストストリップ約1,600円/50枚を自己負担で購入しています。
インスリン注射は毎食前となってしまいますが、家に食べる物がないため実際は食事を摂れないことが多くあります。
「ケニアッタ・ナショナル・ホスピタル」へは毎月1−2回通院しています。
ザブロン君の家族は、両親と妹の4人です。
しかし、現在、父親が刑務所に服役していることと、妹は経済的な事情により母親の両親とともに暮らしています。ザブロン君は母親と生活をしていますが、母親が失業中のため収入がありません。そのため、善意ある方が生活費として毎月約7,000円を支援しており、そのお金で生活している状態です。
住居がナイロビ市内にあり、家賃が毎月約2,300円、インスリンや血糖測定などにかかる費用が約3,000円、そのほかに通院のためのバス代が2人分で片道約100円かかるため、なかなか食事を満足に摂ることができません。
あくまで推定ですが、実際には、物乞い・ゴミ漁り・ケニア社会の相互扶助意識(近所の人たちの助け。ケニアにはハランベーという助け合いの習慣があります)等を頼らなければ生きることができないと思います。
(左)元気いっぱいのザブロン君とお母さん
(右)ザブロン君がアルファベットと絵を描いてくれました。
ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタルへ通院する小児1型糖尿病の患者さん(2)へ続く
©2012 森田繰織