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海外の糖尿病事情 9 [アフガニスタン]

2006年01月
DITN 2006年1月5日発行号掲載:「海外糖尿病事情」より
医療スタッフ向けの情報紙『DITN(DIABETES IN THE NEWS)』(発行所:メディカル・ジャーナル社)に連載された「海外糖尿病事情」よりご紹介します。
人口2,510万人
GDP58億ドル(2004年)
1人当たりGNP約228ドル(2004年)
外務省資料より
 つい数年前まで、毎日のようにテレビ・新聞で報道されていたものの、ここの所アフガニスタンが報道される頻度が減ってしまったような気がします。それでも、同国に関心を抱いておられる方は少なくないと思います。今回は、主に文献から得た情報を元に報告させて頂きます。

 アフガニスタンと言えば、タリバンに破壊されてしまったバーミヤンの大仏像に代表されるように、シルクロードの交通の要衝に位置し、古くから栄えてきました。しかしながら、そのため多くの戦乱にも巻き込まれ、英国支配の後、旧ソ連のアフガン侵攻、そしてタリバン政権が崩壊した今もなお、長年内戦状態が続いた影響で国は混乱状態にあります。

 旧ソ連侵攻以来、多くの学校は閉鎖され、多くのインフラ施設が破壊され、保健・医療システムも崩壊状態にあり、母子死亡率は世界一といった中で、復興までに数十年を要すると言われています。また、ここ数年続く旱魃により近隣諸国からの食糧輸入を余儀なくされ、復興の障害となっています。

 糖尿病は、同国でも大きな問題となっています。糖尿病に対する認識そのものが一般の人々だけではなく、医療従事者にも十分とは言えず、予防・診断・治療の妨げとなっています。未だ糖尿病有病率に関する調査がなされたことはありません。

 昨年、世界糖尿病基金、アフガニスタン医療救援基金、ノボノルディスク社、同国保健省の協力によって、首都カブールに4つある総合病院内にそれぞれ糖尿病センターが設立されました。これらの医療施設には、ハイテク機能を持つ機器類が設置され、専門教育を受けたスタッフ達が配属されています。スタッフは、カブールとカラチでのOJTを持って終了となりますが、OJTの場をもっと増やす方向にあります。

 世界糖尿病基金とノボノルディスク社の寄付のお陰で、近い将来、より多くの機器類の購入が予定されています。さらに、ノボノルディスク社より4つのセンターにコンピューターと患者のデータベースが提供されただけではなく、スタッフの研修もなされ、特にカブール地区の患者を管理する最新のデータベースは非常に大きな財産となっています。そして、質の高いインスリンが、米国に拠点を置くNGO団体アフガニスタン医療救援基金によって継続的に寄付されています。

 これまでに3,000人以上の糖尿病患者が診断されています。総患者数3,055人のうち1型255人、2型2,090人(※総数と内訳合計が異なることについて解答なし)。1型のうち男性143人女性112人、2型のうち男性939人女性1,151人です。

 同国医師のグループとノボノルディスク社によって、アフガニスタン糖尿病協会が設立され、国民による選挙で選ばれた民主的な政権下の元、糖尿病のコントロールとケアを目的とする団体の設立が最優先課題とされています。

 アフガニスタン糖尿病協会は、非政府・非政治的な全国的組織で、同国法務省からも2005年3月に286番目の団体として登録されています。同協会は、11人の医師と数百人の患者から組織され、同国の糖尿病と戦うことを目標に掲げ、医師・薬剤師・医療スタッフに止まらず患者によって運営されるものとしています。同協会は、IDFに正式加盟をしたことで、各国から学び、現在はカブールを中心としている活動をアフガニスタン全土へ広めようと奮闘しています。

 まだまだ、地域格差が残り、他国の支援を受けなければ立ち行かない同国の糖尿病医療事情は完全とは言えませんが、糖尿病医療事情を向上させるための意欲は感じられるものがあります。そして、タリバン政権下では女性は学校へ行くことすら禁じられ、長年、差別を受けてきたにもかかわらず、 患者数の男女比に大きな差が見られないことに安心を覚えた次第です。
©2006 森田繰織
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