「ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタル」へ通院する小児1型糖尿病の患者さん(2)
ジョージ カルグ君(5歳)
幼稚園に通っています。
1週間前に呼吸困難に陥り、自宅近くの「キクユ・モスト・プレシャス・ブラッド・ホスピタルに搬送されましたが、そこには糖尿病の専門医がいないために治療が不可能と判断され、「ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタル」へ転送されてきました。
数か月前にインフルエンザに感染したことが、1型糖尿病発症の原因となったようです。
4日前からインスリン療法を開始しましたが、自分ではまだ注射が出来ないために、代わりに母親がインスリンを注射しています。
現在、ジョージ君は入院中で、看護師の指導により与えられる食事は1日500mlの牛乳のみです。
糖尿病を発症して間もないジョージ君や母親にとって、糖尿病についてわからないことが多いうえに看護師によって指導方法が異なるため、糖尿病に対してどのように治療や自己管理をしていいのかとても混乱しています。
そのために、先日、ジョージ君は低血糖の症状を経験しました。話をしていて私が受けた印象では、お母さんが低血糖について、あまり理解していなかったようでした。
スワヒリ語の通訳として同席していたケニア糖尿病協会(DKA)スタッフのランジャンさんが、糖尿病について分からないことは、退院前にクリニックのムジョンバ看護師に自分からどんどん尋ねて、正しい知識を身に着けなければいけない。とアドバイスしていました。
ジョージ君の家族は、両親と4歳の妹の4人家族です。
父親の仕事は日給制(1日 約100円)のため、一家の家計は不安定です。「ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタル」に通院するとなると、バス代が1人片道約140〜160円かかります。現在の入院費用についても今のところ、支払の目途が立たない状態です。
治療を始めて間もないため、不安が一杯のジョージ君とお母さん
ミルクだけの食事しか与えられていないためか、痩せ衰えてしまって元気がありません。
ジョージ君のその後
インタビューの2週間後、ジョージ君とお母さんに再会しました。ジョージ君は既に退院し、このときは外来受診に来たということです。朝7時に家を出て、10時に病院に着いたそうです。
まだ、自宅療養中ですが、近いうちに幼稚園にも再び通い始めるそうです。
現在は、朝に混合型14単位、昼食前に速効型6単位、夕方に混合型6単位のインスリン注射を打っています。まだ、自己注射ができないので、お母さんに注射をしてもらっています。今のところ、入院時に支給された速効型のインスリンを1日1回使用していますが、使い終わってしまったら、混合型のみしか同病院の処方されないため、インスリンの打ち方が変わるかもしれません。
血糖の測定は、朝6時半、10時、12時半、午後4時、6時半の1日5回ですが、自己負担で購入した約3,500円のグルコメーターと、テストストリップ25枚で約750円は、ジョージ君一家にとって、大きな負担となります。
入院中の2週間前と比べて、とても元気になったジョージ君。
この後、血糖測定の際に全フロアーに響き渡るほどの大声を上げて泣いてしまい、お母さんと看護師さんが2人がかりで押さえていました。
甘いものを食べてはいけない理由を説明しなければならないので、家族以外の人たちにも彼が糖尿病であることを説明するつもりです。
入院中500mlの牛乳しか与えられず、できるだけ食事を摂らないように指導されていた食事療法ですが、現在はウガリ(多くのケニア人が主食としているトウモロコシの粉を練り上げたもの)の他に野菜、ミルク、砂糖なしの紅茶(多くのケニア人は、砂糖を4杯以上たっぷり入れて飲みます)など、できる範囲でバランスよく食事を摂っています。しかしながら、経済的な事情で、バランスのとれた食事を続けるのは、なかなか困難です。
ケニヤッタ・ナショナル・ホスピタルへ通院する小児1型糖尿病の患者さん(3)へ続く
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©2012 森田繰織