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オーストラリアで1型糖尿病最高齢のアリシア先生のお母さま

2007年11月
オランダのアムステルダムで9月17日から21日(金)にかけて開催された第43回欧州糖尿病学会(EASD)に参加しました。

 今回は、オーストラリアに本部を置く、インスリンフォーライフ(IFL)の人たちとアパートを約1週間借りるかたちでの滞在となりました。

ルームメートとなったアリシア先生と


 ロン・ラーブ会長のご家族とボードメンバーのニールさんとアリシアさんと私の6人で3つのベッドルーム&ダイニングキッチン、そして1つのバスルームを共有するのは正直なところ不便を感じることも多くありましたが、今回、ベッドルームを共有し、いわゆるルームメイトとなったアリシア・ジェンキンス先生はIFLのボードメンバーであり、世界的に活躍されている内分泌医でもあります。

 これまでも、アリシア先生とは米国糖尿病学会(ADA)、欧州糖尿病学会(EASD)などの国際会議でお会いしたことはあったのですが、今回は、個人的なことも含めて、色々とお話させていただきました。

 なかでも、印象的だったのは、アリシア先生のお母さまのことについてお話を伺ったことです。

 アリシア先生のお母さまは、19歳の時に1型糖尿病を発病し、現在86歳で、何の合併症もなくお元気でお過ごしとのこと。オーストラリア国内最高齢の1型患者だそうです。

 オーストラリアでも1920年代には、1型は、まだ不治の病状態で、30年代になり、ようやく治療可能となり、40年代になり普通に治療をし、生き延びることができるようになったと同時に患者数も増えたそうです。

 アリシア先生のお母さまは、オーストラリアの片田舎の農家の娘として生まれ、学校では非常に成績優秀だったため大学へ進学し法律を勉強することを夢見ていたそうです。しかしながら、19歳にして1型を発病したために大学進学を断念させられてしまったそうです。

 当時のオーストラリアでは、まだまだ患者に対する偏見や誤解が強く、そして女性の社会的立場も弱い状態だったそうです。

右がアリシア先生のお母さま 撮影当時は85歳(67歳とあるのは病歴)
 農家の仕事の手伝いをしながら生活し、戦争の混乱もあり、結婚されたときは35歳を過ぎていたそうで、アリシア先生のお姉さまを産んだのが38歳、アリシア先生を産んだのが40歳と、当時の感覚からすれば相当な高齢出産と言えます。1型の治療条件も今と比べれば良いとは言えないなか、元気で、しかも優秀な娘たちを出産したというお話に非常に勇気付けられた次第です。

 糖尿病専門医であるアリシア先生によれば、糖尿病の母親から生まれた子は、胎児の時期に高血糖に晒されることが多いため、成人してから2型を発病する確立が非常に高いそうなのですが、幸いにしてアリシア先生もお姉さまも50歳近い年齢でありながら、まだ、2型は発病していないそうです。

 日本の患者さんたちにもぜひ話してあげてくださいとのことで、今回、書かせていただいた次第です。
©2007 森田繰織
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