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これからの国際協力
素焼きのインスリン保冷庫

2006年03月

Fig 1: Clay Pot with insulin インスリンを入れた素焼きの壷


Fig 2: Potter molding the clay 粘土から壷を作る壷職人


Fig 3: Principle of cool storage system 素焼きの壷の保冷の原理


Fig 4: Type 1 diabetics with the pots 壷を持つ1型糖尿病患者たち
 先日、インドのドリームトラストのシャラッド・ペンデセイ先生から「新たなインスリン保冷庫」という題名のレポートが届きました。

 その内容としては、インドの伝統的な知恵から素焼きの入れ物を利用して電気がなくてもインスリンを保冷することができる入れ物を作ったというものでした。

 ドリームトラストのあるインドのナグプールでは、夏場の日中の気温は、47度にも達します。そして、郡部では電気も通っておらず、先進国では常識となっている電気が必要な保冷庫、つまり冷蔵庫を提供しても使い物にならない状態です。

 インドでは、昔から素焼きの壷に水を入れておき、日陰に置く方法で“冷たい水”を確保してきました。外気の湿度が低いと蒸発素焼きの壷の外側の熱によって水が蒸発し気化熱を奪い、外気の熱は素焼きの壷に吸収されることになり、壷の中は冷たくなるという原理です。

 この原理を使って、ドリームトラストでは、1個3ドル相当で400個の素焼きのインスリン保冷庫を子供達に配るとしています。

 通常、国際協力と言えば、「先進国が途上国を援助する」という考え方があると思います。

 しかしながら、先進国の思い込みだけでは、実際に現地の事情というものを理解しないままでは、現地の人たちが実際に恩恵を被ることにならない無用の長物を送るだけになってしまいかねるかもしれません。例えば、先の例で言えば、電気があることを当たり前と捉えている今の日本人が電気冷蔵庫を無償提供すると言った事態です。

 以前、タンザニアの糖尿病事情を研究している時にも、タンザニアでは糖尿病専門医の研修を欧米の先進国に派遣するのではなく、インドに派遣しているという事情を知ることにもなりました。気候・風土病、そして経済問題など、欧米の国々よりも同じ問題を抱えている“熱帯の国”の方が実際に役に立つ知識を習得できるということが理由として挙げられていたことを思い出します。

 「援助活動はお金がかかるもの」、「お金がなければ、貧富の格差は解消できない」という思い込みが我々にはあるかもしれませんが、我々が知らない、現地の人たちの文化を理解し、知恵を利用し、工夫をすることで、解決出来うる問題があるものと考えさせられるレポートでした。

 そして、今までの「先進国が途上国を援助する」という思い込みではなく、途上国同士での様々な知恵を交換し、また途上国から先進国が学ぶという「相互扶助・相互交流」こそが、将来に向かって、発展的・持続的な協力関係が築けるものと確信する次第です。
©2006 森田繰織
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