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ガーナ・エチオピア・タンザニアにおける糖尿病ケアの状況とその問題点

2005年11月
第20回日本国際保健医療学会総会での発表とポスター展示

 11月5日〜6日に東京大学で開催された「第20回日本国際保健医療学会総会」で、国際糖尿病支援基金の会長として、発表とポスター展示をしました。

 当日、秋晴れの雲ひとつない晴天に恵まれ、ポスター展示から発表までに時間があったため、思わずふらりと散歩に出てしまい、近くにある祖母のお墓参りまでしてしまった次第です。祖母の墓前で、発の成功を祈ったためか、発表については、まずまずの評価を得たようです。

 大学院時代の恩師、先輩、クラスメートにも久しぶりに再会しました。よくテレビに出てくる安田講堂も意外に小さく感じられましたし、三四郎池もあまり綺麗ではないというのが正直な印象です。

 当日、ピクニックに来ている家族連れが多く、子供に「将来ここがお前の母校に・・・」と親御さんたちは、お子さんたちに暗示を掛けていたのかもしれませんね。

ガーナ・エチオピア・タンザニアにおける糖尿病ケアの状況とその問題点

国際糖尿病支援基金会長 森田繰織
国際医療福祉大学大学院教授 梅内拓生

研究の目的

 WHOの推計によれば、2000年の全世界の糖尿病人口は1億7,700万人とされ、2030年までには少なくとも3億7,000万人まで増加すると予測している。特に2型において、2030年までに先進国においては主として65歳以上の患者が大半を占めると予想される反面、途上国においては45歳から64歳という生産年齢で大半を占めると予想されている。皮肉にも生活水準の向上が糖尿病有病率を押し上げる結果となることを示唆している。

 ここでは、ガーナ・エチオピア・タンザニアの例をもとに途上国の糖尿病ケアの現状と問題点を明らかにしていく。

研究方法
  • International Diabetes Federation(国際糖尿病連合)のE-Atlas
  • 同連合の機関誌
  • WHO発表資料
  • 世界銀行発表資料
  • ILO発表資料および総務省統計局・世界の統計
  • 豪国に本部を置くInsulin for Life発表資料および聞き取り
 他入手可能な資料からガーナ・エチオピア・タンザニア3国の糖尿病ケアの現状と問題点を探り、同国の関係者からの聞き取り調査によって先の資料から得られた結果の実態の検証を試みる。

聞き取り調査の詳細


エチオピア医師3人移動途中機内にて 医師1人(偶然、アジスアベバへ向かう途中の機内で、以前、ゴンダールにて、糖尿病外来担当していた医師と隣席したため、同意を得て、聞き取り調査を実施) 他2人は、ヤカティット12国立総合病院にて、糖尿病担当医師に聞き取り
患者1人現地旅行会社の経営者で、2型糖尿病患者 同意を得て聞き取り調査を実施

ガーナ医師1人ノボテル・アクラのホテルロビーにて聞き取り調査を実施
患者8人コルレブ医科大学糖尿病外来にて、上記医師の同意を得、待合室にて同意を得られた患者(全て2型)に聞き取り調査を実施

タンザニア医師1人2005年ADA会議会場および2005年EASD会議会場にて聞き取り調査を実施
糖尿病協会職員3人2003年パリで開催されたIDF会議会場にて聞き取り調査を実施
患者1人2型糖尿病患者 2003年パリで開催されたIDF会議会場にて聞き取り調査を実施

  • 性別については、ガーナで聞き取り調査をした患者4人を除き全て男性、年齢は全て成人
  • なお、サンプル数が少なく、その国の状況と位置づけることに関して無理があることは承知しているが、今後の研究の先ずは足がかりを掴むものとできれば幸いと思い、実施に踏み切った次第である。
結果



各国が抱える問題

●エチオピア
インスリン不足
エチオピア全体で、糖尿病患者の48%が必要量を入手不可能。輸入薬剤に対する関税。インスリンが自給できない。

糖尿病患者として認定を受けるまでの負担が重い
地元GPの診断を受け、自治体を通し、患者として認定を受ければ、ヤカティット12病院のような国営の総合病院で診療報酬・検査・薬剤全てを含め、無料で治療を受けることができるが、そこへ至るまでの負担が大きい。その負担には、失業対策、交通機関整備など医療を超えた問題も解決しなければならない
●ガーナ
インスリン不足
1995年にスタートした「ガーナ糖尿病プログラム」結果は著しいものがあるが、治療に必要な物資の入手については、未だに達成できていない。 外国からの援助物資として、インスリンの無料送付を受けても、関税がかけられ、その負担が非常に大きく、物資を受け取ることができない。
食事療法の問題
糖質が多い伝統的な食事から糖尿病食への指導の困難さ 印刷物の価格や識字率の問題から、実演による指導を中心とせざる得ない
●タンザニア
インスリン価格
インスリンが高価で入手できず死に至る者も少なくない
冷蔵庫不足によるインスリン保持の問題
食事療法の問題
業務用冷蔵庫がもたらされ、ミネラルウォーターより安価な砂糖入り飲料を好む傾向 高脂肪の伝統的な食事 農村部における魚介類の入手の困難さ
教育不足
伝統的医療・民間療法への根強い信仰エイズとの誤診を恐れ、治療を拒否
糖尿病専門医不足
2003年時点で6人 推定患者数は30〜50万人 未診断者は2〜3倍と見積
考察 共通の問題点
  • 感染症対策が優先され、糖尿病を始めとする慢性疾患対策が後手後手に廻る傾向がある。
  • 先進国の援助により、糖尿病専門医療施設の設置、専門医・エデュケーター養成に関しては、まだまだ不十分ではあるものの、一定の成果を挙げてはいる。しかしながら、インスリン不足の解消に関しては、未解決のままである。
  • 1日1ドル以下の絶対貧困者数が人口の8割を占めており、教育を受ける機会に恵まれず、特に食事療法・小児の患者のケアのキーとなる女性の識字率が低いため、直接実例を示しながらの指導に頼らざるを得ない。
将来に向けて
  • 継続的なケアが必要となる糖尿病の場合、一時的な人道援助よりも、保健医療制度の導入の検討も含め、将来にわたって自立を目指す開発援助が望まれる。これは、経済問題全般に及ぶ問題であり、より多面的な研究が必要となる。
  • 糖尿病ケアの教育は健康教育にも繋がるものであり、そのためには、今後、女性の教育が重要と考える。

©2005 森田繰織
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