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大学院で修士号を取得

2004年04月
 今年の3月に国際福祉医療大学の医療福祉経営専攻で修士号を取得しました。社会人としてフルタイムで務めを続けながら、卒業した学部専攻と仕事に関連のない分野で修士号を取得したのは、我ながら信じられない気持ちです。

 大学院に行ったきっかけは、知人からの職場にかかってきた電話でした。“今晩、空いていたら…”と夕食に誘われ、その席で突然に大学院のことを教えてもらいました。そのときは、親から健康が優先と言われていたし、実際体力に自信があるわけでもなく、さらに入学の準備もしていなかったので、挑戦するつもりは全くありませんでした。

 翌日、英会話学校の友人(親とほぼ同じ年齢の方のです)に何気に話したところ、「それは絶対に挑戦すべき」と言われました。「とにかく今挑戦しなければ、人生後々絶対に後悔する。もし健康上の問題が生じれば、そのときは中退することも視野に入れればいい」。

 それを聞いて“挑戦”する決意が生まれました。いまや大学院は社会人にも門戸が開放されており、やる気さえあれば、どんなかたちにせよ、学ぶことは可能です。実際、入学した大学院には、社会人学生でありながら医療・福祉関連の仕事に従事している“専門家”も多く、先生よりも医療に詳しい人もいることを知り、やる気がでてきました。

 多くの方が親切に、おしげもなく協力してくれ、資料集めや実務経験での知識や経験を教えてくれました。周りの協力なしでは卒業も修士号取得もできなかっただろうと思います。

 さらには、クラスメート、先生方、大学院へ行くことを勧めてくださった先輩、IDFで知り合った海外の友人たち、国際糖尿病支援基金の関連で協力していただいている方々、修士論文の調査のためにIDF会議に出席するために有給休暇を取らせてもらった職場の上司や先輩・同僚たち、調査に協力してくれた友人たち、主治医の先生やその周りのスタッフの方々、在学期間中のほとんど上げ膳据え膳の状態を許してくれた家族、愚痴や苦悩を聞いてくれた親友と、ほんとうに多くの方々に直接的・間接的に支えられ、迷惑をかけながらなしとげられました。

 今回の修士論文についても、本職である金融機関での仕事で得た経験や知識はとてもに役に立ったし、新しい視点で論文を書けたと自負してます。この時代に生まれ合わせたことに感謝するとともに、どうぞ皆さんも可能性にどんどん挑戦しましょうと提言させていただきます。普段と違うところに身を置くことで、新たな発見ができ、知識が増え、視野は広がります。




 今回の修士論文を、みなさまにお見せしたいと思います。

 世界で糖尿病患者数が増えており、各国とも増大する糖尿病の医療費に悩まされています。医療費の支出の抑制は全世界に共通する重大な問題です。この論文は、実際の糖尿病治療費用が世界でどれほどの負担になっているかを、日本・米国の先進国や、フィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニア各国の現状と問題点を把握することで考察することを目的としています。

 結論としては、「過食や運動不足といった生活習慣と関連性が深いとされる2型糖尿病有病率(成人糖尿病有病率)が豊かさとは相関がなく、むしろ遺伝的な要因や感染が原因とされる1型糖尿病の方がわずかではあるが豊かさと有病率に相関が見られ、仮説に反する結果となった」というのがもっとも主張したいことのひとつです。

 まだまだ欠けている部分の多い荒削りの論文ですが、少しでもこの分野の研究発展のお役に立てれば幸いと思っています。

 ご協力いただき、ご迷惑おかけしましたみなさまに少しでも還元させていただければと思っております。




題目:糖尿病の疫学と治療費の研究
― 先進国と途上国の生活費と糖尿病治療費の比較と対策上の問題


研究の背景と目的
1997年のWorld Health Reportによれば、世界中で約1億3500万人が糖尿病に苦しんでおり、この数は2025年までには3億人に達すると予想されている。この2倍以上の増加は、人口の高齢化、不健康な食生活、肥満、運動不足などの生活習慣の結果であり、先進国での増加率は45%であるのに対し、途上国では200%と見込まれている。糖尿病は、もはや一部の先進国で問題となっている“贅沢病”ではなく全人類の問題とIDF(国際糖尿病連合)でも警告している。

糖尿病は慢性疾患であり、長期にわたる治療が必要となり、患者本人のみならず、健康保険、社会にとっても出費がかさむ疾患である。この治療費用については、各国異なるが、健康保険制度が確立されている国と未整備の国では患者自身の負担は大きく異なる。

糖尿病患者全体の約90%は生活習慣病で予防可能と言われる2型糖尿病であり、各国とも医療費の増大に悩まされている中、生活習慣病を予防することで医療費の支出を抑える方向へ動いている。

実際の糖尿病治療費用がその国の人々にとってどれ程の負担となるのかということについて、日本・米国・フィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニア各国の現状と問題点を把握し、問題解決の可能性を検討することとしたい。
方法
  1. 糖尿病の疫学的なデータをグラフにより示す
    各国の1人当たりのGDPと成人糖尿病有病率・1型糖尿病有病率との各相関、各国1人当たりの1日の平均カロリー摂取量と1型糖尿病有病率・成人糖尿病有病率との各相関をグラフを作成し示す。

  2. 各国の平均収入と糖尿病治療費の調査
    調査対象国を日本・米国・フィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニアとし、文献・聞き取り調査によりデータを収集。

結果
  1. 糖尿病の疫学的な見地からみた現状
    経済的な豊かさを示す1人当たりのGDPと1型糖尿病と成人糖尿病(2型糖尿病とほ ぼ一致するものと仮定)の各有病率、1人当たりの1日あたりの平均カロリー摂取量と1型糖尿病と成人糖尿病の関連について最小二乗法により回帰直線と相関係数を求めるとそれぞれ
    GDPと1型糖尿病については、Y=1.02505x+0.02964863  R2=0.4645
    GDPと成人糖尿病については、Y=0.000121x+3.978474   R2=0.0771
    カロリー摂取量と1型糖尿病については、Y=0.00015x−0.29781  R2=0.315
    カロリー摂取量と2型糖尿病については、Y=0.002111x−1.47232 R2=0.1277
    となり、摂取量過食や運動不足といった生活習慣と関連性が深いとされる2型糖尿病有病率(成人糖尿病有病率)がGDPやカロリー摂取量という数字で表れる経済的豊かさとは相関がなく、むしろ遺伝的な要因や感染が原因とされる1型糖尿病の方がわずかではあるが数字で表れる経済的豊かさと有病率に相関が見られ、仮説に反する結果となった。これは、医療事情が良好とは言えない途上国の1型糖尿病患者が発病後に長期間生存することが難しい状況が原因のひとつと考えられる。しかしながら、さらに調査が進み、有病率に関し異なるデータが発表されれば結果は大きく変化する可能性はある。


  2. 先進国の年間平均糖尿病治療費用と平均年収
    日本の場合、平均的な糖尿病治療費が勤務者の平均年収に占める割合は、いわゆる国民皆保のもと自己負担割合は3割であり、保険料の支払い負担を考慮しても収入の1割前後と推定される。米国の場合、人口の約15%を占める無保険者が存在するものの、糖尿病患者については、約9割は何らかの保険に加入しており、平均年収の3割から4割超となるものの、保険により支払いは可能と考えられる。


  3. 途上国の年間糖尿病治療費用と平均年収
    フィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニアいずれも全国民を対象とした公的な保険制度は無く、民間の保険会社と契約を結べるのは一部の富裕層のみ。特に必要なインスリンの価格は、多くの世帯の収入を上回る状況にある。低所得者のための無料の医療施設は存在するものの数に限りがあり、全患者がその恩恵を被る状態には至ってない現状がる。インスリンについては、外国の慈善団体からの寄付に頼らざる得ない状況である。
考察および結論
  1. 糖尿病の疫学的見地からみた現状
    結果で述べた通り、GDPおよびカロリー摂取量と糖尿病の有病率について相関は見られない結果となり、糖尿病が一部の先進国が抱える“贅沢病”ではなく、全地球的・全人類的な問題として取り組まなければならないことが伺える。しかしながら、さらに糖尿病の治療状況や研究が進めば異なる結果が得られる可能性がある。

  2. 各国ケーススタディから得られた結果から今後を考える
    先進国については、日本・米国のケースでみると、現状では治療を中心とした方法で対処可能であるが、糖尿病患者数は増加しており、それに伴い医療費の支出も増大し続けていることから、今後、保険による医療が破綻する懸念がある。多くの途上国においては、政情不安や医療に優先して行う課題も多く、また保険料の徴収も困難な現実も存在することから、公的保険を充実させることは事実上困難である。医療従事者にとどまらず一般の人々の啓発・教育を通じ、2型糖尿病の予防を重視することでその他の生活習慣病の予防にもつながり、1型・2型とも合併症の進行を押さえることがコストパフォーマンスの面において実現可能GDPな方法の一つであると考えられる。

糖尿病の疫学と治療費の研究
― 先進国と途上国の生活費と糖尿病治療費の比較と対策上の問題

  森田繰織
(2003-2004)

?T.研究の背景

?U.研究目的

?V.研究方法
>> 01-05.pdf [PDFファイル]

?W.結果
  1. 糖尿病の疫学的見地から見た現状
  2. 先進国の年間平均糖尿病治療費用と平均年収 日本と米国のケーススタディ
  3. 途上国の年間糖尿病治療費用と平均年収フィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニアのケーススタディ
>> 06-29.pdf [PDFファイル]

?X.考察
  1. 糖尿病の疫学的見地から見た現状について
  2. 各国ケーススタディから得られた結果をもとに今後を考える
    日本・米国およびフィリピン・インド・バングラデシュ・タンザニアを含めた途上国
?Y.結論
>> 30-47.pdf [PDFファイル]


?Y.おわりに

?Z.謝辞

?[.引用および参考文献
>> 48-52.pdf [PDFファイル]

©2004 森田繰織
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