インスリンポンプ情報ファイル
インスリンポンプ療法の今とこれから
第2回「インスリン療法としてのCSII導入の意義とコツ」
東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 教授
弘世 貴久 先生

4. 1型糖尿病の人は誰もが一度は試してみるべき

ーーCSIIはインスリン療法の1つとして活用範囲は広いですね
Dr. 弘世:

経済的なことが許されるのであれば、1型の人は誰もが最初からCSIIを一度は試してほしいなと思っています。やってみてハマったらいいわけです。やってみないと、ハマるかどうかもわからないですから。

ーーそのわけは?
Dr. 弘世:

強化療法は単に4回打ちすることではななく、SMBGを駆使しながら効果的に追加注射をするということで、本当にやろうと思えば日によっては6回も7回も打つことになりますよね。その意味では、血糖値を見て、それに合わせてピッと注入するSAP(Sensor Augmented Pump /CGM付きインスリンポンプ)というのはまさに強化療法を具現化した製品と言えます。本当にコントロールをきっちりやりたい人にとっては、血糖も測れるし気軽に0.1単位でも入れられるわけだから、喜々としてやりたい人がいるでしょう。

SMBGだって最初からやりたい人なんていないし、インスリン療法も自分から「ぜひやりたいです!」なんて手を挙げる人はいません。でも、やってみたらよかった、血糖変動が落ち着いたと喜んでくれます。CSIIも同じ。患者さんが好きか嫌いか、やりたいかやりたくないかに舵を置き過ぎると、どんな治療であっても始めることは難しくなると思います。

ーー1型の方は1度は試してみる価値があると
Dr. 弘世:

そう。怒られるかもしれないけど、インスリンなんかはいきなりお腹に刺して「うわー!」みたいな、やっぱりある程度は無理やりがないと許容できないものだと思っています。「どうですか?」と聞いたら「やめときます」ってなるに決まっています。

やっぱりインスリン療法OKと言ったらその場でぱっとやらないと。帰って人の意見を聞いたり考えてから決めるというのは絶対うまくいかない。決めたら即、鉄は熱いうちに打て。CSIIもそうです。次回までに「考えてきてね」って言ったら、「やっぱやめておきます」となるのがオチ(笑)。

ですからそこは、やる側が乗り気で勧める必要があるのです。ただ、医療費の話になると一番困りますけどね。だからといって将来合併症になったらこんなにお金かかるんですよ!と言ったって患者さんはピンとこない。昔使った手で、インスリンやらなかったら目が見えなくなりますよと言って、やる人いますか?って。もういませんよ。

ーーいないのですか?
Dr. 弘世:

いません。他人事の話になってしまいますから。怖がらせる手は、僕の経験では全然効果的ではありません。先生に騙されて一回やってみたらよかった、みたいなほうが成功率は高い。CSIIもそうなんじゃないかと思います。

スマホと似ていると思っていて、スマホは使えば使うほど楽しくなって、今の若者は常に見てるわけです。高齢者もやっている人増えていますしね。できるんですよ。あれに比べればCSIIはずっと簡単です。だから、CSIIは老若男女、多くの人に使ってもらいたい。

ーーお医者さんも営業力が必要ですね
Dr. 弘世:

サービス業ですよ。「やってみなくちゃわからない」、「やめる、戻るというのはいつでもできます」これは僕の謳い文句。一日やって嫌だったら明日やめていいですって、そんな軽い気持ちでスタートしてほしい。

ーーSAPについてはいかがですか?
Dr. 弘世:

CSIIを先に使って、その後必要があればCGMを入れる感じがいいのではと思います。僕がインスリン導入するときは、最初からSMBGをばっちりはやらなくてもいいよと言っています。いろんなことをいっぺんにやると、それだけで患者さんは嫌になってしまうことが多いから。

もちろん費用面もあります。せっかく興味を示してくれても、フルセットの費用を見た途端、気持ちが冷めてしまうこともあるでしょう。特に、若年1型の人は20歳になると医療費負担が必要になります。いろんな意味で仕事につくのが難しい人が多いなか、酷だなあと思います。

2016年07月 公開